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山下晃和の「ツーリングの達人」・アメリカ フロリダ編<2>宿探しもエンジョイ ホステルとキャンプを組み合わせた自転車旅

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 予約日を間違えていたホステルの受付で途方に暮れていたところ、お客らしき女の子が受付の後ろにあるパソコンを指差し、「ここでSOBE HOSTELの部屋を探してみたら?」と言った。発音でいうと「ソービー」だが、僕の耳には「サゥビー」と聞こえた。その女の子に礼を言い、「Hostelworld」(ホステルワールド)のサイトを調べるとドミトリーに空きベッドがあった。自転車の箱は持ち歩くのが大変だったので、仕方なく5ドルのストレージ料金で預け、「SOBE HOSTEL」まで歩いていった。「明日また自転車の箱を受け取ります。Gracias(ありがとう)」というと、無愛想だった女性スタッフはやっと微笑んでくれた。フロリダでのスペイン語は何かと有効だ。

←<1>梅雨の日本を脱出 フロリダ縦断へ

朝起きたら、この通り!自転車とテーブルとBBQ台と湖。そして、青空に白い雲。気持ちいい芝生の匂い。幸せだ Photo: Akikazu YAMASHITA朝起きたら、この通り!自転車とテーブルとBBQ台と湖。そして、青空に白い雲。気持ちいい芝生の匂い。幸せだ Photo: Akikazu YAMASHITA

「棚ぼた」で見つけた初日の宿

 外に出ると日差しが強く、湿度もあり汗が吹き出る。ブロックが離れていたので大きな荷物はなかなか辛い。だが、途中のドラッグストアでシャンプーなどを買うことができたし、ホステル自体もメインは1階にあったので最初から「SOBE HOSTEL」にすれば良かったという気持ちになった。値段は800円ほど高いが、周りも静かだし、自転車も裏に置いてもらえそう。Wi-fiも朝食も無料。美味しいワッフルを焼いてくれるという特典付きだ。

朝食にはりんごやバナナと焼きたてのワッフルを用意してくれるSOBE HOSTELの無料朝食。食後にはコーヒーも飲める : Akikazu YAMASHITA朝食にはりんごやバナナと焼きたてのワッフルを用意してくれるSOBE HOSTELの無料朝食。食後にはコーヒーも飲める : Akikazu YAMASHITA

 その後も、ダイニング兼リラックスルームにあるパソコンで「ホステルワールド」のサイトを開き、サウスビーチ近辺のホステルの価格をよく調べてみると、意外にも2000円から3000円くらいの手頃なところがたくさんあった。アメリカは物価が高く、とくに宿泊費が高いというイメージがあったが、ちゃんと調べればそうでもないことが分かった。

自転車移動にマストな「水」

途中大きな鉄道の踏切を渡った。ここは自転車専用道だった唯一の場所。このあとはすべて車道の横の路肩を走ることになる。27号線、別名「オキチョビーロード」 Photo: Akikazu YAMASHITA途中大きな鉄道の踏切を渡った。ここは自転車専用道だった唯一の場所。このあとはすべて車道の横の路肩を走ることになる。27号線、別名「オキチョビーロード」 Photo: Akikazu YAMASHITA

 日本の真夏であれば朝5時には空がぼんやりと明るくなっていて、自転車で走り出せるが、アメリカは夜が長い分、朝は6時半でやっと走り出せる時間だった。これはアメリカがサマータイム制を導入しているせいもある。ネパールやバングラデシュを旅していたときは日中があまりにも暑過ぎるため、薄暗い早朝から漕ぎ出したときは涼しくて最高に気持ち良かった。

 が、それは車がそれほど通っていないことが前提。アメリカは大きなトレーラーがバンバン走っていくので、安全面を考えても、マイアミなどの都市部から地方へ脱出するときは、日が昇ってからのほうが賢明である。

 サウスビーチを含めたマイアミビーチは半島のようになっていて、ビスケーン湾が間にあるのでダウンタウン方面へは大きな橋を渡らなくてはならず、国道27号線の道標を頼りに北西に進む。目指すのは、いかにもネイティブが付けた名であろうオキチョビー湖。「LAND McNALLY」というアメリカでよく売られているドライブマップによると、途中から「野生地区」という表記がしばらく続く。その通り、始めのうちはショップ、ガソリンスタンド、モーテルなどがあったが、30kmほど走ると何もなくなっていった。

直線が続くアメリカの道。だいたいこんな感じが続く。巨大トレーラーはスピードを緩めずに飛ばしてくるので要注意 Photo: Akikazu YAMASHITA直線が続くアメリカの道。だいたいこんな感じが続く。巨大トレーラーはスピードを緩めずに飛ばしてくるので要注意 Photo: Akikazu YAMASHITA

 気温は午前中ですでに35℃を超え、アスファルトの色は日本より白く照り返しがキツイ。まぶし過ぎてESSのサングラスを外すことができない。風がまったくない日は体感温度は40℃近くに感じた。ハンドルへと伸ばしている前腕から球になって汗が吹き出てくるのだ。

 おまけに、地平線まで一直線に伸びる舗装路。白い雲は浮かんでいるが、あまりにも空が広すぎて、流れているというよりは止まっているように見える。漕ぎに漕いでも、前に進んでいるような気がしないのだ。さらに、右手にも左手にも見えるのは牧場のような黄緑色の草原のみ。通り過ぎる車は徐々に少なくなってきて、心細くなってくる。

