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“自転車革命都市”ロンドン便り<44>ツール・ド・フランスのゴールめがけて 女性2人のロンドン-パリ自転車旅

by 青木陽子 / Yoko AOKI
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 「9月のマンチェスター・ロンドンの練習に、パリまで走ってみようと思うんだけど、ヨーコも一緒に行かない?」と声をかけてきたのは、前々回紹介した「ツアー・オブ・ウェセックス」の記事でも登場したRaphaのアンバサダー仲間のルース。「マンチェスター・ロンドン」とは、Raphaが毎年主催しているその名にある2都市間350kmを走るチャリティイベントで今年が3回目。その初回にはわたしも参加しました。ロンドン-パリ間も、ルートによりますが300〜400km程度なので、練習にいいと考えたのだそう。「ツール・ド・フランスがパリでゴールする時間に間に合うように着けば気分的にも盛り上がるし♪」という名提案にふたつ返事をして、女子2人旅の企画が始まったのでした。

ブルターニュの隣、ピカルディ県は麦やトウモロコシ、ビートなどの畑が続く。アップダウンが続く地形はイギリスにも似ているけれど、畑の区画がイギリスよりもだいぶ大きい。きれいなのだけれど何時間も同じような光景で、フランスの大きさを実感 Photo: Yoko AOKIブルターニュの隣、ピカルディ県は麦やトウモロコシ、ビートなどの畑が続く。アップダウンが続く地形はイギリスにも似ているけれど、畑の区画がイギリスよりもだいぶ大きい。きれいなのだけれど何時間も同じような光景で、フランスの大きさを実感 Photo: Yoko AOKI

英仏海峡を超える走行距離約300kmの旅

 英仏海峡を渡るには、ロンドンのほぼ真南の港ニューヘイヴンからフランスのディエップ港に着くフェリーを選択。メジャーなドーバーからフランスのカレーに着くフェリーは本数も多くていいのですが、カレーからパリが長めなので今回は敬遠しました。

 ロンドン-ニューヘイヴンが100km、ニューヘイヴン-パリは最近走ったという人から180kmのルートを教えてもらい、よさそうなのでそれに決定(これがちょっとトラブルの元に…後述)。日本の「ルートラボ」のようなwebサービス、「RidewithGPX」や「Strava」でいろんな人のルートを参考にしました。ちなみにロンドンを東京にたとえれば、名古屋までほどの距離になります。

今回はよりロングライド向きのアンカーRFX8、前後に英のバイクパッキングブランドApiduraのバッグ(フロントはRaphaとのコラボ)をつけました。リュックなど身に付けるものがないと疲れにくくおすすめです Photo: Yoko AOKI今回はよりロングライド向きのアンカーRFX8、前後に英のバイクパッキングブランドApiduraのバッグ(フロントはRaphaとのコラボ)をつけました。リュックなど身に付けるものがないと疲れにくくおすすめです Photo: Yoko AOKI

 着替えなどの荷物はパリに送っておければよかったのだけれど、諸般の理由で魅力的な商品が増えてきたバイクパッキングで携行することに。フレームがXXSサイズで荷物をつけられる隙間が小さいわたしはバイクパッキングはいつも苦労するのですが、フロントは「Rapha x Apidura」のバーバッグ、リアは「Apidura」のコンパクトサイズのサドルバッグ、合計12Lほどの容量を確保しました。

 スペアチューブやパッチ、ツールキットにレインジャケット、補給食、最小限の洗顔キットと日焼け止め、パリに着いてからのTシャツ短パンとサンダル、てぬぐい、携帯充電キット…などのほかは何も持たない削りに削った携行品。化粧品はマスカラ1本、口紅もサランラップに少量塗りつけてという涙ぐましさです。おっと、外国なのでパスポートは忘れてはいけない。

