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サイクリスト

夢を叶える“輪行袋いらず”の電車サイクルトレインでゆく「Station Ride in 南房総」 しっかり走れる110kmコースを満喫

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 輪行袋いらずで電車に揺られ、温暖な南房総をサイクリング。そんなサイクリストの夢を叶える「Station Ride(ステーションライド)in 南房総」が11月5日に開催された。今年で4回目となるこちらのイベント、毎回エイドステーションやコースなど、パワーアップを重ねてきて、今年はほぼ従来通りの距離の80kmコースの他に、新たに110kmコースが誕生。またサイクルトレインを使用しない、現地集合・解散の参加者には80kmと130kmの2コースが設けられた。今回は筆者が参加したサイクルトレイン利用の110kmコースの様子をレポートしたい。(大星直輝)

車内の様子。自転車と座席の間には歩くスペースもある Photo: Naoki OHOSHI車内の様子。自転車と座席の間には歩くスペースもある Photo: Naoki OHOSHI

車両の座席にバイクを固定

出発前の両国駅ホームにて Photo: Naoki OHOSHI出発前の両国駅ホームにて Photo: Naoki OHOSHI

 まだ薄暗い6時過ぎ、出発駅であるJR両国駅には、早くも参加者が集まり始めていた。この両国駅はかつて貨物の運搬に使われていたこともあり、改札を通らずに一般道とホームが繋がっている箇所がある。その駅の横にある路をたどると、普段は使われることのない3番ホームへ上がることができるのだ。この構造のおかげで、サイクルトレインが実現したと行っても過言ではなく、過去3回と同様に今回も発着は両国駅となった。

出発前の両国駅にて、特設パネルの前で記念写真を撮る参加者 Photo: Naoki OHOSHI出発前の両国駅にて、特設パネルの前で記念写真を撮る参加者 Photo: Naoki OHOSHI
自転車が並ぶ様に参加者も笑顔に Photo: Naoki OHOSHI自転車が並ぶ様に参加者も笑顔に Photo: Naoki OHOSHI
発車を待つサイクルトレイン Photo: Naoki OHOSHI発車を待つサイクルトレイン Photo: Naoki OHOSHI

 普段は通勤に使用されている、209系6両編成の車両は、片側の座席がシートで覆われ、つり革や荷台からは固定用の紐がぶら下がり、さらに車両の前後には専用のエンブレムまで装備され、サイクルトレイン用にお色直しされている。90人の参加枠は3日間でいっぱいになってしまったという。

 気になる自転車の固定方法は、リアホイールをスタンドで固定させ、フロントホイールをシートへあてて安定させた後に、ハンドルやステムを上から吊る、というもので「いろいろ試しましたが、これが一番でした」とJR東日本の担当者の言葉通りスペース、安定性ともにとても優れている方法だと思う。

自転車の固定は、スタッフが手伝ってくれるので安心だ Photo: Naoki OHOSHI自転車の固定は、スタッフが手伝ってくれるので安心だ Photo: Naoki OHOSHI
110kmに参加の水野貴之さん。「サイクルトレインも南房総も初めてなので、知らないことが経験できるのが楽しい」 Photo: Naoki OHOSHI110kmに参加の水野貴之さん。「サイクルトレインも南房総も初めてなので、知らないことが経験できるのが楽しい」 Photo: Naoki OHOSHI

「特急」「快速」などのグループ走行

 6時50分に両国駅を出発した後、7時16分に千葉駅にて停車、その後はノンストップで館山駅に9時ちょうどに到着した。途中の車内では、プロトライアスリートで、館山トライアスロン大使でもある上田藍選手と、FMパーソナリティの蒲田健さんの車内放送があり、上田選手は「皆さんとは走るのが楽しみで、エイドなどでは積極的に話しかけて欲しい。普段練習する館山の魅力を皆さんに感じてもらいたい」と語った。

車内ではトライアスリートの上田藍さんとDJの蒲田健さんのやりとりも Photo: Naoki OHOSHI車内ではトライアスリートの上田藍さんとDJの蒲田健さんのやりとりも Photo: Naoki OHOSHI
社会人サークル仲間の(左から)池田信彦さん、金井由紀子さん、中村彩子さん Photo: Naoki OHOSHI社会人サークル仲間の(左から)池田信彦さん、金井由紀子さん、中村彩子さん Photo: Naoki OHOSHI
9時に館山駅に到着。一斉にホームへ降り立つ参加者たち Photo: Naoki OHOSHI9時に館山駅に到着。一斉にホームへ降り立つ参加者たち Photo: Naoki OHOSHI
出発前の上田藍選手。サポートのフレームには「ANCHOR」ではなく「BRIDGESTONE」のロゴが Photo: Naoki OHOSHI出発前の上田藍選手。サポートのフレームには「ANCHOR」ではなく「BRIDGESTONE」のロゴが Photo: Naoki OHOSHI

