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ビワセカップ2016ベトナムのステージレースで金子広美が総合優勝 日本ナショナルチームが一体になって活躍

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 ベトナムで3月8日から16日まで、9ステージで行われた女子ロードレース「BIWASE CUP(ビワセカップ)2016」に日本ナショナルチームが出場し、金子広美が個人総合優勝を果たしたほか、チームでステージ3勝、団体総合優勝の好成績を収めた。各国ナショナルチームが6チーム、地元ベトナムのクラブチーム8チームが参加した、UCI(国際自転車競技連合)公認レースではないがレベルの高い国際レースだ。日本チームはいかに戦い、勝利をつかんだのか。監督としてチームを率いた柿木孝之・JCF(日本自転車競技連盟)強化コーチの手記で熱戦の様子を振り返る。

金子広美が第2ステージで獲得した総合リーダーの座を最終日まで守り抜き、個人総合優勝に輝いた Photo: JCF金子広美が第2ステージで獲得した総合リーダーの座を最終日まで守り抜き、個人総合優勝に輝いた Photo: JCF

 ※この記事は、柿木コーチがJCFのウェブサイトに連日、寄稿したレポートを、JCFの許可を得て編集しました。

◇      ◇

第1ステージ:梶原でスプリント勝負

日本ナショナルチームの選手たち。(左から)古山稀絵、梶原悠未、吉川美穂、坂口聖香、金子広美 Photo: JCF日本ナショナルチームの選手たち。(左から)古山稀絵、梶原悠未、吉川美穂、坂口聖香、金子広美 Photo: JCF

 ビワセカップは3つの上りのステージと6つの平坦ステージで争われる。日本からは金子広美、梶原悠未、吉川美穂、坂口聖香、古山稀絵の5選手が出走した。

 第1ステージは22kmの周回を3周回する66kmの平坦コース。スタートから細かな逃げは起こるが、メーン集団は大きく分かれない。世界選手権のトラックから直接合流した梶原が前で動く。ラスト周回で4、5人の逃げが30秒ほどのタイム差をつけるが、金子がチームをまとめ古山と坂口とともに牽引して、そこにカザフスタンも加わり集団を一つに戻した。

 ゴール前はチームで連携して梶原のスプリントに挑んだが、吉川が斜行した選手を落車寸前で回避したため、もがき始めが遅れてしまい、その後ろにいた梶原もゴールまでもがききれず、4位梶原、5位吉川となった。

第2ステージ:金子が総合リーダーに

 前半から中盤までは緩やかなアップダウンを進み、後半に10kmの6%ほどの上りが続き、そこからゴールまで12kmのアップダウンをこなす108.5kmのコース。日本チームは金子でステージ優勝を狙った。

 気温が35℃ほどと非常に厳しい暑さの中で、上り口までに逃げた全選手を吸収したあと、ここまでチームに守られて走った金子が上りでアタックして独走を開始した。

ステージ優勝と総合リーダー奪取に向けて独走する金子広美 Photo: JCFステージ優勝と総合リーダー奪取に向けて独走する金子広美 Photo: JCF

 上りの前半区間ではなかなかタイム差がつかなかったが、金子は後半区間もペースを落とさず、後続との差は徐々に開いていく。頂上を越えてからのアップダウン区間では、金子を追う6人のグループに坂口が入り、個人総合リーダーを封じ込めた。金子はそのまま差を広げてステージ優勝。個人総合、山岳賞でもリーダーとなった。これまでどの遠征でもチームのために身を粉にして動いてきた金子が、この日はエースとして自身の力を発揮した。

第3ステージ:吉川がステージ優勝

 この日のコースは60kmのアップダウン区間を過ぎてから2kmの上りの後、平坦基調が40km続く。ゴール手前に勾配6%ほどの7kmの上り区間があり、そこからゴールまでの2.5kmは下り基調だ。

 スタートと同時にアタック合戦になるが、日本チームは金子を守るため、個人総合上位陣のアタックを選別しながらチーム全体で対応。激しい攻防の末に6人の逃げが決まり、そこに吉川が入った。個人総合では3分差以内にいる選手はおらず、都合のよい逃げを行かせることができた。

逃げ集団に吉川が入りステージ優勝 Photo: JCF逃げ集団に吉川が入りステージ優勝 Photo: JCF
終盤の上りで総合リーダージャージの金子がアタック終盤の上りで総合リーダージャージの金子がアタック

 追走の4人が合流して逃げは10人となったが、最後の上り口までに集団を梶原、古山が集団を引いて差を2分半にまで縮めて、金子と坂口につないだ。金子は上りがきつくなったところで集団から抜け出し、これには山岳賞2位の選手とタイの選手のみが続いた。