ペダルを踏んでフランスに上陸

フェリー乗り場で、クルマの列の隣に自転車の列が。ほとんどの人がパリを目指していた模様。フェリーの自転車枠はこの前後数便は満席だった Photo: Yoko AOKIフェリー乗り場で、クルマの列の隣に自転車の列が。ほとんどの人がパリを目指していた模様。フェリーの自転車枠はこの前後数便は満席だった Photo: Yoko AOKI

 ロンドンからニューヘイヴンまでの道の大半は何度か走ったことがあるルートだったのでわりと楽勝で到達。ここでオックスフォードから走ってきたルースと合流しました。2日間着の身着のままは嫌という女子らしい理由で、船を待つ間、申し込んでおいたAirbnbのお宅で洗濯をさせてもらって小休憩。まだ湿ったレーパンをサドルバッグの外側に括りつけ、港に向かったのでした。

 リクライニングシートで目を閉じた途端に眠ってしまったようで、まだ着かないでいいよ、もっと眠りたい…という願いも虚しく英仏バイリンガルの船内アナウンスに急き立てられ、まだ真っ暗なディエップ港にペダルを踏んで上陸。

 たかが5時間狭い海峡を渡っただけで、建物や並木の町並みがフランス風の瀟洒なものになっていて、ショボショボだっだった目が覚めてきました。ガーミンに入れておいたルートの矢印の方向にフロントホイールを向け、ここからはルースとふたりでGO!

 朝5時台のブルターニュ地方は濃い霧に覆われていて肌寒い。数キロくらいずつで先頭交代しながら、熱いコーヒーと焼きたてクロワッサンの朝ごはんを夢見ていくつかの小さな集落を過ぎる…そしていくつかの集落を通過して…そして集落の名前を知らせる標識はあれど家が見あたらないような極小集落も通過して……。

朝6時頃、温かいコーヒーを飲めるお店が見つかることを祈りながら霧のブルターニュをひた走る。県道クラスの道だったけれど、コンビニはもちろん開いているカフェもない。灯りの消えている農家の軒先に手書きの「シードルあります」という看板を横目に進むのみ Photo: Yoko AOK朝6時頃、温かいコーヒーを飲めるお店が見つかることを祈りながら霧のブルターニュをひた走る。県道クラスの道だったけれど、コンビニはもちろん開いているカフェもない。灯りの消えている農家の軒先に手書きの「シードルあります」という看板を横目に進むのみ Photo: Yoko AOK

 フランスの田舎には、旅人に食事を提供するような街道沿いの店が極端に少ないことを知りました。結局営業しているカフェを見つけたのは上陸してから2時間半後、60kmほど走ってからでした。

想定外の道路ストレス

60kmほど走ってようやくパン屋さんやカフェが開いている時間になり、美味しいコーヒーにありついてホッと一息。大きなバゲットもぺろり Photo: Yoko AOKI60kmほど走ってようやくパン屋さんやカフェが開いている時間になり、美味しいコーヒーにありついてホッと一息。大きなバゲットもぺろり Photo: Yoko AOKI

 美味しいコーヒーを一気に2杯やっつけてからのふたりは足がよく回るようになり、昼前には予定の2/3である120km地点も通過。なーんだパリ近いじゃん! とニヤニヤし始めたものの、パリに近づくほど、ガーミンが走れと示す道が立派になり、複数車線になり、制限時速が90km/hと高くなってきた。フランスのドライバーは多くが自転車に理解があってきちんと距離をあけて追い抜いてくれるけれど、風圧を感じるほどのスピード差で抜かれるようなことが続き、交通量も増えてきてストレスが…。

 ルートのgpxファイルをくれた人は「すごく美しい道だった!」と絶賛していたけれど、どこがどう美しいのやら(怒)…というわけで止まってルートを見てみると、予定していた道は県道ながらこれから高架になり高速道路っぽさが増すとわかり、変更することに。クルマを運転しないルースはこのときすでに慣れない道路ストレスでヘロヘロになってしまっていたので、彼女を励ましながら静かな道を探してパリ都心に少しずつ向かいました。

