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つれづれイタリア~ノ<63>自転車競技を支えるイタリアのスポンサーたち 久々の大型企業参入にファンは歓喜

by マルコ・ファヴァロ / Marco FAVARO
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 新年にふさわしい記事をあれこれと考えましたが、面白い話題がたくさんある中で、イタリアから飛び込んできたビッグニュースをご紹介します。イタリアの大手コーヒーブランド「セガフレード・ザネッティ」がトレック ファクトリーレーシングのセカンドスポンサーになったのです。そこで今回は、自転車競技を支えるスポンサーについてお話しします。スポンサーを知ることで、自転車競技チームへの見方が変わります。

2015年12月に行われた「トレック・セガフレード」の発表記者会見 Photo: Trek-Segafredo2015年12月に行われた「トレック・セガフレード」の発表記者会見 Photo: Trek-Segafredo

期待が高まる有力スポンサーの復活

 2015年12月16日にイタリア北部トレヴィーゾ市で、ザネッティ・ビバレージグループのブランドの一つ、コーヒーチェーンのセガフレード・ザネッティが、UCI(国際自転車競技連合)ワールドチームであるトレック ファクトリーレーシングのセカンドスポンサーに就くと発表しました。

 トレヴィーゾはベネトン、ピナレロ、シディなどで有名な街で、歴史的に自転車競技に対する関心度は高い地域です。また、久しぶりにイタリア企業の大型スポンサーが登場したことで、イタリア中のロードレースファンたちが歓喜に沸きました。実際、イタリア経済が好転しているため、他のイタリア企業のスポンサー復帰も期待されています。

 報道によると、ザネッティ・ビバレージグループの事業は90%がイタリア国外の市場に展開しており、2015年度の総売り上げ高は13億ユーロ(約1664億円)以上。自転車競技への参入は、このブランドの世界進出を加速させることが目的で、3年契約を結んだそうです。

絶大な宣伝力をもつ自転車競技

 イタリア、スペイン、スイス、フランス、ベルギーなどでは、テレビ番組で自転車競技の特別枠を設けています。とくにイタリアでは国内外の主な大会はほとんど放映されます。ジロ・デ・イタリアに限らず、重要な大会の場合は4時間以上の生放送は当たり前です。

 東京マラソンや箱根駅伝を想像してもらうとわかりやすいと思います。スポンサー名がチーム名に含まれることがほとんどなので、放送中にスポンサー名がずっと読み上げられます。視聴者がまるで洗脳を受けるかのように、脳裏にスポンサー名が刷り込まれていく仕組みです。結果的に自転車競技チームのスポンサーになることで大きな宣伝効果が得られます。私もこのスポンサーの罠に見事にハマった一人です。

 さて、セガフレード以外で自転車競技のスポンサーになっているイタリア企業・ブランドを紹介しましょう。

■LAMPRE(ランプレ)

ランプレ・メリダには新城幸也選手が今季から所属している Photo: Seishiro TAKIランプレ・メリダには新城幸也が今季から所属している Photo: Seishiro TAKI

 日本でもおなじみになったランプレ・メリダの「ランプレ」。社名はLamiere Prerivestite(ラミエーレ・プレリヴェスティーテ)の略で、ラミネート加工された鉄鋼板を製造する会社です。1990年から自転車競技を支えるもっとも歴史あるスポンサーの一つです。

■RIO MARE(リオ・マーレ)

 日本であまりみかけない名前ですが、ジロ・デ・イタリアのメーンスポンサーを務めており、イタリア国内で認知度が高いツナ缶メーカーです。地中海で採れる同社のツナは、サラダやパスタ、ピザでツナを使用するイタリア人に人気が高く、人々の暮らしになじんでいる企業でもあります。高タンパクかつ低脂肪で、自転車競技者の間でも好まれています。

■ESTATHE(エスタテー)

 ジロ・デ・イタリアによく登場する謎の看板。たまに「エステート」と読む人がいますが、発音は「エスタテー」です。

ジロ・デ・イタリアの最終ステージでは、コースのあちこちに「エスタテー」の看板が見られた =2015年5月31日 Photo: Yuzuru SUNADAジロ・デ・イタリアの最終ステージでは、コースのあちこちに「エスタテー」の看板が見られた =2015年5月31日 Photo: Yuzuru SUNADA

 パンに塗るチョコレート、ヌテッラを生んだ食品メーカー、フェッレーロ社のブランドです。夏(エスターテ)と紅茶(テー)を合成させた言葉で、イタリアではアイスティーの定番商品。かつて、スポーツドリンクのなかった時代、アイスティーはロードレーサーが好むドリンクでした。現在も愛飲されています。

■FIUGGI(フィウッジ)

 スパークリングウォーターといえばペリエが有名ですが、イタリアではサン・ペッレグリーノとフィウッジ。フィウッジは温泉で有名な街で、地下から湧き出てくるミネラルウォーターはルネッサンスの巨匠、ミケランジェロも治療のために飲んでいました。フィウッジは現在、ジロ・デ・イタリアだけでなくUCIプロコンチネンタルチームのスポンサーも務めています。

■BANCA MEDIOLANUM(バンカ・メディオラヌム)

 最近目立つようになったこのスポンサー。ジロ・デ・イタリアの「マリアアッズーラ」(山岳賞)のスポンサーです。元首相のシルヴィオ・ベルルスコーニが君臨しているフィニンヴェスト・グループの傘下にある銀行です。

■VINI FANTINI(ヴィーニ・ファンティーニ)

NIPPO・ヴィーニファンティーニの2016年シーズンの選手たち Photo: NIPPO Vini FantiniNIPPO・ヴィーニファンティーニの2016年シーズンの選手たち Photo: NIPPO Vini Fantini