 金子らはバラバラになった先頭集団全員を捕え、吉川とも合流してゴールを目指す。山頂手前せタイ選手のアタックに吉川が反応、そのまま2人でゴールまで逃げ、吉川がスプリントを制してステージ優勝を果たした。金子は4位でゴールし、個人総合を守った。

第3ステージの表彰式。ステージ優勝の吉川が壇上に Photo: JCF第3ステージの表彰式。ステージ優勝の吉川が壇上に Photo: JCF

第4ステージ:集団スプリントで3、4位

 ベトナム中南部の避暑地、ダラットの湖のまわりを周回する50kmのコース。日本チームとしては、総合上位陣の逃げは許さず金子の個人総合首位を守り、前日のステージの暑さで激しく消耗した選手にはなるべく休んでもらい、ゴールは吉川と坂口で連携してスプリントをすることとした。

第4ステージのスタート地点。総合リーダーの金子が最前列に立つ Photo: JCF第4ステージのスタート地点。総合リーダーの金子が最前列に立つ Photo: JCF

 前半は激しいアタック合戦になり、総合上位陣のみを逃さないように日本選手全員で対応する。30kmあたりから個人総合で6分ほど遅れている選手ともう1人の選手の逃げが決まり、日本チームもこれを容認。そのままこの2人が協調してゴールまで逃げ切り、大会スポンサーチームBIWASEのCao Thi Cam Le選手が優勝した。集団スプリントでは吉川、坂口がゴール前でしっかり連携して吉川が3位、坂口が4位に入り、金子も個人総合リーダーを守った。

第5ステージ:吉川がわずかに及ばず2位

 南部のリゾート地、ニャチャンの海岸沿いを2周回する34kmの短い距離のレース。日本チームは金子の個人総合を守ること、レース後半をコントロールして集団スプリントに持ち込み、吉川、坂口、梶原の連携によるスプリント勝負でステージ優勝を狙った。

 距離が短いこともあり、前半から激しいアタック合戦となったが、日本チーム全員で対応して集団を一つにまとめる。連日、他チームの協力が得られない中で、ジュニアからエリートに上がったばかりの梶原、古山がこのステージでも非常に素晴らしい走りをみせた。

スプリントステージとなった第5ステージ Photo: JCFスプリントステージとなった第5ステージ Photo: JCF

 ラストは吉川と坂口、梶原とバラバラになった形でのスプリントに入り、ベトナムのスプリンターNguyen Thi Thatと吉川の争いとなったが、わずかに及ばすステージ2位となった。坂口は5位、坂口の番手につけていた梶原はホイールが坂口と接触してしまいスプリントできず8位だった。この日も金子が個人総合リーダーをキープした。

第6ステージ:金子の総合リーダーを堅守

 レース中盤に上り区間とアップダウン区間が20kmほど続き、その後ゴールまで平坦が40km続く103.5kmのコース。レースリーダーを擁する日本チームは上り区間、アップダウン区間でいかに人数を減らさずこなし、残りの平坦をチームでまとまって他の国のアタックを防ぐかが問われた。

総合リーダーの金子を守りながらレースが進む Photo: JCF総合リーダーの金子を守りながらレースが進む Photo: JCF

 スタートからアタックはあるが複数人の逃げは許さず、上り区間まで集団は一つのまま進む。上りはじめに15%の勾配が1kmほど続く区間で、金子と坂口と総合上位陣10人ほどを含む先頭集団ができ、30秒ほど遅れた後続グループに吉川、梶原、古山が残った。人数をそろえるタイが先頭集団を引くが、後続グループのカザフスタンの引きにより集団は一つとなった。

 山岳ポイント後も上りが続き、14人の先頭グループでラスト40kmの平坦に入る。先頭グループには金子、坂口、梶原が入り、タイも3人を残す。個人総合2位のベトナムの選手が遅れたため、総合2位に上がるチャンスがきたタイが先頭を引く形で進む。4分ほどの十分なタイム差をつけた後、先頭グループ内では区間優勝を狙うチームのアタック合戦となり、タイと地元ベトナムのチームの逃げを許してしまう。そこからは日本チームがコントロールして、金子の個人総合リーダーを守った。

第7ステージ:梶原がステージ優勝

 この日は110kmの平坦コース。スタート直後はアタックが続くが、逃げる選手を選別するため日本チームは全員た集団前方で展開した。個人総合で20分以上遅れている選手2人の逃げが一度は決まったが、タイが容認せず、集団はまた一つになった。

 30km過ぎで吉川がパンク。集団に戻る最中に再びパンクし、吉川が戻るまで待った集団は、個人総合上位のタイの選手を含む新たな逃げに、2分以上の差を付けられてしまった。