 どうやら朝方に雨が降ったらしいが、わずかに路面が濡れているのみで、晴天が館山駅の上に広がっていた。自転車で数分の北条海岸へ行き、臨時の出店ブースで買い物などをしていると、程なく開会式が始まった。通常、タイムなどを競わないこの手のイベントでは、数人ごとにスタートした後、おのおのがマイペースで走るというのが多い。今回のイベントでは過去3回と同様、前後にサポートライダーがついてグループで走る、というスタイルで出発した。

 基準となるペースは、30km/hで走る特急グループ、25km/hで走る快速グループ、20km/hで走る各駅グループの3つあり、好きなグループへ自己申告で参加する。しかし110kmコースは距離とゴール時間の関係から特急と快速のみとなった。18時館山駅発のサイクルトレインに、乗り遅れるわけにはいかないのである。

海岸で行われた開会式で注意事項を聞く参加者 Photo: Naoki OHOSHI海岸で行われた開会式で注意事項を聞く参加者 Photo: Naoki OHOSHI
110km快速組で出発する参加者たち Photo: Naoki OHOSHI110km快速組で出発する参加者たち Photo: Naoki OHOSHI

暖かさとヤシの木で「南」を実感

ヤシの木の並ぶ内房なぎさラインを走る Photo: Naoki OHOSHIヤシの木の並ぶ内房なぎさラインを走る Photo: Naoki OHOSHI

 110kmコースの脚自慢である特急組がスタートしたのち、出発。館山湾に面した海岸沿いは内房なぎさラインといい、ヤシの木の並ぶビジュアルと、東京より明らかに暖かい気温で、南に来た、という気持ちが一気に高まる。長めのトレインは信号などで分断されるたびに、追いつこうとスピードを上げ、結構速いスピードで走っていく。追いついてからも予定以上の時速30km前後で走っており、先導者と話すとゴールに遅れまいと焦っているようである。

 スタートから20分弱で最初のエイドステーションである道の駅「とみうら枇杷倶楽部」に到着。地域の特産品であるビワの葉を生地に練り込んだクリームパンをいただいた。その緑色の生地からは「ほんのりビワの葉の渋みのような物が感じられる」といった参加者の声も。

カップルで110kmコースに参加の2人 Photo: Naoki OHOSHIカップルで110kmコースに参加の2人 Photo: Naoki OHOSHI
ビワの葉が生地に練り込まれたクリームパン。小振りで補給食にぴったり Photo: Naoki OHOSHIビワの葉が生地に練り込まれたクリームパン。小振りで補給食にぴったり Photo: Naoki OHOSHI

 ほとんど距離も走っていないこともあり、あまり休むことなく出発。道は海岸腺から東の内陸へ向かっており、田畑の広がるのどかな雰囲気へ。南房総市と館山市の境にある、ヤシの木が立ち並ぶエリアは壮観であり、ここでグループを見送り、撮影をしつつ後続グループを待つことにした。

ヤシの木のゲートを駆け抜ける Photo: Naoki OHOSHIヤシの木のゲートを駆け抜ける Photo: Naoki OHOSHI

エイドステーションは道の駅

上り区間を励まし合って走る Photo: Naoki OHOSHI上り区間を励まし合って走る Photo: Naoki OHOSHI

 南北にまっすぐ走る県道88号線・富津立山線を進むと、110kmコースのみに組み込まれた、岩井駅へと続く道となる。田園風景を抜けると川沿いの道となり、犬掛けの信号を左折すると、このコース唯一と言ってもいい、まとまった上り区間に入る。高低図を見て少し気になっていたものの、山というよりも丘と行ってもいいような坂で、マイペースで行けば問題ないものであった。

 道の駅「富楽里とみやま」では、千葉の郷土料理「伏姫さんが焼」をいただいた。アジやイワシと味噌を一緒にたたいて、焼いたもの。魚が新鮮なので臭みもなく、ほろほろと柔らかい食感と、味噌と大場の爽やかさが加わって大変に美味しかった。

