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ラスト1周の上りでドラマ全日本U23優勝の小林海にインタビュー トップ争いの3人がレース内容を振返る

by 松尾修作 / Shusaku MATSUO
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 スペインを拠点に活動する小林海(まりの)(Team KOUTA C.PAULINIO)が6月25日、全日本選手権U23ロードレースで優勝を飾った。前日に行われた全日本タイムトライアル選手権U23優勝に続き、圧勝ともいえる勝負強さを発揮した裏では同年代のライバル同士の激しい駆け引きが行われていた。小林、2位で鹿屋体育大学所属の徳田優、4位の小橋勇利(シマノレーシング)にレース後、インタビューした。

2枚のチャンピオンジャージを前に、産経デジタルでインタビューに応じる小林海(Team KOUTA C.PAULINO) Photo: Kenta SAWANO2枚のチャンピオンジャージを前に、産経デジタル社内でインタビューに応じる小林海(Team KOUTA C.PAULINO) Photo: Kenta SAWANO

まさに怪我の功名でした

怪我で予定より早めに帰国した小林は、全日本選手権を向けて集中して面手利輝(チーム ペイネーム)らと調整を行った Photo: Shusaku MATSUO怪我で予定より早めに帰国した小林は、全日本選手権を向けて集中して面手利輝(チーム ペイネーム)らと調整を行った Photo: Shusaku MATSUO

 小林は5月15日、スペイン・マドリッドで行われたレース中にメカトラブルにより約60km/hで転倒。肘と手のひらの骨にひびが入り、この時点では全日本選手権の出場が危ぶまれていた。「怪我をしたことで予定していたナショナルチームでのチェコ遠征は直前にキャンセルし、早めに日本へ帰国しました。今となっては全日本選手権にフォーカスし、集中できた結果が良かったのかもしれません。怪我の功名でした」と振り返る。

――レース中の分岐点はどの場面でしたか

小林:2周目に鹿屋勢がハイペースで上りを牽引していたのですが、集団前方で孫崎大樹(早稲田大学)が転倒しました。僕は避けましたが、後続では中切れがおきました。鹿屋がそのままのペースを維持し続けたので、結果的に脚がある17人だけが先頭に残りました。鹿屋には「このまま行こう」と声をかけました。逃げ集団ではなく、これがメイングループです。序盤にレース展開の大半が決まったといえるでしょう。

――優勝を確信したのはいつでしょうか

終盤にトップ争いを展開した4人 Photo: Shusaku MATSUO終盤にトップ争いを展開した4人 Photo: Shusaku MATSUO

小林:ラスト2周では徳田、小橋、松本祐典(明治大学)と野本空(明治大学)との勝負になりましたが、このメンバーになった時点で勝てると思っていました。決定的だったのは最終周回の上りで、アタックをかけて上りの頂上で単独になったときに勝ちを確信しました。下りと平地で僕より踏める選手はあのメンバーではいません。しかし、スプリントのある小橋がギリギリまで粘り、油断はできませんでした。なので全力で踏み切り、彼を振り切りました。

――個性的なヘルメットのカラーリングについて教えてください

オリジナルペイントヘルメット。テーマは「寿司×ドラゴン」で龍が中トロを握っている。 Photo: Kenta SAWANOオリジナルペイントヘルメット。テーマは「寿司×ドラゴン」で龍が中トロを握っている。 Photo: Kenta SAWANO

小林:「最後の晩餐は絶対に寿司!」と思うほど寿司が大好きなんです(笑) 優勝してから毎晩寿司しか食べていません。それにからめて最高に“ダサい”あだ名をつけようとして「寿司ドラゴン」になりました。ダサかっこいいでしょ? それをモチーフにプロのペインターさんがヘルメットに塗装してくれました。レースは独走で優勝し、ヘルメットをアピールしようと決めていました。

後頭部には金箔を用いたゴールドリーフで「鮨龍」の文字が入る Photo: Shusaku MATSUO後頭部には金箔を用いたゴールドリーフで「鮨龍」の文字が入る Photo: Shusaku MATSUO
ゴールの瞬間はヘルメットをアピールした小林 Photo: Shusaku MATSUOゴールの瞬間はヘルメットをアピールした小林 Photo: Shusaku MATSUO

 小林のヘルメットにはドラゴンが中トロを掴むデザインが大きく中心に描かれ、後頭部には「鮨龍」の文字が金箔を用いたゴールドリーフで施されている。

今後の目標を語る小林は真剣な表情だった Photo: Kenta SAWANO今後の目標を語る小林は真剣な表情だった Photo: Kenta SAWANO

――今後の目標を教えてください

小林:全日本選手権は狙っていましたが、同等か、それ以上に目標としてるのが8、9月に開催されるスペイン国内のステージレースです。ここで結果を出すとプロに直結します。昨年参加したブエルタ・カンタブリアでは優勝したハイメ・ロソン(カハルラル・RGAセグロス)がカハルラルの下部チームから参加し、その後、正式にプロ入りしてツアー・オブ・ユタ(2.1)の優勝や、ツアー・オブ・ターキー(2.HC)などのトップレースで上位に入ってますね。スペインの“アマチュア”は日本でいう“アマチュア”とは同義ではありません。僕は彼と同等に走れていたし、今年はさらにコンディションが良い。本当に面白いレースなので、まずは楽しみたいです!