 フランスも大半の鉄道が自転車をそのまま載せられるので、電車に乗ることも検討したのですが、最寄り路線は工事で運休、自転車は載せてもらえないバスでの代行になっていて断念。ヨーロッパの都市はどこも自転車フレンドリーになりつつあるけれど、それはごく都心だけの話で、郊外圏はいまだにクルマ王国です。パリ郊外も例外ではなく、スマホにダウンロードしておいた地図で交通量の多そうな大きな交差点を避けながらの消耗戦ライドに…。

走るほどに学ぶ自転車の旅

パリ郊外の道を地図と首っ引きで走っていたときに見つけた、ツール・ド・フランスのコースであることを示す印! ここからはワクワクこのサインにしたがって都心まで走ったのでした Photo: Ruth HORNパリ郊外の道を地図と首っ引きで走っていたときに見つけた、ツール・ド・フランスのコースであることを示す印! ここからはワクワクこのサインにしたがって都心まで走ったのでした Photo: Ruth HORN

 でもラッキーなことが! パリ北部のサン・ドニから都心にアプローチしていたところ、「ここをツール・ド・フランスが通るので日曜日は交通規制があります」という貼り紙を見つけたのです。そしてよく目立つ黄色の矢印があちこちに! 選手たちはこの風景を見ながらパリ入りするのね、3週間走ってきてどんな気持ちなんだろう、このくらいの坂は飛ぶように超えてしまうんだろうな…などと想像しながら矢印を追いかけ、凱旋門のそばまでスマホも見ずに到着できたのでした。

 総走行距離300km、予定より3時間ほど多くかかってしまったけれど、ハプニングも含めて楽しんで走り切れました。地図の情報や地形を読み、建物の形を見、何が栽培されているかなどを観察しながら知らない土地を自転車で発見していくのは本当に楽しいものですね。味気ないパリ郊外の景色さえ、華やかさ100%の都心へ変化していく課程が興味深かったです。

ツール・ド・フランスのゴールのほかに、もうひとつの目的だったのが、サイクルアパレルRaphaのアフターパーティ。セーヌ川に浮かんだ船を貸し切りにしてのパーティは、現役&過去の超有名ライダーも続々顔を出す華やかさ! Photo: Yoko AOKIツール・ド・フランスのゴールのほかに、もうひとつの目的だったのが、サイクルアパレルRaphaのアフターパーティ。セーヌ川に浮かんだ船を貸し切りにしてのパーティは、現役&過去の超有名ライダーも続々顔を出す華やかさ! Photo: Yoko AOKI
この日行われた女子レース「ラ・コース」で7位だった「キャニオン//スラム」のティファニー・クロムウェル選手にお願いしてツーショット\(^o^)/ Photo: Yoko AOKIこの日行われた女子レース「ラ・コース」で7位だった「キャニオン//スラム」のティファニー・クロムウェル選手にお願いしてツーショット\(^o^)/ Photo: Yoko AOKI

 そして未知なところを走る場合は他人任せのルートは要注意、同じサイクリスト推奨とはいっても趣味嗜好走力はいろいろ。下見は無理でも「Googleストリートビュー」などを駆使して念入りにチェックするべきだということを再確認することにもなりました。こうやってサイクリストは走るほどに大人になっていくのですね。今回も楽しいライドでした! 次はどんな冒険をしようかな?

青木陽子青木陽子(あおき・ようこ)

ロンドン在住フリー編集者・ジャーナリスト。自動車専門誌「NAVI」、女性ファッション誌などを経て独立起業、日本の女性サイトの草分けである「cafeglobe.com」を創設し、編集長をつとめた。拠点とするロンドンで、「運転好きだけれど気候変動が心配」という動機から1999年に自転車通勤以来のスポーツ自転車をスタート。現在11台の自転車を所有する。ブログ「yokoaoki.com」を更新中。

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