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つれづれイタリア~ノ<62>サイクリストの“新たな脅威”に要注意 イタリアで野生のイノシシが爆発的に増加

by マルコ・ファヴァロ / Marco FAVARO
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 10月3日の夜11時、イタリア、トスカーナ州。ヴィンテージバイクイベント「エロイカ」の取材のために訪れていたガイオレ・イン・キャンティ村からホテルに向かう途中、生まれて初めてイノシシの群れに出会いました。5~6匹だったと思います。クルマから放っていたハイビームの眩しい光にイノシシが驚き、道の真ん中で立ち往生してから、林の中に消えていきました。幸いなことに突進されることはありませんでした。

 実は最近、イタリア各地でイノシシが急増し、衝突事故や襲撃事件が頻発しています。クリスマスや年末年始に海外旅行に行く人が多いと思いますが、今日はイタリアを訪れる際の注意点についてお話しします。

年々増加する事故

イタリアの自転車専門誌に開催された注意喚起の記事 Photo: Marco Favaroイタリアの自転車専門誌に開催された注意喚起の記事 Photo: Marco Favaro

 最近のニュースを調べてみると、イノシシに関する事件の記事が短期間で2件ありました。12月10日、ローマ近郊。マウンテンバイクで練習していた40歳の男性が、イノシシの群れに遭遇。追われたため、木に登ってどうにかピンチを逃れました。さらに12月12日、ウンブリア州アレッツォ市近郊。地元の猟師会のメンバーがイノシシの群れに襲われ、35針を縫う大けがをしました。

 イタリアではイノシシによる被害は年々増加する傾向にあり、イタリア環境省、イタリア自転車競技連盟や自転車専門誌も注意を呼びかけています。

動物との接触事故が増えた背景

2010年のミラノ~サンレモでは、集団を牽引するように犬がコース上に出現 Photo: Yuzuru SUNADA2010年のミラノ~サンレモでは、集団を牽引するように犬がコース上に出現 Photo: Yuzuru SUNADA

 イタリアでは動物をめぐる事故は珍しくありません。故マルコ・パンターニは、道路に飛び出したネコを避けるために落車し、大けがを負いました。2013年のジロ・デ・イタリア、ナポリで開かれたステージでも野良犬がコース上に出てしまい、ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター チーム)と接触しそうになりました。危機一髪でした。

 サイクリストにとって一番大きな問題は、野生動物の急増に伴う事故です。特にイノシシ。もともとイタリアには、特に中部のトスカーナ州やウンブリア州に多くのイノシシがいました。実際、この地域を中心にイノシシ料理がたくさんあります。イノシシのサラミやハム、イノシシ肉のミートソースは現在も人気の郷土料理です。

子豚の像 Photo: enit イタリア観光協会子豚の像 Photo: enit イタリア観光協会

 さらにフィレンツェ市内には有名な観光名所があります。革製品で有名なメルカート・ヌオーヴォ(新市場)広場には16世紀に建てられた「Fontana del porcellino(子豚の泉)」という名の知れたイノシシ像があります。鼻をなでると幸運がもたらされると信じられています。やはりトスカーナ州とイノシシの“おいしい”付き合いは長い。

 しかし、一定の数を保っていたイノシシも第2次世界大戦中に食糧不足のためほとんど食べ尽くされてしまいました。イタリアのイノシシは臆病で体が小さいのが特徴でしたが、不足を補うためにハンガリーから大型で獰猛なイノシシが輸入されました。その一部が野生化し、それまで生息していなかった地域でも勢力を広げています。人間以外の天敵がいないため、その数は爆発的に増えているようです。現在、イタリア国内だけで100万頭以上のイノシシが存在していると言われています。

危険を避けるためのポイント

 イタリア自転車競技連盟は、国立公園やイタリア中部でサイクリングをする際に、イノシシとの接触をさけるため次の注意点を守るように促しています。

1.単独行動をしないこと

 イノシシは基本的に人間を怖がっていますので、自ら近付こうとはしません。聴覚と嗅覚が優れているので、サイクリング中に誰かと話したり、自転車に鈴をつけたりすると、イノシシが人間の存在に気付き、すぐ逃げます。

2.騒がないこと

 遠くにイノシシを見かけたら、まずは騒がずに自転車を止めることがベスト。イノシシが自ら森に帰るまで待ちましょう。こちらが騒がない限り、襲ってきません。もし森に帰らずこちらを睨んだら、素早く高いところに避難したほうがベストです。

3.急に現れたら逃げるのみ

 もし至近距離に急に現れたら、逃げるのみです。しかし、イノシシの走りは非常にスピードが速い。突進が得意な動物ですが、急な動きは苦手ですので、突進してきたら素早くかわしましょう。衝突を避けることができるはずです。イノシシはしつこく襲ってこないので、すぐに姿を隠すはずです。

けがをした時は「118」

 運悪くイノシシに襲われ、けがをしてしまった場合、どうすればいいのか。イノシシによる事故に限らず、けがをした場合のために、覚えてほしい緊急電話番号があります。118です。「プロント・ソッコルソ」(イタリアの救急センター)にかかります。けがの程度によりますが、救急車で最寄の病院まで運ばれます。

 ありがたいことに、基本的にイタリアのプロント・ソッコルソは診察と治療費用は無料です。薬代だけ自己負担となります。入院が認められた場合のみ、初めて入院費が有料となります。外国人観光客の増加でイタリアの病院では英語やフランス語のわかるスタッフがいますので、ある程度の会話ならスタッフが手伝ってくれます。海外渡航の常識ですが、必ず傷害保険に入りましょう。

イタリアで味わうイノシシ肉

 トスカーナ州とウンブリア州のスーパーへ行くと、イノシシのサラミなどがよく売られています。イノシシ肉1kgごとの参考価格は、ソーセージで8~12ユーロ、サラミは14~20ユーロ、生ハムが40~50ユーロほどです。

イノシシ肉の生ハム Photo: La buca di Montautoイノシシ肉の生ハム Photo: La buca di Montauto
イノシシ肉のサラミ Photo: Chiapellaイノシシ肉のサラミ Photo: Chiapella

 最後に、フィレンツェでおいしいイノシシを食べられるおすすめ料理店を紹介します。いずれも地元密着型の郷土料理レストランで、どの店で食べても失敗はありません。特にパッパルデッレ・アル・チンギアーレ(イノシシミートソースのパスタ)を試すべきです。

マルコおすすめのイノシシ料理店

「店名」, 住所

「Osteria dell’Agnolo」(1580年創業), Borgo S. Lorenzo 24, Firenze
「Trattoria ZàZà」(1977年創業), Piazza del Mercato Centrale 26, Firenze
「Osteria Brincello」, Via Nazionale 110, Firenze

トラットリア・ザザの内装 Photo:  Trattoria ZaZaトラットリア・ザザの内装 Photo: Trattoria ZaZa
キノコ入りパッパルデッレ・アル・チンギアーレ Photo:  giallozafferanoキノコ入りパッパルデッレ・アル・チンギアーレ Photo: giallozafferano
マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

東京都在住のサイクリスト。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会や一般社団法人国際自転車交流協会の理事を務め、サイクルウエアブランド「カペルミュール」のモデルや、欧州プロチームの来日時は通訳も行う。日本国内でのサイクリングイベントも企画している。ウェブサイト「チクリスタインジャッポーネ

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