なめろうを焼いて大葉を乗せたさんが焼き。地元の郷土料理だ Photo: Naoki OHOSHIなめろうを焼いて大葉を乗せたさんが焼き。地元の郷土料理だ Photo: Naoki OHOSHI
「くせもなく、海の味がしておいしいです」 Photo: Naoki OHOSHI「くせもなく、海の味がしておいしいです」 Photo: Naoki OHOSHI

 岩井駅をぐるっとまわり、いま来た上りをもう一度上ってコースを引き返す。次のエイドステーションの、道の駅「三芳村鄙の里」までの30kmが「80kmコース」と「110kmコース」の違いと行っても良い。その三芳村鄙の里では房州みかんをたっぷり使ったドーナツと、濃厚な牛乳がふるまわれた。この地域は酪農発祥の地とも言われており、地元産の三芳の牛乳はコクがあってとても美味しく、まさに体に沁みわたった。

急ではないけれど、それなりに上りもあるので、無理せずにマイペースで走りたい Photo: Naoki OHOSHI急ではないけれど、それなりに上りもあるので、無理せずにマイペースで走りたい Photo: Naoki OHOSHI
ミニベロで110kmコースを走る参加者。さすがにペースを合わせるのが大変そうだった Photo: Naoki OHOSHIミニベロで110kmコースを走る参加者。さすがにペースを合わせるのが大変そうだった Photo: Naoki OHOSHI

 のんびりしていたわけではないが、あまり時間に余裕もないとの事で、ここからは次のエイドステーションまで皆黙々と自転車を漕ぎ続けた。内陸の風景を抜けると、青空と太平洋が迎えてくれる。先行する80kmコースの集団とすれ違い、道の駅「和田浦WA・O!」に到着。お気づきかもしれないが、南房総には道の駅がとても多く、今大会のエイドステーションも基本そこに設置されている。落花生ソフトと、くじらコロッケをいただいてすぐにまた出発。

「和田浦の名物クジラを使ったクジラコロッケと、落花生ソフトをどうぞ」 Photo: Naoki OHOSHI「和田浦の名物クジラを使ったクジラコロッケと、落花生ソフトをどうぞ」 Photo: Naoki OHOSHI
海岸沿いにでると、先行する80kmコースの参加者たちとすれ違った。おもわず手を振ってあいさつ Photo: Naoki OHOSHI海岸沿いにでると、先行する80kmコースの参加者たちとすれ違った。おもわず手を振ってあいさつ Photo: Naoki OHOSHI
和田浦WA・O!では全長26mのシロナガスクジラの骨格標本がお出迎え Photo: Naoki OHOSHI和田浦WA・O!では全長26mのシロナガスクジラの骨格標本がお出迎え Photo: Naoki OHOSHI

電車の出発前に何とかゴール

ススキの咲きほこる海岸線をすすむ Photo: Naoki OHOSHIススキの咲きほこる海岸線をすすむ Photo: Naoki OHOSHI

 ここからは気持ちのいい海岸線を南下だ、と思っていると、すごい向かい風が待っていた。先頭を走ると20km/h台前半がやっとの状態で、集団も完全に崩壊、ほとんどが離ればなれになってしまった。バラバラになりつつも何とか道の駅「ちくら潮風王国」へ到着。今回一番ボリュームのある、ひじきコロッケバーガーを食べ、残りの36kmの向かい風に備える。ちなみにこのエイドの最終通過時間は15時の設定で、自分のグループが出発したのはその5分前というギリギリっぷりであった。

110kmコースに参加の竹内さん夫妻「南房総はアップダウンがあまりなく安全に走れる。エイドステーションも沢山あって満足。まだ余裕があるので、チームではなく自由に走れたらいいかも」 Photo: Naoki OHOSHI110kmコースに参加の竹内さん夫妻「南房総はアップダウンがあまりなく安全に走れる。エイドステーションも沢山あって満足。まだ余裕があるので、チームではなく自由に走れたらいいかも」 Photo: Naoki OHOSHI
房総半島最南端に位置する野島埼灯台。最初の灯台は関東大震災により倒壊してしまい、1925年に現在の形に再建された Photo: Naoki OHOSHI房総半島最南端に位置する野島埼灯台。最初の灯台は関東大震災により倒壊してしまい、1925年に現在の形に再建された Photo: Naoki OHOSHI
海沿いのダイナミックな光景を進む参加者 Photo: Naoki OHOSHI海沿いのダイナミックな光景を進む参加者 Photo: Naoki OHOSHI

