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新城幸也が2年連続のアジア最優秀賞強力な上りのアタックでヴィッレッラが初制覇 ジャパンカップサイクルロードレース詳報

by 米山一輝 / Ikki YONEYAMA
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 最終周回の上りで1人飛び出した25歳のイタリアンが、ゴールまでの独走街道を駆け抜けた。10月23日に宇都宮市の森林公園周辺で行われた「2016ジャパンカップサイクルロードレース」は、ダヴィデ・ヴィッレッラ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)が、1992年の初開催から25回目、宇都宮市制120周年の記念大会を、ライバルが舌を巻く上りの強さで初制覇した。

狙いすました上りのアタックで単独先頭に立ったダヴィデ・ヴィッレッラ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)が、逃げ切ってジャパンカップを制した Photo: Naoi HIRASAWA狙いすました上りのアタックで単独先頭に立ったダヴィデ・ヴィッレッラ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)が、逃げ切ってジャパンカップを制した Photo: Naoi HIRASAWA

5選手が先行 堀、井上が山岳賞獲得

市制120周年を迎えた宇都宮市の佐藤市長が号砲のピストルを鳴らした Photo: Ikki YONEYAMA市制120周年を迎えた宇都宮市の佐藤市長が号砲のピストルを鳴らした Photo: Ikki YONEYAMA

 アジア最高ランク(オークラス=超級)のワンデイレースとして開催されるジャパンカップは、世界最高峰のUCIワールドチームが6チーム出場。16チーム79人の選手が午前10時、佐藤栄一・宇都宮市長の号砲でスタートを切った。コースは1周10.3kmの周回コースを14周する全長143.2km。周回前半に厳しい上りの「古賀志林道」があるほか、下りもテクニカルでつなぎの平坦区間も長く、上位に入るには総合力が要求されるコースだ。

 レースは1周目の上りのアタック合戦から、井上和郎(ブリヂストンアンカー サイクリングチーム)、堀孝明(宇都宮ブリッツェン)、マッティ・ブレシェル(デンマーク、キャノンデール・ドラパック)、マルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム)の4人が抜け出しに成功した。さらに2周目にベンジャミン・ヒル(オーストラリア、アタッキ・チームグスト)が単騎追いつき、5人の逃げグループとなった。

1周目の上り、逃げを狙ってアタックする井上和郎(ブリヂストンアンカー) Photo: Naoi HIRASAWA1周目の上り、逃げを狙ってアタックする井上和郎(ブリヂストンアンカー) Photo: Naoi HIRASAWA
落ち着いたペースで序盤のレースをこなすメイン集団 Photo: Ikki YONEYAMA落ち着いたペースで序盤のレースをこなすメイン集団 Photo: Ikki YONEYAMA
つづら折れ区間へと入るメイン集団 Photo: Naoi HIRASAWAつづら折れ区間へと入るメイン集団 Photo: Naoi HIRASAWA

 メイン集団は逃げに加わったキャノンデールを除くワールドチーム勢5チームが、1人ずつアシスト選手を牽引に出してペースをコントロール。中盤からは那須ブラーゼンも牽引に加わり、逃げとのタイム差は2分台に保たれた。集団内では各チームの選手がそれぞれ固まり、後半に向けてチャンスをうかがう体制を作った。

 逃げグループでは3周目の山岳賞争いで、地元出身の堀が先行アタック。競りかかるヒルをかわして山岳賞を獲得した。続く6周目の山岳賞では、今季限りの引退を表明しているベテランの井上が、前日のクリテリウムの周回賞に続いての獲得。選手として最後のジャパンカップに、自ら花を添えた。

1回目の周回賞は地元の堀が獲得 Photo: Naoi HIRASAWA1回目の周回賞は地元の堀が獲得 Photo: Naoi HIRASAWA
2回目の山岳賞を狙う井上がアタック Photo: Naoi HIRASAWA2回目の山岳賞を狙う井上がアタック Photo: Naoi HIRASAWA
古賀志山をバックにメイン集団が走る Photo: Kenta SAWANO古賀志山をバックにメイン集団が走る Photo: Kenta SAWANO
観客は思い思いのスタイルで応援 Photo: Kenta SAWANO観客は思い思いのスタイルで応援 Photo: Kenta SAWANO
多くの声援を受けてメイン集団が上り区間を行く Photo: Naoi HIRASAWA多くの声援を受けてメイン集団が上り区間を行く Photo: Naoi HIRASAWA