 そして、皆さんもよくご存じ、イタリアと日本の二つの心を持つUCIプロコンチネンタルチーム、NIPPO・ヴィーニファンティーニです。ヴィーニ・ファンティーニは、ファルネーゼ・ヴィーニ社が生み出した、イタリアでもっとも有名なワインブランドの一つです。自転車競技を通して世界的に人気が高まっています。

広告でもキーマンだったパンターニ

 少し過去に戻りましょう。あまりにも有名なスポンサーが多いので、1990年代と2000年代に絞りたいと思います。

 まず、1990年代に一世を風靡したスポンサーからご紹介します。

■MERCATONE UNO(メルカトーネ・ウーノ)

映画でも話題になったマルコ・パンターニ(ジロ・デ・イタリア2003)Photo: Yuzuru SUNADA映画でも話題になったマルコ・パンターニ(ジロ・デ・イタリア2003)Photo: Yuzuru SUNADA

 イタリアの大手スーパーマーケットチェーン。メーンスポンサーを務めていた自転車チームで故マルコ・パンターニ(イタリア)が大活躍し、一気に知名度がアップ。イタリア北部のみで展開していた店舗がイタリア全土に広がりました。

■MAPEI(マペイ)

 もともと建設資材を製造・販売するマペイ社は、1996年に「マペイ・スポーツ・センター」を設立。本格的に自転車をスポーツ科学の研究に結び付ける初めての民間スポーツセンターとして、多くのヒーローを誕生させました。

 こちらもメルカトーネ・ウーノと同様、マルコ・パンターニのおかげで不動の人気を獲得した企業です。

ロバート・ハンター(マペイ・クイックステップ当時) 。表彰台は最大の宣伝シーン(ツール・ド・ランカウイ2002) Photo: Yuzuru SUNADAロバート・ハンター(マペイ・クイックステップ当時)。表彰台は最大の宣伝シーン(ツール・ド・ランカウイ2002) Photo: Yuzuru SUNADA

 現在、マペイ・スポーツ・センターはトレック・セガフレードと契約を結んでいます。

 スポーツと建設業のマリアージュはイタリアではよくあるケースで、ランプレ、マペイ、ファッサ・ボルトロなど、自転車競技の宣伝効果で全国的に知名度をあげた企業が数多く存在します。

■CARRERA JEANS(カッレーラ・ジーンズ)

 「カッレーラ」(日本では「カレラ」が一般的)という自転車メーカーもありますが、もともとカッレーラは1965年に設立されたイタリアの老舗アパレルメーカーで、とくにジーンズで有名です。イタリア人はジーンズが大好きで、世界的に流行しているジーンズのダメージ加工もイタリア人ファッションスタイリストのロベルト・カヴァッリが提案したものです。カッレーラ・ジーンズは1979年から1996年まで自転車競技チームのメーンスポンサーを務めました。

 そして次は2000年代のスポンサーです。

■LIQUIGAS (リクイガス)

リクイガス・ビアンキ(当時、ツアー・ダウンアンダー2006)Photo: Yuzuru SUNADAリクイガス・ビアンキ(当時、ツアー・ダウンアンダー2006)Photo: Yuzuru SUNADA

 イタリアのプロパンガス大手。1999年から2012年まで自転車チームをサポートし、イヴァン・バッソ、ヴィンチェンツォ・ニバリ(ともにイタリア)、ペテル・サガン(スロバキア)ら多くのスター選手を生み出しました。

■SAECO(サエコ)

 ボローニャを拠点とするコーヒーマシンメーカーの一つで、2004年にこのチームに所属していたダミアーノ・クネゴ(イタリア、現NIPPO・ヴィーニファンティーニ)がジロ・デ・イタリアで総合優勝を勝ち取りました。

かつては日本の「セガ」もスポンサーだった

 NIPPO以外の日本の企業・ブランドも有名なレーシングチームのスポンサーを数多く務めました。2012年には日産自動車の米国法人がセカンドスポンサーとなった「レディオシャック・ニッサン」が注目を集め、また2012~14年にはガーミン・シャープが活躍しました。

「ゲータレード」チームのエース、ジャンニ・ブーニョの勇姿。パンツのサイドにはセがの家庭用ゲーム機「MEGA DRIVE」(メガドライブ)のロゴマークが見える =ジロ・デ・イタリア1993 Photo: Yuzuru SUNADA「ゲータレード」チームのエース、ジャンニ・ブーニョの勇姿。パンツのサイドにはセがの家庭用ゲーム機「MEGA DRIVE」(メガドライブ)のロゴマークが見える =ジロ・デ・イタリア1993 Photo: Yuzuru SUNADA

 1999年には、ダイキンがランプレと組んだことがあります。さらにさかのぼると、ビデオゲームで有名なセガが1993年、家庭用ゲーム機「メガドライブ」をPRするため、スポーツドリンクブランドのゲータレードと組んで自転車競技に参戦。チームのスターは、世界チャンピオンのジャージを着ていたジャンニ・ブーニョ(イタリア)でした。

 さて、2016年が始まったばかりですが、オーストラリア(ツアー・ダウンアンダー)とアルゼンチン(ツール・ド・サンルイス)では、早くも熱いバトルが始まろうとしています。今年はどんなドラマとどんなチャンピオンが生まれるか、楽しみです。

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

東京都在住のサイクリスト。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会や一般社団法人国際自転車交流協会の理事を務め、サイクルウエアブランド「カペルミュール」のモデルや、欧州プロチームの来日時は通訳も行う。日本国内でのサイクリングイベントも企画している。ウェブサイト「チクリスタインジャッポーネ

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