アメリカではさまざまな種類のミネラルウォーターが小さなストアでも売っているので安心だが、1日目は町間が長くて、2リットルでは足りなかった Photo: Akikazu YAMASHITAアメリカではさまざまな種類のミネラルウォーターが小さなストアでも売っているので安心だが、1日目は町間が長くて、2リットルでは足りなかった Photo: Akikazu YAMASHITA

 昼ごろになると脳天からフロリダの太陽が襲ってきて、ヘルメットの紐の横からもみあげを伝い、汗が自分の膝にポタポタと滴り落ちる。予想よりも喉が渇く。周りには木陰すらない。水を多めに積む準備をせずに無人エリアに突入してしまったため、我慢が続いた。ペットボトルの水を飲み干してしまっては危険だ。

 修行のように漕いだあとに、ガソリンスタンドが遠くに見えてくると、「あ~生き延びた」という安堵感がやってきた。この時から、水を5.5リットル積むことを決めた。自転車は相当重たくなるが、その方が精神的な余裕が出てくる。

フロリダはRVパーク天国

カラフルなパッケージが多いアメリカのストア。円高だったので、どれもが安く感じられたのはラッキーだった Photo: Akikazu YAMASHITAカラフルなパッケージが多いアメリカのストア。円高だったので、どれもが安く感じられたのはラッキーだった Photo: Akikazu YAMASHITA

 アメリカのガソリンスタンドの横には必ずコンビニエンスストアが併設されていて、食べ物、飲み物を調達できる。カラフルなパッケージで、プロテインバーの種類も豊富。日本でいう菓子パンのようなデニッシュは安くて腹持ちもよく、行動食として必ずオーストリッチのパニアバッグに忍ばせていた。クレジットカードが使えるため、たとえ現金を持っていなくても問題ない。

「SouthBay Campground」の看板を見て興奮した!今日の寝床は確保できたという安堵感と140km走った達成感が身体にみなぎる Photo: Akikazu YAMASHITA「SouthBay Campground」の看板を見て興奮した!今日の寝床は確保できたという安堵感と140km走った達成感が身体にみなぎる Photo: Akikazu YAMASHITA

 うだるような暑さの屋外と違い、冷房が効いていて体力が一気に回復する。また、テーブルとイスがあり、その場で買ったパンやサンドイッチなどをゆっくり食べられるスペースもあるから、つい長居をしてしまう。お店の人と会話をしつつ「近くにキャンプ場はありますか?」と尋ねると、僕の背後に座っていた、キューバからの移民らしき白いパナマハットを被った男性を指差して「彼なら知っているんじゃないかな」といった。

 いきなりの東洋人からの声がけが怪しまれないよう、満面の笑みで「こんにちは。キャンプ場を知っていると聞いたのですが、ご存知ですか?」と尋ねると、うつむいて新聞を読んでいた強面が笑顔に変わって、「おお!知ってる、知ってる。あんちゃんは自転車で来たんか。“サウベイ”っていうキャンプ場が10分くらい走ったら右手にあるね」と言った。いい人だった。人を見た目で判断してはいけないなと思った。「Thanks」とお礼を言って、飲みかけの「ダイエットドクターペッパー」の蓋を閉め、自転車に再びまたがった。

CLOSEしたのにも関わらず、駆けつけてくれたジョンさん。本当にありがたい。キャンプ場の使い方を説明して、「また明日!」と気遣ってくれた。しかも自転車乗りなのだそう Photo: Akikazu YAMASHITACLOSEしたのにも関わらず、駆けつけてくれたジョンさん。本当にありがたい。キャンプ場の使い方を説明して、「また明日!」と気遣ってくれた。しかも自転車乗りなのだそう Photo: Akikazu YAMASHITA

 15分ほど進み、町が終わるかなと思ったころに「SouthBay RV Campground」という看板を見つけ、思わず叫んだ!

 「NICE!“サウベイ”は“サウスベイ”のことだったんだ」

 受付はすでに「CLOSE」の板が下がっていたが、そこに書いてある電話番号にダイアルしたら、オーナーのジョンさんが来て、中を案内してくれた。電源もシャワーも、そしてコインランドリーもあることを説明してくれ、キャンピングカーではなく、自転車だからと言って1泊なんと11ドルに。

テントを張って、荷物を全部入れて軽装になったら、近くのスーパーまで買い出しに行く Photo: Akikazu YAMASHITAテントを張って、荷物を全部入れて軽装になったら、近くのスーパーまで買い出しに行く Photo: Akikazu YAMASHITA

 そして「ごゆっくり!」と言ってカートのような小さな乗り物に乗って去っていった。

 青々とした香りの良い芝生の上に、堂々とテントを張れること。目の前に池があって、景色もいいこと。日本と変わらずキャンプツーリングができたことが嬉しくてたまらなかった。


買い出しから戻ると、雲間からオレンジ色の夕焼けが見えた。でも、昼間の青空からすると雲行きが怪しい Photo: Akikazu YAMASHITA買い出しから戻ると、雲間からオレンジ色の夕焼けが見えた。でも、昼間の青空からすると雲行きが怪しい Photo: Akikazu YAMASHITA
山下晃和山下晃和(やました・あきかず)

タイクーンモデルエージェンシー所属。雑誌、広告、WEB、CMなどのモデルをメインに、トラベルライターとしても活動する。「GARRRV」(実業之日本社)などで連載ページを持つ。日本アドベンチャーサイクリストクラブ(JACC)評議員でもあり、東南アジア8カ国、中南米11カ国を自転車で駆けた旅サイクリスト。その旅日記をもとにした著書『自転車ロングツーリング入門』(実業之日本社)がある。趣味は、登山、オートバイ、インドカレーの食べ歩き。ウェブサイトはwww.akikazoo.net

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