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“自転車革命都市”ロンドン便り<42>チームで楽しむ自転車“旅”イベント 「ツアー・オブ・ウェセックス」参加リポート

by 青木陽子 / Yoko AOKI
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 日本以外の国で走るのってどんな感じ? 世界のみなさんは自転車をどんな風に楽しんでいるの? をリアルにお伝えすることをサブテーマとしているこの連載、今回はわたしが先週末走ってきた、英国では有名な3日連続ライドの様子をレポートしたいと思います。

4人でチームを組み「ツアー・オブ・ウェセックス(ToW)」に参加。全員がお互いのために動きつつ、それぞれ楽しむことも忘れないすばらしいチームでした! Photo: Yoko Aoki4人でチームを組み「ツアー・オブ・ウェセックス(ToW)」に参加。全員がお互いのために動きつつ、それぞれ楽しむことも忘れないすばらしいチームでした! Photo: Yoko Aoki

マルチステージのアマチュアイベント

 このイベント「ツアー・オブ・ウェセックス(以降ToW)」は、「ツアー」という名前が示すように、3日間のマルチステージのスポルティーフ(センチュリー、グランフォンドなどアマチュア向けのタイムを競わないライドイベント)。長いコースは3日間で合計530km、わたしが走った短い方は360kmほどを走ります。参加者は今年も例年と同じ規模で、およそ1200人でした。

 今回一緒に参加したのはRaphaのアンバサダー仲間でドイツ人のルース、その友人でフランス人のキャロルと、救命救急専門医のイギリス人、クレア。英・仏・独・日と出身は違っても女子4人組となれば国境はなし。キャッキャウフフな女子会ライドになりました。

今回ToWに一緒に参加したすばらしい仲間たち。左からドイツ人のルースはRaphaアンバサダーの仲間で医療倫理の研究者、フランス人のキャロルはナビゲーションソフトの開発者。英人クレアは救命救急専門医で、ナミビアからケニアまで自転車で縦走したりもするアドベンチャー好き Photo: Yoko Aoki今回ToWに一緒に参加したすばらしい仲間たち。左からドイツ人のルースはRaphaアンバサダーの仲間で医療倫理の研究者、フランス人のキャロルはナビゲーションソフトの開発者。英人クレアは救命救急専門医で、ナミビアからケニアまで自転車で縦走したりもするアドベンチャー好き Photo: Yoko Aoki

 毎年ToWの舞台となっているのは、ロンドンから南西に200kmほどの美しきド田舎。世界遺産のストーンヘンジなどスピリチュアルなスポットの多いエリアでもあります。鉄道があまり走っていなく、連泊で荷物も多いので仕方なくレンタカーを選択。1.6Lマニュアルのプジョー2008を丸5日間ふたりで借りてざっと2万5000円也。

 宿は、スタート地点から10kmほどのキャンプ場に併設されたシンプルなキャビンをairbnbで見つけて4人でシェア。1晩を除いて毎日自炊しました。1泊ひとり3000円強で、4泊。費用について言うと、イベント参加料はイギリスのライドにしてはちょっとお高めで、3日間で1万9000円でした。補給食あり、タイム計測あり、シマノによるメカニックサポートあり、回収車や救急バイクもありと、その分サービスは厚めですね。

新しい景色を求めて毎日違う方角へ

チェダーチーズのふるさと、チェダー峡谷。石灰岩質の絶壁に登って草を食べている野生のヤギたちが歩くたびにポロポロと小石がおちてくる。ここの最大斜度は17%。なかなか終わらないしつこい上りでした Photo: Yoko Aokiチェダーチーズのふるさと、チェダー峡谷。石灰岩質の絶壁に登って草を食べている野生のヤギたちが歩くたびにポロポロと小石がおちてくる。ここの最大斜度は17%。なかなか終わらないしつこい上りでした Photo: Yoko Aoki

 ToWは英国のサイクリストの間では「ハード&ビューティフル」として有名なイベント。3日連続であることと、最大斜度20%前後の坂がゴロゴロあること、そして牛や羊が草をはむ緑の丘陵が延々と続くダイナミックな風景がお楽しみポイントです。

 初日の難所は有名なチェダーチーズを生み出したチェダー峡谷。石灰岩質の断崖に自然にできた洞窟が、チーズを熟成させるのにぴったりだったらしい。峡谷の入り口にある、チーズの試食販売所なんかがいかにもありそうなチェダー村で脚を止めたいところだったけれど、ほかの3人は基本的に体育会気質。峡谷の頂きを見据えて元気に踏み始めていたのでさくっと断念しました。

 2日目はスタートから方角が変わり、南東の海岸線へ。3日通してすばらしかった景色だけれど、とくにこのルートは美しかった。前日からの疲れが確かにあって、脚の筋肉が燃え上がり始めるポイントがだいぶ下がっていたけれど、植物の緑と空の青しか見えないような景色がそれを鎮めてくれるライドでした。

