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つれづれイタリア~ノ<71>イタリア国内外で引っ張りだこ 「ジロ・ディタリア」の誘致バトル

by マルコ・ファヴァロ / Marco FAVARO
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 5月6日に「第99回 ジロ・ディタリア」が始まりました。オランダから走り出したグルッポ(集団)が本国に戻り、戦いは南イタリアから少しずつ北上しています。ということで、今回も引き続きジロにまつわる話をしたいと思います。今回のテーマは「金銭的な事情」について。100年以上続く大会の“人気の秘密を探る旅パート2”をお送りします。

ジロ・ディタリア2016第2ステージ(オランダ・アーネム) Photo: Yuzuru SUNADAジロ・ディタリア2016第2ステージ(オランダ・アーネム) Photo: Yuzuru SUNADA

ジロの誘致活動費は億円単位

母国オランダで第1ステージの個人TTを制したトム・デュムラン(チーム ジャイアント・アルペシン) Photo: Yuzuru SUNADA母国オランダで第1ステージの個人TTを制したトム・デュムラン(チーム ジャイアント・アルペシン) Photo: Yuzuru SUNADA

 ジロは5月6日、オランダ・アペルドールンの7kmの個人タイムトライアルで開幕しました。金曜日だったにもかかわらず、観客が沿道を埋め尽くしました。オランダは言わずと知れた自転車王国で、ジロへの関心の高さがうかがえます。くわえて、第1ステージはオランダ人選手のトム・デュムラン(チーム ジャイアント・アルペシン)がステージ優勝を飾り、チャンピオンの証であるマリアローザを獲得したため、国中が熱気に包まれました。

 しかし、ジロ・ディタリアはイタリアを一周するレースなのに、なぜオランダからスタートしたのでしょうか。実は「ツール・ド・フランス」を始めとするグランツールが本国以外の国からスタートするのは、珍しいことではありません。ジロに関していえば、次のようになっています。

イタリア国外でスタート地点となった国々

1965 サンマリーノ共和国
1966 モナコ公国
1973 ベルギー
1974 ヴァチカン市国
1996 ギリシャ
1998 フランス
2002 オランダ
2006 ベルギー
2010 オランダ
2012 デンマーク
2014 英国(北アイルランド)
2016 オランダ

 しかし、200人以上の選手団と1300人を超えるスタッフと関係者が一斉に移動する大会だけに、運営費だけでかなりのコストがかかるはずです。主催のRCSスポルトが主にスポンサー料、テレビ放映権などで膨大な費用を賄っていますが、実はこれ以外に「大会誘致契約金」という重要な収入源があるのです。そこでジロ・ディタリアを誘致するために地域が負担するコストを調べてみました。

「ジロ・ディタリア」大会誘致契約金

スタート:4万ユーロ(500万円)
ゴール:12万ユーロ(1500万円)
グランデパール:15万ユーロ(1875万円)
最終ステージのゴール:50~60万ユーロ(6250~7500万円)
(※RCSスポルトのデータより引用)

 つまりジロ・ディタリアの各ステージのスタートとゴールになるには多額の費用がかかります。それを負担するのは地元の自治体、主に州です。RCSスポルトの発表によると、2012年デンマークで行われた第3ステージの誘致活動と関連事業のために使われた税金は、なんと20億ユーロ(250億円)。驚きの金額です。

季節外れの観光客を連れてくるジロ

 ジロ・ディタリアを始め、大型スポーツイベントを誘致することは自治体にとって大きな負担である一方、実は多くのメリットをもたらします。ジロが開催される5月は、ヨーロッパでは観光のオフシーズンで、多くのホテルがまだ閉店しています。しかし、ジロの関係者だけで1500人以上の宿泊先が必要ですし、さらにファンも合わせると、各ステージのスタートとゴールの周辺には常に4~5万人が動くことになります。

 これは地元にとって、願ってもないビジネスチャンスです。宇都宮で行われるジャパンカップの例を考えてみるとわかりますが、大会が開催される2日間はホテルの予約がほとんど取れませんし、周辺のレストランや居酒屋も観客で溢れかえります。

ジロ・ディタリア2015。ラ・スペツィア~アベトーネまで町々を走り抜けるプロトン Photo: Yuzuru SUNADAジロ・ディタリア2015。ラ・スペツィア~アベトーネまで町々を走り抜けるプロトン Photo: Yuzuru SUNADA

 イタリアの消費税は22%です。仮の話ですが、5万人で20ユーロ(2500円)の買い物をしたら、消費税だけで22万ユーロ(275万円)の収入が見込まれます。さらに各メディアの取材などによる、地域の宣伝効果も得られます。自治体も積極的に地元企業やスポンサーから協賛金を募集することで財政負担を減らす努力をしています。

ジロが通ると道路がよくなる

 イタリアを自転車で走ったことがある方はわかると思いますが、イタリアの道路はかなり荒れています。アスファルトはボロボロであちらこちらで深い穴が空いています。パンクや落車の原因になるので、レースの安全な運営のためRCSスポルトは各自治体に道路の補修舗装を求めます。

ジロを機に道が舗装されるため、コース沿いの住民は大歓迎 ©Città metropolitana di Torino 2015ジロを機に道が舗装されるため、コース沿いの住民は大歓迎 ©Città metropolitana di Torino 2015

 ジロを機に道路が修復されることが多いので、コース沿いに住んでいる住民たちにとってはジロは大歓迎なのです。

 誘致するデメリットももちろんあります。レース当日、地元の住民たちは数時間にわたる道路封鎖を我慢しなくてはいけません。ですが、ジロがもたらす経済効果の方が大きいので文句を言う人はほとんどいません。

 さて、次回はまた違った観点からジロの魅力を伝えたいと思います。しばらくの間、このコラムがピンク色に染まります。

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

東京都在住のサイクリスト。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会や一般社団法人国際自転車交流協会の理事を務め、サイクルウエアブランド「カペルミュール」のモデルや、欧州プロチームの来日時は通訳も行う。日本国内でのサイクリングイベントも企画している。ウェブサイト「チクリスタインジャッポーネ

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