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サイクリスト

CYCLE MODE 2016「WORKING BIKE PROJECT」運搬に発電、洗濯まで? 学生たちが広げる災害時に役立つ自転車の可能性

by 後藤恭子 / Kyoko GOTO
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 千葉・幕張メッセで開催された「サイクルモード2016」で、東京サイクルデザイン専門学校が「災害時に役立つ自転車」をテーマに作品展を行った。“Save our neighborhood”(自分たちの周囲の人を守る)という発想で生み出された自転車には、荷物の運搬や発電、さらには洗濯といったユニークな機能も。「燃料不要の移動手段」にとどまらない自転車の秘めたる可能性を、学生たちの作品に垣間見た。

東京サイクルデザイン専門学校の学生による作品展「WORKING BIKE PROJECT」 Photo: Kyoko GOTO東京サイクルデザイン専門学校の学生による作品展「WORKING BIKE PROJECT」 Photo: Kyoko GOTO

「人力発電機」としての自転車

 作品展は「WORKING BIKE PROJECT」(社会の中で働く、環境に適した機能とデザインを備えた自転車)と題したプロジェクトの一環で、今回が3回目。同専門学校の最上級生となる3年生が手掛けた。4人で1チームを組み、コンセプト立案からデザイン設計、溶接作業、組み付けまで全て学生らの手によって作り上げた。

 「これまで習得した技術と発想を全力でつぎ込んだ」と話す金延翔太郎さんが開発・デザインを手がけたのが、展示会場でもひときわ目を引いていた発電する自転車、その名も「剛脚くん」だ。

発電する自転車「剛脚くん」と、開発を手掛けた3年生の金延翔太郎さん Photo: Kyoko GOTO発電する自転車「剛脚くん」と、開発を手掛けた3年生の金延翔太郎さん Photo: Kyoko GOTO
自動車用の発電機、オルタネーターを回すために8つのスプロケがついている Photo: Kyoko GOTO自動車用の発電機、オルタネーターを回すために8つのスプロケがついている Photo: Kyoko GOTO

 一見、形状は普通の自転車だが、異彩を放っていたのはクランク周り。自動車用の発電機(オルタネーター)を搭載し、それを人力で回転させて発電するという仕組みなっている。発電するためには毎分1000回転以上でローターを回す必要があるが、歯数の異なるスプロケットを何段にも重ねることで、すさまじい増速を実現。いわゆる「ギア比」を1:25とし、例えばケイデンス60rpmで漕いだ場合、1分間にその25倍となる1500回転を生み出せる。負荷は手元のダイヤルで調整可能で、漕ぎ手の脚力にあわせて負荷を増減することができる。

右下のダイヤルで負荷を調整できる Photo: Kyoko GOTO右下のダイヤルで負荷を調整できる Photo: Kyoko GOTO
後部のボックス内に設けた充電器。ここで携帯などの充電を行う Photo: Kyoko GOTO後部のボックス内に設けた充電器。ここで携帯などの充電を行う Photo: Kyoko GOTO

 発電した電気はバッテリーに蓄電され、後部のボックス内で携帯電話などの電子機器に電気を供給できる仕組みになっている。バッテリーは1万mAhの大容量モバイルバッテリーで、出力電力量は最大50w。機種によって異なるが、空のスマートフォンであれば概ね5台分のフル充電が可能だという。なお、バッテリーをフル充電するには8時間かかるため、その点が「剛脚くん」という名前の由来となっている。

たくさんの来場者から質問を寄せられていた金延さん Photo: Kyoko GOTOたくさんの来場者から質問を寄せられていた金延さん Photo: Kyoko GOTO

 金延さんは、「我々の生活は電気に支えられているといっても過言ではない。地震など災害が発生するとライフラインは簡単にストップするが、なかでも電力は人力で比較的簡単に生産できる唯一のエネルギー。自然エネルギーに加え、人力でも電気を供給できる方法があれば少しでも役に立つのではないか」と話している。

用途に合わせて変身する自転車

洗濯バイク「くるっくり~ん」 Photo: Kyoko GOTO洗濯バイク「くるっくりーん」 Photo: Kyoko GOTO

 このほか、ユニークなフォルムとテーマで来場者の足を止めていたのが“洗濯バイク”の「くるっくり~ん」。30lの「洗濯層タンク」の中に洗濯物と水、洗剤を入れ、後輪二輪の上に設置して自転車を走らせるとホイールの回転とともにタンクが逆回転する仕組みだ。

 災害時、ライフラインの復旧に時間がかかり、満足に洗濯すらできない状況は珍しくない。不衛生な環境に置かれ、また避難生活で運動不足に陥る被災者の姿を見て、これらの問題をいっぺんに解決できる手段として考案した。設計は男女問わず誰でも容易に漕げることを重視。講師の橋本博匡さんは、「子供も乗れる設計にしたら楽しんでお手伝いができるかもしれない」とし、自転車がもつ“楽しさ”も被災生活で活力を取り戻す上で重要な要素との考えを示した。

自転車出張修理のために開発された自転車「チャリアカー」 Photo: Kyoko GOTO自転車出張修理のために開発された自転車「チャリアカー」 Photo: Kyoko GOTO

 2011年の東日本大震災当時、街には多くの帰宅困難者があふれた。ガソリンなどの供給も不安定になるなか、交通手段としての自転車の有用性が見直された。一方で、一般家庭には使われなくなった自転車が多く、必要時に稼働しないという問題もあった。

 そうした問題を解消するために考案したのが自転車出張修理のため自転車「チャリアカー」だ。前のキャリアー部分には自転車を修理するための工具やパーツ類を大量に積載。自転車部分を外せばリアカーとしても使用可能で、自転車では行きにくい場所へのアプローチも考えられている。木製パネルは開閉式で、閉じれば作業台として使用することもできる。

前かごには自転車を修理するための工具やパーツ類を大量に積載。自転車部分を外せばリヤカーとして使用可能 Photo: Kyoko GOTO前かごには自転車を修理するための工具やパーツ類を大量に積載。自転車部分を外せばリヤカーとして使用可能 Photo: Kyoko GOTO
木製パネルは開閉式になっており、閉じれば作業台として使用可能 Photo: Kyoko GOTO木製パネルは開閉式になっており、閉じれば作業台として使用可能 Photo: Kyoko GOTO

 このほか、大容量の荷物を運搬する際に台車に変身する自転車も展示されていた。

自転車にも台車にもなる2wayバイク「Cartlike」 Photo: Kyoko GOTO自転車にも台車にもなる2wayバイク「Cartlike」 Photo: Kyoko GOTO

 シートチューブを前方に倒し、可動式のリアキャリアを展開させることで容易に台車へと変えることができる。補助輪が地面に接することで重い荷物を載せた状態でも転倒しない設計になっていたり、パーキングブレーキを使用して、車体を安定させた状態で荷物の積み下ろしができるなど、使い勝手にも配慮した。燃料のない状況で荷物の運搬や移動を強いられる避難生活。用途を想像して自転車の形状を考える視点の柔軟性に、来場者も関心を寄せていた。

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