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有力国の「力」に屈するレース後、別府と新城がインタビューで語ったこと UCIロード世界選手権男子エリート

by 福光俊介 / Syunsuke FUKUMITSU
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 カタールの首都・ドーハにて開催されたUCI(国際自転車競技連合)ロード世界選主権。10月9日から16日まで、8日間の日程で行われた世界ナンバーワンを決める戦い。大会の最後を飾った男子エリートロードレースでは、わが国ロードレース界のエースである別府史之(トレック・セガフレード)と新城幸也(ランプレ・メリダ)が出場。上位進出を賭けて戦ったが、悔しい結果に終わった。フィニッシュ後、2人にインタビュー。レースを振り返ってもらい、それぞれの思いを語ってもらった。

UCIロード世界選手権男子エリートロードレースは、風による集団分断が勝負を大きく左右した。後方に取り残された別府史之(左から3人目)は懸命に前を追った Photo: Yuzuru SUNADAUCIロード世界選手権男子エリートロードレースは、風による集団分断が勝負を大きく左右した。後方に取り残された別府史之(左から3人目)は懸命に前を追った Photo: Yuzuru SUNADA

イメージ通りにはいかないカタールのコース

 別府、新城両選手が出場した男子エリートロードレースは、ドーハ市内をスタートし、メイン会場の「ザ・パール・カタール」を目指す257.3kmで争われた。レース前から注目されていたのが、スタートから151km続くワンウェイコース。砂漠地帯を南北に横断するルートは、風向き次第でいかようにも展開が変化する。

懸命に先頭グループを追った第2集団。別府史之と新城幸也もこの中から前方復帰を目指した Photo: Yuzuru SUNADA懸命に先頭グループを追った第2集団。別府史之と新城幸也もこの中から前方復帰を目指した Photo: Yuzuru SUNADA

 それは、例年2月に開催されるツアー・オブ・カタールの戦いからも明白だった。カタール特有の強風を利用した集団の絞り込みは、この大会の名物シーンでもある。コースレイアウトだけならスプリンターが主役となるべきところが、風を使った駆け引き1つで大きな波乱を呼んできた。

 この風に細心の注意を払う必要性は、出場していた全選手が認識していただろう。ツアー・オブ・カタール出場経験のある日本勢2人も、集団のペースが上がるポイントまでしっかりと意識していた。

 砂漠地帯の針路を北から一旦東へ、そして南へと変えるタイミングで、レースは動いた。横風を使ったペースアップは、折り返しをすぎても変わらず。むしろ、追い風となり集団のペースを上げる形となった。日本の2人も前方へとポジションを上げ、この動きに合わせたが、予想をはるかに超える絞り込みに第2集団での追走を余儀なくされた。そして、最後まで先頭集団に追いつくことはなく、終戦となった。

「完全に力の差」と新城

 35位でフィニッシュした新城の表情は、さばさばとしたものだった。「レッドゾーンに達するまで追走は試みた。サーキットに入ってから最後の5周回は集団全体が完走を目指すためだけの走りだったが、UCIポイントが付くのでしっかりフィニッシュすることだけは心がけた」とレースについて語った。

フィニッシュ後インタビューに応じる新城幸也。「完全に力の差」と素直に認めた Photo: Syunsuke FUKUMITSUフィニッシュ後インタビューに応じる新城幸也。「完全に力の差」と素直に認めた Photo: Syunsuke FUKUMITSU

 ワンウェイコース折り返し付近で起こった分断については予想通りだったといい、「別府さんと2人で前方50番手以内には位置していた。それなのに復路に入ったら集団が割れてしまった。それで、先頭付近にいた20人程度が先へ行った」と述べる。さらに、「僕の周りにもマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)、ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス ソリュシオンクレディ)などがいて、メンバー的にも前に追いつけるかと思ったけれど、それはかなわなかった」と続けた。

マイヨアルカンシエルを賭けた戦いの難しさを強調した新城幸也 Photo: Yuzuru SUNADAマイヨアルカンシエルを賭けた戦いの難しさを強調した新城幸也 Photo: Yuzuru SUNADA

 これが最終結果につながったわけだが、「完全に力の差」と素直に認める。スタート前は、別府とともにポジションを固めながら、要所でしっかりと前を確保し、最後はどちらか好調な方で勝負するという考えでスタートラインに着いた。だが、「サーキットに入る段階で前に位置していないと意味がないレース」と、勝負に絡むことができなかった点を惜しむ。そして、「どんなコースレイアウトだって同じこと。誰もが予想しているところでアタックして、ライバルを引き離す。それが世界選手権」と、マイヨアルカンシエルを賭けた戦いの厳しさを強調した。

別府「今までにはない特殊な世界選手権」

 サーキットを残り2周回残した段階で、先頭集団とのタイム差の関係からリタイアを通告された第3集団。別府もこの中に含まれ、今年の世界選手権ロードレースは途中でバイクを降りる結果に終わった。レース後、宿泊先のホテルで話を聞いた。

今回の世界選手権を「特殊なケース」と表現した別府史之 Photo: Yuzuru SUNADA今回の世界選手権を「特殊なケース」と表現した別府史之 Photo: Yuzuru SUNADA

 「序盤の逃げが10分以上リードしたことは驚いたが、それよりも集団が活性化するところをどう走るかが大事だった。スタートから72kmを走ったあたりで動きが起きはじめた」と当時の状況を振り返る。「イギリスとベルギーが主導権を握っていて、僕たちは50番手以内を走っていた。これなら集団に残れるかなと思っていたが、6・7人前の選手で中切れが起きて、後方に取り残される状態になってしまった」と続けた。そこからしばらくは第2集団で新城とともに前を目指していたが、他選手の落車の影響で後退を余儀なくされ、最後は第3集団での走行になった。

 「風で分断した集団が、そのままの差でサーキットに入る」という、別府のスタート前の予想通りのレース展開となった。「結果論でしかないが、スタートしてすぐに逃げに乗って、その後追いついてくる集団に食らいついて勝負するのも1つの手だったのかもしれない」とも。

トム・ボーネン(先頭右)らが率いる先頭集団。カタールのコースを知り尽くすスペシャリストたちによる優勝争いとなった Photo: Yuzuru SUNADAトム・ボーネン(先頭右)らが率いる先頭集団。カタールのコースを知り尽くすスペシャリストたちによる優勝争いとなった Photo: Yuzuru SUNADA

 新城同様に、力の差が最終的な順位に現れていると見る。「先頭集団に残っている選手は、みんなツアー・オブ・カタールでも結果を残しているスペシャリスト。やはりそうした選手たちの戦いになったなという印象」と話した。

 だが、このようなレース展開が、普段のレース、さらには世界選手権で毎回起こり得るかというと、決してそうではない。別府は「これは本当に特殊なケース。僕自身、途中でレースを降りているし、もやもやがないわけではない。でも、ギャンブルの要素が何よりも強いレースで、一瞬の判断が結果に現れた。やれるだけのことはやったし、今回は仕方がない」と、気持ちのうえでは割り切った様子だった。

◇         ◇

 1カ国最大9人を送り込む国がある一方で、日本は2人での参戦(獲得していた出場枠は3)と数的不利は否めなかった。だが、そればかりでは語ることのできない、世界選手権ゆえの、そしてカタールのレースゆえの展開と結果だったということだろう。別府と新城はすでに次なる戦いに向け、気持ちを切り替えている。凱旋レースとなる、10月22~23日のジャパンカップサイクルロードレース、翌週29日のツール・ド・フランスさいたまクリテリウムは、それぞれに今回とはコースの特徴が大きく変わり、また違った走りが見られることだろう。

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