 小林は7月2日からスペインで行われるレースに参戦するため、レース後すぐに日本を発った。

ライバル3人、率直にレース内容を振り返る

レース後、内容を振り返る左から徳田、小橋、小林 Photo: Shusaku MATSUOレース後、内容振り返る左から徳田、小橋、小林 Photo: Shusaku MATSUO

 全日本選手権U23が終わったその夜、ラスト周回に生き残った5人のうち3人、小林、小橋、徳田が一同に集まり、レースをお互いに振り返った。彼らはナショナルチームで遠征を共にしているが、この日はライバルとして健闘し、純粋な勝負が展開されていた。特にラスト1周の上りでは選手ごとに思惑が交差し、心理的な駆け引きもあったという。

徳田と小林はレース後に健闘を称えあった Photo: Shusaku MATSUO徳田と小林はレース後に健闘を称えあった Photo: Shusaku MATSUO
スプリントに持ち込みたかった小橋 Photo: Shusaku MATSUOスプリントに持ち込みたかった小橋 Photo: Shusaku MATSUO

小橋:僕は上りでマリノから遅れず、スプリントに持ち込めれば優勝できると思っていました。マッチスプリントでは負けません。もちろんマリノは海岸線や軽い上りでアタックをして振り切ろうとするでしょう。しかし、スプリントの展開を望む僕はローテーションで前に出る必要は全くありません。もし上りで遅れた徳田や松本が追いついて4人になってもスプリントで全員に勝てるからです。だけどマリノが強く、こらえることができませんでした。

小林:そう、小橋のやりたいことは全てわかっていた。だからこそ上りで全力でペダルを踏んだ。本当に粘ってくるから「早く千切れろ!」と心の中で叫んでたよ(笑)

決定的なアタックをした瞬間の小林と、真っ向勝負した小橋 Photo: Shusaku MATSUO決定的なアタックをした瞬間の小林と、真っ向勝負した小橋 Photo: Shusaku MATSUO

小橋:写真で見るとひどい顔をしていますね(笑)オールアウトするまでもがきました。

「めっちゃ“”かかった”スプリントだった」と振り返る徳田 Photo: Shusaku MATSUO「めっちゃ“”かかった”スプリントだった」と振り返る徳田 Photo: Shusaku MATSUO

徳田:小橋がマリノから遅れたのは見ていました。僕と松本はマリノに敵わないことはわかっていたので、限界まで上りで追い込まなかった。小橋に追いつくときは、後ろに着かれないよう松本と抜きざまにペースを上げました。思惑通りに小橋を振り切り、松本とのスプリントに持ち込み2位を獲ることができました。渾身のスプリントだったと思います。2位ですが手を上げたくなるほどでした。

小橋:冷静な判断をすれば2位を狙ってもよかったかもしれない。マリノを見送れば後ろの2人には着いていくことができた。ただ、あの場面ではどうしても勝ちたかったので追い込みました。本当に悔しいですが、後悔はありません。

集団内での転機を逃さず、17人のグループを形成した徳田 Photo: Shusaku MATSUO集団内での転機を逃さず、17人のグループを形成した徳田 Photo: Shusaku MATSUO
3位の松本祐典(明治大学)とレース後に握手を交わす小林 Photo: Shusaku MATSUO3位の松本祐典(明治大学)とレース後に握手を交わす小林 Photo: Shusaku MATSUO

小林:きょうは脚のある選手が残るべくして残り、力を出し切った“ちゃんとした”レースができた。優勝できたこともあるけど、レース中は本当に楽しんでいた。一生の思い出に残ると思う。

◇         ◇

 話は深夜まで尽きなかった。3人は口を揃えて全日本選手権を「良いレースだった」と語った。「男と男の勝負だったな」とも盛り上がり、表彰式に臨んだメンバーの晴れ晴れとした表情はそれを体現しているように筆者は思えた。全日本後はそれぞれの拠点に戻るが、シーズン後半はU23ナショナルチームの活動で再びチームメイトとして顔を合わせるという。

表彰式では全員が晴れやかな表情だった Photo: Shusaku MATSUO表彰式では全員が晴れやかな表情だった Photo: Shusaku MATSUO

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