今年も地元ブリッツェンがチームで攻撃

10周目、ランプレ勢が集団前方に上がる Photo: Naoi HIRASAWA10周目、ランプレ勢が集団前方に上がる Photo: Naoi HIRASAWA

 逃げグループは順調なペースで逃げ続けたが、8周目にヒルが脱落して4人になった。3回目の山岳賞はガルシアが獲得。いっぽうメイン集団も残り5周から徐々にタイム差を縮めて、先頭を射程圏内に捉えはじめた。逃げもペースを保ち続けるが、11周目に井上が脱落。12周目には、最後の山岳賞争いのペースアップで堀が遅れ、先頭は後半2回の山岳賞を獲得したガルシアと、ワールドチームから唯一逃げに加わったブレシェルの2人のみとなった。

 残り3周のメイン集団では、上りでランプレ勢を中心にペースアップ。集団後方では少なくない選手が遅れ始めた。下りを終えて先頭とは28秒差。残り2周のラインを過ぎてついに逃げは吸収され、レースはいよいよ本格的な勝負所を迎えた。

4回目の山岳賞もガルシア。先頭は2人に Photo: Naoi HIRASAWA4回目の山岳賞もガルシア。先頭は2人に Photo: Naoi HIRASAWA
ペースが上がり活性化しはじめたメイン集団 Photo: Naoi HIRASAWAペースが上がり活性化しはじめたメイン集団 Photo: Naoi HIRASAWA
残り2周、先頭2人のすぐ後ろに集団が迫る Photo: Kenta SAWANO残り2周、先頭2人のすぐ後ろに集団が迫る Photo: Kenta SAWANO
ついに集団が逃げ残る2人を捕えた Photo: Kenta SAWANOついに集団が逃げ残る2人を捕えた Photo: Kenta SAWANO

 ここで隊列を組んで集団前方へと一気に躍り出たのは、地元の宇都宮ブリッツェンだ。昨年大会では残り4周でチーム全員の奇襲攻撃を仕掛けたが、今年は勝負がかかる残り2周の上りで集団先頭を奪い取った。集団に戻った堀と、鈴木譲が引く形で、上りに強い増田成幸、雨澤毅明が最後の戦いに挑む。

残り2周のライン上、メイン集団の大外からブリッツェン勢が一気に先頭へと躍り出る Photo: Ikki YONEYAMA残り2周のライン上、メイン集団の大外からブリッツェン勢が一気に先頭へと躍り出る Photo: Ikki YONEYAMA
残り2周で仕掛けたプジョル Photo: Naoi HIRASAWA残り2周で仕掛けたプジョル Photo: Naoi HIRASAWA

 集団からは上り中腹で、オスカル・プジョル(スペイン、チームUKYO)が猛烈なスピードでアタックを見せた。これに海外勢3選手が反応して4人が若干先行し、数秒離れて新城ら数人のグループ、さらに数秒離れて20人弱のグループが続く。このアタックで十数人が後退、前日のクリテリウムの覇者の別府史之(トレック・セガフレード)も、苦しい表情で遅れてしまった。

「決めていた」最後の上りでアタック

 下りで前方3グループが合流するが、活性化した集団では濁流のように動きながら、アタックと牽制が断続的に続いた。離れて合流してを各所で繰り返すなか、新城は積極的に集団の前へ前へと上がっていく。日本人勢は新城、増田、雨澤と、ブリヂストンアンカーの初山翔、西薗良太が生き残り、26人の先頭集団はいよいよ残り1周、最終周回を迎えた。

残り1周に入る集団。新城のチームメイトのペティッリがアタック Photo: Ikki YONEYAMA残り1周に入る集団。新城のチームメイトのペティッリがアタック Photo: Ikki YONEYAMA

 ホームストレートでは新城のチームメイト、シモーネ・ペティッリ(イタリア、ランプレ・メリダ)がアタック。これを吸収した集団がハイペースのまま最後の古賀志林道の上りに入ると、先頭を猛烈なスピードで上り始めたのは、3週間前のモニュメントレース「イル・ロンバルディア」で5位に入り好調のヴィッレッラだった。

 「コース図を見たときに、最後の上りで勝負しようと決めていた」とレース後に語ったヴィッレッラは、完璧なアタックで2番手以下を引きちぎり、単独先頭で頂上を通過した。10秒以上離れてマヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)、プジョルら、6人の外国人勢による追走。さらに数秒離れて新城が5人のグループで続いた。

