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サイクリスト

ブルーノで行く!ヨーロッパ自転車旅<4>出会いや再会に恵まれ、失くしたカメラも"発見”…だが、旅はそんなに甘くなかった?!

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 旅する自転車「BRUNO」(ブルーノ)が取り組むキャンペーン「BRUNOが応援する『旅』 ~世界の自転車旅をサポート~ 若者よ旅に出よ!」で挑戦者に選ばれた溝口哲也さん(20)は、前回カメラを紛失してしまったものの、拾った方から連絡があり、受け取る約束をしました。さらに旅で出会ったユンゲルさんから一時カメラを借りて、旅を進めています。こんなにも出会いと手助けが多いヨーロッパ自転車旅も、疲れがピークに来たのか、落車をしてしまうアクシデントが!?

ドイツで寿司パーティー

 以前、フランスのカルカッソンヌでお会いしたご夫婦に会いにスイスのバーゼルまでライン川に沿って自転車を漕いでいく。波打つような畑の景色が気持ち良かった。バーゼルに着くと彼らが出迎えてくれ、約1カ月ぶりの再会を果たした。

シャフハウゼンの街並み Photo: Tetsuya MIZOGUCHIシャフハウゼンの街並み Photo: Tetsuya MIZOGUCHI
ライン川沿いのサイクリングロード Photo: Tetsuya MIZOGUCHIライン川沿いのサイクリングロード Photo: Tetsuya MIZOGUCHI

 昨日走ってきた道を引き返してドイツのコンスタンツへと戻り、今晩はユルゲンさんやマイケルさんと一緒にお寿司パーティーだ。テーブルには様々な種類の具材と海苔、そしてヨーロッパで初めて見る米が並んでいた。

 他愛のない話をしながら、一緒に寿司を握った。「寿司の作り方を教えてほしい!」と言われるが、私は滅多に寿司を握らない。むしろ彼らの方が上手に握っていて、日本人として情けなさを感じた。海外旅行をする際は改めて日本の文化を学んでおく必要がある。1カ月ぶりに食べる日本食は本当に美味しかった。

マイケルさん御家族とお寿司パーティー Photo: Tetsuya MIZOGUCHIマイケルさん御家族とお寿司パーティー Photo: Tetsuya MIZOGUCHI

気の緩みで一眼レフを置き忘れ

ユルゲンさんと私 Photo: Tetsuya MIZOGUCHIユルゲンさんと私 Photo: Tetsuya MIZOGUCHI

 ヨーロッパに降り立って一カ月が経とうとしている。ここまで目立ったトラブルもなく順調に進んできたが、最大のミスを犯してしまう。ユルゲンさんとのサイクリングの途中で、大事なカメラを置き忘れてしまったのだ。私の油断や慢心が原因だ。本当に情けない。

 自責の念に駆られていた私に、ユルゲンさんは「俺のカメラを使ってよ」と一眼レフを手渡してくれた。どうして他人である私にそこまでしてくれるのかと尋ねると「若い時に世界を旅することは素晴らしい経験になるし、それを応援したいんだ」との返答にジーンときた。

 ありがたく彼のカメラを使わせてもらっている。そして、幸いなことに私のカメラを拾った方から連絡があった。再び私の元に返ってくることに安堵した。

柔らかいベッドは幸せ

 お世話になったユルゲンさんに別れを告げて三日間滞在したコンスタンツを後にする。フェリーに自転車を乗せてボーデン湖を渡った。ボーデン湖から遠ざかるにつれ、景色は丘陵地帯へと変わる。日が沈んで、そろそろ寝床を探そうかという時に出会ったのは、同じく自転車で旅をするドイツ人のペーターさん。

 草原の隅に2つのテントが並んだ。とても陽気な彼はラジオのリポーターだという。有名人なの?と尋ねると「僕は有名じゃないけど、僕の声は有名かもね」と笑って答えてくれた。テント越しでの会話は新鮮で、真っ暗な草原に2人の笑い声が響いていた。

 翌朝、霧が立ち込めているなか、ペーターさんと共に走り出す。アルプスを抜けたらてっきり平坦だと思ったが、その予想は外れ、標高800~1000mの高原。ひたすらアップダウンの繰り返しで、緑と茶色が混じり合う広々とした景色は圧巻だった。