 その後も激しい向かい風が続き、別のグループで走っている、元アジアチャンピオンのトライアスリートである山本淳一さんも「風がキツい!」と言っているとのこと。こうなったら無事に到着できるかは、グループのサポートライダーにかかってきて、その点このグループを引っ張っている新井敏嘉さんは頼もしかった。彼もまたトライアスリートで、向かい風を先頭で走るのは馴れたもの、と言わんばかり。残り時間と集団の体力を計りつつ、絶妙のバランスで引き続けてくれた。

 野島崎公園のいかメンチは、三回続けて提供された揚げ物に、残念ながら多くの参加者が喉を通らなかったようだ。80kmコースに参加の池田さんは「イカの弾力がある食感が、モチモチで、塩分も効いていてとても美味しかった」とのこと。その先の「ポピーの里館山ファミリーパーク」では、南国のフルーツであるドラゴンフルーツジュースをいただいた。そのド派手な色味とは裏腹に、優しい酸味と甘みが疲れた体に心地よく、参加者にも大好評であった。

風はやむ気配がなく、コンパクトにまとまって進む Photo: Naoki OHOSHI風はやむ気配がなく、コンパクトにまとまって進む Photo: Naoki OHOSHI
その色に似合わず、優しい味わいのドラゴンフルーツジュース Photo: Naoki OHOSHIその色に似合わず、優しい味わいのドラゴンフルーツジュース Photo: Naoki OHOSHI

 残り16kmで、何とか電車には間に合うと算段がついたものの、余裕は全くない。最終の参加者を見届けようと、サポートの方2人と共に走っていたが、美しい夕暮れの海岸線を経て、遂に日も暮れてしまった。ふらふらで励ましの言葉にも無反応になってしまった最後の参加者も何とかゴール。

 先にゴールしていた仲間に声をかけられ、ようやく笑顔がもどったのをみて、こちらも自然に笑顔になっていた。ゴールエリアはもう真っ暗で、地元中村屋のあんぱんも、青倉商店のつみれ汁ももうなかったけれど、サポートの方と笑顔でいただいたコーヒーは忘れがたい味となった。

天気の良い日のみ見えるという富士山。夕暮れ時に、とてもはっきりと見ることが出来た Photo: Naoki OHOSHI天気の良い日のみ見えるという富士山。夕暮れ時に、とてもはっきりと見ることが出来た Photo: Naoki OHOSHI
参加者全員をサイクルトレインに間に合わせることができて、ホットコーヒーで疲れを癒すサポートライダー Photo: Naoki OHOSHI参加者全員をサイクルトレインに間に合わせることができて、ホットコーヒーで疲れを癒すサポートライダー Photo: Naoki OHOSHI

エリアや本数の増加も視野に

 過去3回は約80kmコースのみだったステーションライド in 南房総も、もっと走りたいという参加者の声を元に、今回初めて110kmコースが新設されたという。参加者の内訳(サイクルトレイン参加者のみ)も80kmの40人に対して110kmが50人と人気が高かった。新たなコースが増えたことで、ゆっくりと食べ物や景色を楽しみたい参加者と、しっかり走りたい参加者のどちらも楽しめ、今大会の魅力が益々増えたと思う。

館山駅に着くと、すでにサイクルトレインが入線していた Photo: Naoki OHOSHI館山駅に着くと、すでにサイクルトレインが入線していた Photo: Naoki OHOSHI
帰りのサイクルトレイン内の様子。事故もなく全員無事に間に合うことができた Photo: Naoki OHOSHI帰りのサイクルトレイン内の様子。事故もなく全員無事に間に合うことができた Photo: Naoki OHOSHI

 企画するJR東日本としても楽しみながら健康になれる自転車は、二次交通(鉄道やバスの駅からの移動手段)として最適だとのことで、今後機会があればエリアや本数を増やせればと思っていただいているようだ。

 ちなみに今イベントの経験が生きて、2年前から九十九里トライアスロン大会にもサイクルトレインを運行している。大変なことだとは思うが、サイクルトレインが決して珍しい物ではなく、あたり前に皆が思えるように、是非イベントを成長させ続けていただければと願う。

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