上り中盤で後続に差を付けたヴィッレッラ Photo: Yuzuru SUNADA / JAPAN CUP上り中盤で後続に差を付けたヴィッレッラ Photo: Yuzuru SUNADA / JAPAN CUP
ヴィッレッラを追うプジョルだが、振り切られた Photo: Naoi HIRASAWAヴィッレッラを追うプジョルだが、振り切られた Photo: Naoi HIRASAWA
3番目のグループで頂上を通過した新城 Photo: Naoi HIRASAWA3番目のグループで頂上を通過した新城 Photo: Naoi HIRASAWA

 数で勝る追走が有利かと思われたが、下りを終えても先頭のヴィッレッラは捕まらない。2番手グループでは田野町からの上りで、クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク、オリカ・バイクエクスチェンジ)が単独アタックで先頭を追ったが、最終周回にしてこの日の最速ラップを記録したヴィッレッラは最後まで勢いを失わず、そのまま独走でゴールへと飛び込んだ。

ガッツポーズでゴールするヴィッレッラ Photo: Kenta SAWANOガッツポーズでゴールするヴィッレッラ Photo: Kenta SAWANO

新城「チームとしての動きは良かった」

 2位は単独追走のユールイェンセン、3位はロバート・パワー(オーストラリア)がスプリントの先頭を取り、オリカ・バイクエクスチェンジ勢が表彰台の両脇を占めた。ユールイェンセンは「最後の上りはダヴィデ(ヴィッレッラ)が抜きん出て強かった。そのなかでチームで2位と3位を得られたのは良かったと思う」と勝者を称えた。

2年連続のアジア最優秀賞を獲得した新城 Photo: Kenta SAWANO2年連続のアジア最優秀賞を獲得した新城 Photo: Kenta SAWANO

 日本勢では新城が8位争いのグループで2番手に入り9位。昨年に続きアジア最優秀賞を獲得した。最終周回の上り、一瞬の迷いから後ろの集団になってしまったという新城は、「悔しいがチームとして動いた結果なのでしょうがない」とレースを振り返る。終盤チームで動いて厳しい展開を作ったという新城。「モーリが4位、僕がアジア人1位と、狙っていた結果ではないが、チームとしての動きは良かった」と納得した様子で語った。

 残り2周の攻撃で観客を沸かせた宇都宮ブリッツェンは、エースの増田が18位。「チームプレイで動いたが、最後は自分が力不足だった。しかし前で上りに入ったことで、自分と雨澤の2人が残ることができた」とアタックがレース前からの作戦だったことを明かした。「去年、今年といい感じできているので、来年のジャパンカップでは結果を残したい」と来季さらにチームを成長させての再挑戦を誓った。

表彰台に立った上位3人。(左から)2位のユールイェンセン、優勝のヴィッレッラ、3位のパワー Photo: Yuzuru SUNADA / JAPAN CUP表彰台に立った上位3人。(左から)2位のユールイェンセン、優勝のヴィッレッラ、3位のパワー Photo: Yuzuru SUNADA / JAPAN CUP

 快勝を飾ったヴィッレッラは「(最後の上りの)頂上までが勝負と考え、後ろを見ずに踏み続けた。結果、十分な差をつけることができた」と勝利のポイントを語った。ここ2年は右膝の故障があり思うように走れなかったが、「シーズン後半上り調子で、最後に重要なレースで結果を残すことができてうれしい」と喜びを語った。

上位3選手によるシャンパンファイト Photo: Kenta SAWANO上位3選手によるシャンパンファイト Photo: Kenta SAWANO
山岳賞獲得の3人。(左から)堀孝明、井上和郎、マルコス・ガルシア Photo: Kenta SAWANO山岳賞獲得の3人。(左から)堀孝明、井上和郎、マルコス・ガルシア Photo: Kenta SAWANO

2016ジャパンカップサイクルロードレース結果(144.2km)
1 ダヴィデ・ヴィッレッラ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) 3時間46分43秒
2 クリストファー・ユールイェンセン(デンマーク、オリカ・バイクエクスチェンジ) +6秒
3 ロバート・パワー(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ) +14秒
4 マヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)
5 オスカル・プジョル(スペイン、チームUKYO)
6 アレックス・ピーターズ(イギリス、チームスカイ)
7 ベンジャミン・プラデス(スペイン、チームUKYO) +17秒
8 ハビエル・メヒヤス(スペイン、チーム ノボノルディスク) +43秒
9 新城幸也(ランプレ・メリダ)
10 ジョセフ・ロスコフ(アメリカ、BMCレーシングチーム)

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