気持ちの良い草原の向こうにはアルプスが見える Photo: Tetsuya MIZOGUCHI気持ちの良い草原の向こうにはアルプスが見える Photo: Tetsuya MIZOGUCHI
朝靄のかかる草原をペーターさんと走る Photo: Tetsuya MIZOGUCHI朝靄のかかる草原をペーターさんと走る Photo: Tetsuya MIZOGUCHI
ホーエンシュヴァンガウ城 Photo: Tetsuya MIZOGUCHIホーエンシュヴァンガウ城 Photo: Tetsuya MIZOGUCHI

 ペーターさんと別れて西へと進んでいくと2つのお城が見えてくる。ホーエンシュヴァンガウ城とノイシュバンシュタイン城だ。翌日は見学するつもりだ。鳴り響く音楽と歓声が聞こえなくなるように山の奥へと分け入って、野宿をした。

 ノイシュバンシュタイン城はフリードリヒ2世によって建てられた。岩山の上にそびえ立つその姿は、実に美しかった。中に入ればさまざまな建築様式を取り入れた荘厳な空間を楽しめた。午前中に走り出す予定だったが、お城の雰囲気に魅了され、時間がどんどん過ぎていった。

南ドイツの風土料理、マウルタシュン Photo: Tetsuya MIZOGUCHI南ドイツの風土料理、マウルタシュン Photo: Tetsuya MIZOGUCHI

 走り出すのが遅くなったせいで、日が暮れた後も漕ぎ続けていた。暗くなっていく高原の道に不安を感じつつ走っていると、一人の自転車乗りと出会った。

 彼はサウルスさんといい、同じく遊んでいたら日が暮れてしまったらしい。まるで私と同じ境遇だ。自宅まで30kmついてくれば泊めてあげるという言葉に、思わず喜んだ。2台の自転車が真っ暗な丘を越え、森の中を駆け抜けていく。昨日は山の斜面で寝心地が悪かっただけに、柔らかいベッドで寝られることに、この上もない幸せを感じた。

シュタルンベルク湖に沈む夕日 Photo: Tetsuya MIZOGUCHIシュタルンベルク湖に沈む夕日 Photo: Tetsuya MIZOGUCHI
泊めてくださったサウルスさんご夫婦 Photo: Tetsuya MIZOGUCHI泊めてくださったサウルスさんご夫婦 Photo: Tetsuya MIZOGUCHI

 翌日は、サウルスさんにミュンヘンまで自転車で案内してもらった。人々は伝統的な民族衣装を身に纏い平日の昼間っからビールを飲んでは愉快そうに騒いでいた。どうやらオクトーバーフェストというこの時期だけのお祭りで賑わっているようだ。

“フランスのおじいさん”のもとへ

夕日に照らされるブルーノ Photo: Tetsuya MIZOGUCHI夕日に照らされるブルーノ Photo: Tetsuya MIZOGUCHI

 この日はフランスのタンドで出会った“私のフランスの祖父”であるフェルディナンドおじいさんに会うために、オーストリア中央の御自宅へと向かう。道中は、まるで緑で色塗られたかのように、見渡す限りきれいな草原が続いている。夕暮れ時は、緑の草原はやがて黄金に輝き、心踊る情景が楽しめた。

 しかし、日が沈みきって暗くなってくると、そこは暗闇の世界だ。夜空に輝く星以外の光源はなく、まるで絶海の孤島に居るかのような錯覚におちいった。本当に人が住んでいるのか、と不安になるような森を抜けて、ようやくフェルディナンドおじいさんの住む小さな集落にたどり着いた。

 フェルディナンドおじいさんとはタンドのキャンプ場で出会った。当時数々の峠越えに疲れ果てながら、皆が眠りにつく頃にキャンプ場へと到着した。そんな私に声をかけてきたのが彼だった。それ以後、たまに連絡を取り合っていたのだ。