 8人の逃げに日本チームは唯一梶原が入った。逃げグループで個人総合上位の選手は2人のみで、梶原が先頭集団にいることでステージ優勝を狙う選手たちの足並みを狂わせることができる。またエリート1年目の梶原を長いステージレースの中で休ませ、さらにチームとしてこのステージも狙えるため、梶原はメーン集団に戻さなかった。

日本チームが中心となりコントロールすうるメーン集団 Photo: JCF日本チームが中心となりコントロールすうるメーン集団 Photo: JCF

 メーン集団は吉川、坂口、古山が牽引し続け、1分30秒から2分のタイム差をキープ。ラスト10kmを切ってからは先頭集団も引ける選手が少なくなり、日本がコントロールする集団が一気に近づいた。先頭集団がスプリントになれば梶原が勝つ可能性が高いため、メーン集団は梶原に追いつかないように、なおかつ先頭集団とタイム差が広がり過ぎないようにコントロール。最後は先頭集団がスプリント勝負となり、梶原が圧勝した。

 メーン集団は22秒差で入り、金子の個人総合リーダーを守った。タイの攻撃を受けながらも、前半からゴール近くまで吉川、坂口、古山がメーン集団をまとめきった。

第8ステージ:古山が落車で指を骨折

 平坦基調の120kmのコース。暑さの厳しい1日になった。

 前日に脚を溜めたタイがチーム全体で日本に攻撃をかけてくるが、日本チーム全員で冷静に対応してメーン集団を一つにまとめる。後半はステージ狙いのチームにより集団が活性化。スピードが上がるが、日本チームは集団の前方で個人総合争いにかかわる選手だけをチェックすればよいので、チームとしては楽な展開で進んだ。

 80km過ぎたあたりで金子がチェーントラブルで遅れる。今大会の特別ルールでバイクトラブルの場合はバイクで集団まで戻すとあったが、個人総合リーダーの金子には許されず、自力で追って集団に復帰。そのあと古山が落車、吉川がパンクとトラブルが続き、その間もタイが攻撃をかけてきており、日本チームにとっては厳しい展開となった。

 古山、吉川も集団まではバイクが戻してくれず、日本チームはそのあとは3人で戦い、なんとか集団ゴールに持ち込むことで金子の個人総合を守った。古山はこの日の落車で指を骨折したため、最終ステージは4人で金子の個人総合を守る。

第9ステージ:金子が総合優勝

 最終日は120kmの平坦コースで、ホーチミンでゴールを迎える。前半は個人総合に関係のないアタックが決まり、日本チームは容認。そのあとも数人ずつパラパラとアタックが続き、日本チームと、今大会ステージ4勝しているスプリンターのNguyen Thi Thatを擁するベトナムチームがコントロールを始めた。

 先頭グループを形成している選手たちは個人総合に影響がないものの、人数は10人と多い。日本チームは団体総合でも1位だが、前日まで2位のタイとのタイム差は2分25秒で、タイの選手1人を含む先頭集団にこれ以上のタイム差を広げられたくない。40kmあたりで先頭集団との差は3分以上。吉川、坂口、金子を中心に、べトナムチームとも協力して集団をコントロールした。

 90kmあたりで差は2分半ほどになったが、メーン集団は踏切に引っかかってストップ。タイム差がまた広がる中、メーン集団は日本チームを中心にペースを維持し、少しずつタイム差を縮めていく。メーン集団は先頭集団に追いつきはしなかったが、2分弱の差でフィニッシュし、金子の個人総合リーダーを7日間守りぬいた。団体総合も、最後に差を詰められたものの33秒差で守り切った。

日本チームは団体総合でも優勝 Photo: JCF日本チームは団体総合でも優勝 Photo: JCF

 日本ナショナルチームは今回、第3ステージからは個人総合リーダーを守る立場となり、協力関係がとれるチームが目まぐるしく変わるレース状況の中で、チームとして不利にならないように逃げの選別を確実に行い、その後も集団コントロールができた。

 ただ力があるだけではなく、チームで動くべき時は動き、ほかのチームに任せるときは任せ、チームの意思疎通がしっかり取れて、チームのために全力を尽くす素晴らしい選手たちであった。ステージ3勝、個人総合優勝、団体優勝という結果以上に、選手自身がレースを考えて走り、集団を頭と力でコントロールして、チームの全員が一つになって動くことができたことが、選手たちにとって大きな自信になったであろう。

BIWASE CUP 2016 個人総合成績
1 金子広美 21時間57分32秒
2 Phetdarin Somrat(タイ) +2分50秒
3 Nguyen Thi That(ベトナム) +2分56秒
6 坂口聖香 +3分42秒
11 梶原悠未 +8分3秒
17 吉川美穂 +10分32秒

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