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サイクリスト

ツール・ド・東北2016<5>今を見つめ、未来を想像する場所 ポタガールが走った「ツール・ド・東北」

by 龍野雅美 / Masami TATSUNO
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 9月17、18日の2日間にわたって開催された「ツール・ド・東北2016」を、ポタガールの“まさみん”こと龍野雅美さんが実走レポートします。“さおりん”こと後口沙織さんと、おなじみのコンビが雨にも負けず100kmを完走しました。

◇      ◇

 「応援してたら、応援されてた」─まさにその通り。復興支援の気持ちで行ったはずが、応援されて元気になって帰ってきました! わたくし「ポタガール」のまさみんとさおりんが「民泊体験」とともに、大会の様子を振り返ります。

第1エイドステーションの女川駅に着いた、まさみん(左)とさおりんのポタガールコンビ。アツアツのつみれ汁が体をポカポカにしてくれる。ねぎもたっぷりですごくおいしい! Photo: Masami TATSUNO第1エイドステーションの女川駅に着いた、まさみん(左)とさおりんのポタガールコンビ。アツアツのつみれ汁が体をポカポカにしてくれる。ねぎもたっぷりですごくおいしい! Photo: Masami TATSUNO

奇跡の連続の上にある民泊での出会い

 「いや~、まだ今年が終わってないのに言っちゃうけど来年も家に来て! 来年と言わずいつでも来て!」

 出会って2時間後にそう言ってくれたのは、民泊でお世話になった四野見(しのみ)さん。石巻市内で奥様のゆみさんと英(はんな)ちゃん(小学6年生)の3人で暮らすご一家です。「ツール・ド・東北」では、大会参加者やボランティアの方を対象に開催地周辺の一般の民家に有料で宿泊できる「民泊」を今年も実施しており、現地の方々との交流できるとあって年々利用者が増えているそうです。今回、私たちも四野見さんご一家が提供してくださった「民泊」でお世話になりました。

お世話になった四野見さんご一家。おいしい自家製のお野菜と旬のお魚でおもてなししてくださいました!「旦那(キクミミさん)は?市内で食べてるの?ダメだよ!うちへ来て正解!」 Photo: Masami TATSUNOお世話になった四野見さんご一家。おいしい自家製のお野菜と旬のお魚でおもてなししてくださいました!「旦那(キクミミさん)は?市内で食べてるの?ダメだよ!うちへ来て正解!」 Photo: Masami TATSUNO

 事前のやりとりで「お酒は飲まれますか?」の質問に「私はダメだけど、まさみんは酒豪です」とアナウンスしてくれていたさおりん。おいおい…。でも、功を奏したのか、この日をすごく楽しみにしてくれていました(特にご主人が、笑)。

 自転車の話、ポタガール活動の話、ご夫婦の結婚前のデートのエピソード、ご家族が行かれた旅行の話、石巻の美味しいものの話、そして震災の話。話はまったく尽きなくて、どれを思い出してもいつでもにやけてしまいます。でも、そのなかで絶対に忘れられないと思ったのが、ゆみさんの「奇跡の連続で今日がある」という言葉でした。

 あのとき車で逃げていたら…。あのとき助けてくれる人がいなかったら…。いくつもの選択のうえに、今日という日を迎え、こうして私たちが一緒に食卓を囲むことができる。私たちも自転車を始めていなかったら…。きっとこうして出会うことはなかったはず。

泊まった部屋に飾ってあったテルテル坊主。「自分も遠足のとき雨が降ってすごく残念だったから…」と英(はんな)ちゃんが作ってくれていました Photo: Masami TATSUNO泊まった部屋に飾ってあったテルテル坊主。「自分も遠足のとき雨が降ってすごく残念だったから…」と英(はんな)ちゃんが作ってくれていました Photo: Masami TATSUNO