フェルディナンドおじいさん Photo: Tetsuya MIZOGUCHIフェルディナンドおじいさん Photo: Tetsuya MIZOGUCHI

 ここまで毎日走り続けていたので、久々に休息を取ることができた。独り身の彼にとって私は本当の孫のような存在だったらしく、たくさん話をしてくれ、ご飯を一緒に作り、いろんな場所にも連れていってくれた。

 湖と山に囲まれた街ハルシュタットもその一つだ。切り立った山の斜面に民家が建ち並び、底が見えるほど透き通った湖に面している。美しい街並みが印象的だった。その近くからゴンドラを乗り継いで山へ登る。そこには氷河に覆われた洞窟があった。岩山の中とは思えないほど空間は広く、自然の雄大さを思い知らされた。

ハルシュタットの街並み Photo: Tetsuya MIZOGUCHIハルシュタットの街並み Photo: Tetsuya MIZOGUCHI

初めての落車

チェコのレストランで店頭の黒板に書いてある読めないメニューを頼んだ Photo: Tetsuya MIZOGUCHIチェコのレストランで店頭の黒板に書いてある読めないメニューを頼んだ Photo: Tetsuya MIZOGUCHI

 本当にお世話になったフェルディナンドおじいさんと別れて、再び一人で走り続けた。初めて走る国であるチェコに入ると、雨が降り止まぬ森が続いた。

 休息を取れたおかげで調子良く走れる、はずだった。しかし、徐々に右膝に痛みが生じてきて、ついにはペダルを回すことができなくなってしまう。仕方がないので、トゥークリップを強めに締め、左足だけで回すことにした。幸いチェコは物価が安く、ホテルに泊まることができたが、膝の痛みには不安が残った。

雨上がりのプラハ Photo: Tetsuya MIZOGUCHI雨上がりのプラハ Photo: Tetsuya MIZOGUCHI

 首都プラハ訪れて私のチェコに対する印象が大きく変わった。荘厳な造りの建物が建ち並び、多くの人で賑わう街は、今まで走った何もない地域とはまるで別世界だった。

 いつの間にか膝の痛みは消え、市内観光に没頭していた。降り続いた雨も止んで、虹まで見えた。

自転車を奪われてしまった Photo: Tetsuya MIZOGUCHI自転車を奪われてしまった Photo: Tetsuya MIZOGUCHI
雨が上がり虹の下をくぐっていく Photo: Tetsuya MIZOGUCHI雨が上がり虹の下をくぐっていく Photo: Tetsuya MIZOGUCHI
転倒してしまった、線路が横切る道路 Photo: Tetsuya MIZOGUCHI転倒してしまった、線路が横切る道路 Photo: Tetsuya MIZOGUCHI

 そんな明るい気分を打ち砕く事件が発生した。突然のリアシフトワイヤーの断線、リア変速機のアームを曲げてしまった。さらに変速機を気にしながら走行していたら、横切る線路に気付かず、転倒。フェンダーを破壊して、チェーンが回らなくなった。体からは血が流れ、追い討ちをかけるように雨が振りだした。度重なる不運に打ちひしがれた。

知らない国、知らない場所、知らない言葉―

 助けを求めるべきではないのかと弱い考えが頭をよぎった。勝手に旅に出ておきながら助けを求めるなんてカッコ悪すぎる。冷静になるよう、走れなくなった自転車を押して歩く。未熟な私だが、今までにも日本を旅してきて、いくつかの修羅場をくぐり抜けてきた。そういう経験が自信に繋がり、逆境に立ち向かう勇気をくれた。

 通りすぎるクルマに雨水をかけられながら歩き続け、ようやく小さな村のペンションに到着した。夜の雨の中、真っ黒に汚れた私に受付のおばさんは驚き、親切にしてくれた。強い自分を保っていられるのは、きっと親切のおかげなのだと思う。

 アクシデントの影響で少し予定が狂ってしまったが、自転車の修理が最優先。いろいろな不運が重なったが、「旅を楽しんでいる余裕がまだあるからきっと大丈夫だ」そう思うようにした。

◇         ◇

 Wi-Fi環境が悪い中で走行しているせいか、溝口さんとは連絡がなかなか取れない状況ですが、旅を進めて、元気に走り続けているようです。残りわずかですが、最後まで応援しましょう!

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