4人でシェアしたバンガローは、ほかのイベント参加者たちも使っていたキャンプ場に併設されていたもの。放し飼いの孔雀がいて、パートナーがいなくて寂しいのか、わたしたちの部屋をしばしば覗いていた Phto: Yoko Aoki4人でシェアしたバンガローは、ほかのイベント参加者たちも使っていたキャンプ場に併設されていたもの。放し飼いの孔雀がいて、パートナーがいなくて寂しいのか、わたしたちの部屋をしばしば覗いていた Phto: Yoko Aoki

 毎日朝8時出発、午後2時頃ライドを終えて宿に戻り、順番にシャワーを浴びつつ、タンパク質補給にゆで卵を作ってチェダーチーズやクラッカー、フルーツなどと食べます。おしゃべりしながらもストレッチをしたり、フォームローラーを使って脚のマッサージをしたり、放し飼いの孔雀と遊んだり。ふだんならライド後はビールやワインを開けてダラダラしてしまうけれど、今回は翌朝までにできるだけ回復していないといけないので、なかなかストイックでした。アルコールは最終日までゼロ。夜も10時前には就寝。

新しい挑戦はいつも楽しい

 最終日はまた方角が変わり、西の丘陵地帯へ。3日目の脚は少しきしむ感じは出てきていたけれど、きちんとケアしたからか、思っていたよりしっかり回る印象でした。

夏フェスの元祖、グラストンベリー・フェスティバルが開かれるグラストンベリーを抜ける気持ちのいいコース。白いウエアの人はやはりロンドンから参加の女性。とくに長いライドではほかのライダーと協力しあって走ることも多い Photo: Yoko Aoki夏フェスの元祖、グラストンベリー・フェスティバルが開かれるグラストンベリーを抜ける気持ちのいいコース。白いウエアの人はやはりロンドンから参加の女性。とくに長いライドではほかのライダーと協力しあって走ることも多い Photo: Yoko Aoki
3日間かなり景色の違うコース設定だったのがとても楽しかった。今日はどんな風景を見せてもらえるんだろう?胸を膨らませながらスタート Photo: Yoko Aoki3日間かなり景色の違うコース設定だったのがとても楽しかった。今日はどんな風景を見せてもらえるんだろう?胸を膨らませながらスタート Photo: Yoko Aoki

 宿からの往復を含めればセンチュリー相当のライドを2日続けた後でもなんとか走れる自分を発見するのは悪くない気分。8年前にホノルルセンチュリーライドで初めて160kmを走って感動した自分を思い出し、年をとりつつも上を目指せる自転車の楽しさを想いながら走りました。

 イギリスのスポルティーフは日本にくらべると50代以降、とくに60代の参加者が多いようです。ふた回りくらい若い人たちに混ざって平坦での巡航速度40km/hくらいの強度で3日間走り切る60代も、多くはないけれど珍しくもないと言えるでしょう。

 女性は英国でもまだ少ないですが、今回は1割くらいに達していたのではないかと思います。

自転車は出会いを生む

 全員ケガもメカトラブルもはぐれたりすることもなく3つのライドを終えることができたのを祝して、最終日のディナーは水でなくワインとシャンパンで乾杯。

お待ちかねの最終日のディナーと乾杯! 献立はキヌアとレンティル、具だくさんサラダにオーガニックのサーモンソテー・シャロットソース Photo: Yoko Aokiお待ちかねの最終日のディナーと乾杯! 献立はキヌアとレンティル、具だくさんサラダにオーガニックのサーモンソテー・シャロットソース Photo: Yoko Aoki

 ライド中はそのとき強い人が遅い人をケアし、お互い良いコンディションで走れるように気づかいつつ自分も無理をしない。料理や掃除、クルマの運転などライド以外の部分でも同じように自立した人たちがお互いのために自発的に動くことができるチームで、きついライドの日々ながら心から楽しむことができたと思います。

 自転車は人と一緒にチームで楽しむスポーツ、それもいろいろな出会いまで生んでくれる、じつに深みのあるいいスポーツだなぁと思う次第です。自転車バンザイ!

青木陽子青木陽子(あおき・ようこ)

ロンドン在住フリー編集者・ジャーナリスト。自動車専門誌「NAVI」、女性ファッション誌などを経て独立起業、日本の女性サイトの草分けである「cafeglobe.com」を創設し、編集長をつとめた。拠点とするロンドンで、「運転好きだけれど気候変動が心配」という動機から1999年に自転車通勤以来のスポーツ自転車をスタート。現在11台の自転車を所有する。ブログ「yokoaoki.com」を更新中。

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