 そしてもう一つ、強く感じたこと。それは未来に向かって進む優しさと強さでした。震災後は、不安から泣いてしまうことが多かったという英ちゃん。でも私たちが出会ったのは「自分も遠足のとき雨が降ってすごく残念だったから…」と、テルテル坊主を作ったり1時間ごとに天気予報をチェックしてくれる、優しくて人のために行動できる魅力的な女性でした。

朝ごはんに、と用意してくれていたおにぎりとみんなが大好きなカマボコ。「あのおにぎりを力にかえよう!」とがんばることができました Photo: Masami TATSUNO朝ごはんに、と用意してくれていたおにぎりとみんなが大好きなカマボコ。「あのおにぎりを力にかえよう!」とがんばることができました Photo: Masami TATSUNO

 ご両親も、「これからの日本は世界にフィールドが広がっている」と、これから私たちが歩む未来について語ってくれました。考えてみれば普通のこと。でも、普通を奪われやっと日常を取り戻し、前に進むまでにはいろいろな思いがあったと思います。それを乗り越えたご家族の優しさは、本当に相手に寄り添っていてとてもあたたかいものでした。四野見家のみなさん、本当にありがとうございました!

 来年のツールド東北、また来なくちゃ。いや、ツールド東北じゃなくてもまた来たい! 実はこのイベント、真の魅力はここにあるのかも。

雨の100km 頑張らなきゃいけない理由

 前日から降り続けた雨。でも走る気持ちが萎えることは全くありませんでした。四野見さんが朝ごはんにと渡してくれたあったかいおにぎりでエネルギー補給もばっちりです!

前日から降り続けている雨。でも被災地を思うと、走らないという選択肢は全く考えられませんでした Photo: Masami TATSUNO前日から降り続けている雨。でも被災地を思うと、走らないという選択肢は全く考えられませんでした Photo: Masami TATSUNO

 私たちが参加したコース「北上フォンド」(100km)は石巻専修大学から北上川沿いを神割崎で折り返す、前半に上りの多いコースです。4カ所あるエイドステーションでは、毎年人気のつみれ汁やホタテの貝焼きが食べられます。

雨のなか、カッパを着て大漁旗を降り応援してくれる地元の方。がんばれ!って大きな声援を送ってくれました Photo: Masami TATSUNO雨のなか、カッパを着て大漁旗を降り応援してくれる地元の方。がんばれ!って大きな声援を送ってくれました Photo: Masami TATSUNO

 実は、この大会で初めての経験をしました。意気揚々と向かったものの、雨に濡れた寒さで思っていた以上に体力を使ってしまったようで、突然足がズシンと重くなり、思ったようにスピードが出せなくなってしまったのです。軽い‟ガス欠”です…。エイドステーションがすぐだったので、シーフードカレーもたっぷり食べて、さおりんの必需品「アミノバイタル」をもらって回復することができました。でも雨の日のライド、やっぱりいつも以上の備えが必要ですね。

ホタテを焼くボランティアの方は「味付けしてないんだよ。海の塩の味が効いてておいしいだろ?」と誇らしげに教えてくれました Photo: Masami TATSUNOホタテを焼くボランティアの方は「味付けしてないんだよ。海の塩の味が効いてておいしいだろ?」と誇らしげに教えてくれました Photo: Masami TATSUNO
シーフードカレー、おいしい~!と食べていたら隣の人がビールを飲んでいる!?まさか!と思ったらこのエイドではサントリーさんの「オールフリー」が用意されていました! Photo: Masami TATSUNOシーフードカレー、おいしい~!と食べていたら隣の人がビールを飲んでいる!?まさか!と思ったらこのエイドではサントリーさんの「オールフリー」が用意されていました! Photo: Masami TATSUNO
「アミノバイタル」で目元を隠すさおりん Photo: Masami TATSUNO「アミノバイタル」で目元を隠すさおりん Photo: Masami TATSUNO

 そして忘れられない初体験がもう一つ。突然、前を走るさおりんから小さく黒い物体が落ちてきました。「…。はっ!」そう、それはつけまつげ…。気が付いた瞬間の衝撃たるや、忘れられません。そういえば「雨が降るとつけまが取れる~」と言っていたなぁ。「つーけまつーけまつけまつげー♪」走ってる間、頭から離れませんでした(笑)。 

 そんなこんながありつつも、どうしても走り切らなきゃという気持ちになるのが「ツール・ド・東北」。実は2年前に青森から仙台までの自転車旅をしたのですが、その時にお世話になった人、出会った景色にまた会いたいという思いがありました。

「こうやって食べるんですよ~」と地元のボランティアの方が蒸しホヤの食べ方を教えてくれました Photo: Masami TATSUNO「こうやって食べるんですよ~」と地元のボランティアの方が蒸しホヤの食べ方を教えてくれました Photo: Masami TATSUNO

 それだけではありません。雨だというのに、本当に多くの人が軒先で傘をさしながら応援してくれました。すれ違う車の中から手を振ってくれる人、仮設住宅の窓から大きく手を降ってくれる人。

 「去年もここで応援してくれていましたよね?」という問いに「また来年もここで会いましょう!元気にして待っているから!」と答えてくれる人。また走りに来なきゃいけない理由ができました。

みんなが私たちを待ってくれている

「TOMODACHI ソフトバンク・リーダーシップ・プログラム」に参加した金子凌平くん(高2)。「今まで怖いと思っていた外国語でのコミュニケーションも身近に感じることができた」ととのこと Photo: Masami TATSUNO「TOMODACHI ソフトバンク・リーダーシップ・プログラム」に参加した金子凌平くん(高2)。「今まで怖いと思っていた外国語でのコミュニケーションも身近に感じることができた」とのこと Photo: Masami TATSUNO

 東日本大震災の復興支援のために開催された「ツール・ド・東北」。今回で4回目の開催を迎えましたが、今も仮設住宅はまだ多く並び、ところどころに当時の被害の様子を思わせる津波の爪痕も残ります。

 でも一方で、中から、そして外から「楽しい未来を作っていくんだ!」という人々の強い気持ちに触れる出来事がたくさんありました。

笑顔のすてきなスタッフの方たちにつられて思わず購入。カキもずんだ餅も明日のエネルギーに! Photo: Masami TATSUNO笑顔のすてきなスタッフの方たちにつられて思わず購入。カキもずんだ餅も明日のエネルギーに! Photo: Masami TATSUNO
「去年、足がつったときに助けてくれましたよね!」と声をかけられたさおりん。さすがナース! Photo: Masami TATSUNO「去年、足がつったときに助けてくれましたよね!」と声をかけられたさおりん。さすがナース! Photo: Masami TATSUNO
新婚ホヤホヤ~(笑) Photo: Masami TATSUNO新婚ホヤホヤ~(笑) Photo: Masami TATSUNO

 レース前日の会場でも、地域の復興について語ろうとする高校生たちの活動、地元のおいしいものをどんどん広めていきたいという地元愛。それを応援しつづける人。そして私たちのように自転車で走り続ける人。いろんな気持ちが行きかう場所。そうした人の気持ちのやりとりだけで、何度でも足を運びたくなるのが、この「ツール・ド・東北」がもつ最大の魅力なのではないでしょうか。

龍野雅美龍野雅美(たつの・まさみ)

1984年生まれ、埼玉県在住。平日はふつうの働き女子(アラサー女子)、休日は自転車、ときどきライター。2010年に初参加した四国一周サイクリングイベント「コグウェイ四国」がきっかけで自転車旅に夢中に。以来、日本各地へ自転車とともにでかけ、そろそろ海外での自転車旅も…と夢見ている。自転車の楽しみ方と埼玉の魅力を発信する「ポタガール」としても活動し、ポタガールらが登場するウェブサイト「ポタ日和」で情報発信をしている。ワールドサイクルブログ「ポタガール まさみんです!」でも執筆中。

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