スマートフォン版はこちら

サイクリスト

title banner

はらぺこサイクルキッチン<48>ネパール参戦へ向け高山病・感染症対策 ヘモグロビン増強メニューに加え低酸素テントも

by 池田清子 / Sayako IKEDA
  • 一覧

 夫でMTBプロアスリートの池田祐樹(トピーク・エルゴンレーシングチームUSA)にとって3度目の参戦となるヤックアタックレースが、今年も間もなく開催されます。ヤックアタックはネパールのヒマラヤ山脈を舞台とする、超過酷な8日間のステージレースです。過去2年間は日本で留守番だった私ですが、今年は一緒に行くことに決めました。“レースに勝つための食事”や、できる限りを尽くした“対策”についてご紹介します。

池田祐樹(トピーク・エルゴンレーシングチームUSA)にとって3度目となるネパール。2014年は準優勝、今年は優勝を獲りに行きます! Photo: Sayako IKEDA池田祐樹(トピーク・エルゴンレーシングチームUSA)にとって3度目となるネパール。2014年は準優勝、今年は優勝を獲りに行きます! Photo: Sayako IKEDA

レースコースを登山で移動するプランに参加

「ヤックアタック」ではバイクを担ぐセクションがあるため、担ぎの練習も。2015年は初めてフルサスでの出場を決意したのですが、どうもハードテイルとは違う…と出発直前まで試行錯誤しました Photo: Sayako IKEDA「ヤックアタック」ではバイクを担ぐセクションがあるため、担ぎの練習も。2015年は初めてフルサスでの出場を決意したのですが、どうもハードテイルとは違う…と出発直前まで試行錯誤しました Photo: Sayako IKEDA

 今まで同行できなかったのには、理由がありました。それは、やはり環境の違い。昨年は総合2位と好走したものの、2013年、池田祐樹は感染症によりレースコース上で気を失い途中棄権(DNF)となりました。その症状は人生で経験したことのない最悪なものだったと聞いています。

 海外から参戦した選手は、症状の差こそあれほぼ全員がなんらかの体調不良を訴えていました。食中毒以外にも、高山病も大きな課題です。

 ソロン・ラという峠(標高5416m!)を越えるセクションはクルマが入れないため、同行者は峠を越えずに最終日のフィニッシュ地点へと先回りするのが通例です。今回私は、レースコースを3日間登山で移動する医療スタッフたちと同じプランを志願しました。2015年8月のモンゴルのレースで日々頑張っていた選手に影響を受け「自分でも何かを成し遂げたい」という気持ちに駆られたためです。

過去にヤックアタックに出場経験のある選手たちに合流! レース参加者の約半数は、私も別のレースで会っている友人たち。こうして各国で再会できることは、とても幸せなことだと感じます Photo: Sayako IKEDA過去にヤックアタックに出場経験のある選手たちに合流! レース参加者の約半数は、私も別のレースで会っている友人たち。こうして各国で再会できることは、とても幸せなことだと感じます Photo: Sayako IKEDA
街をマウンテンバイクで駆け抜けるのは、かなりスリリング。気をつけて! Photo: Sayako IKEDA街をマウンテンバイクで駆け抜けるのは、かなりスリリング。気をつけて! Photo: Sayako IKEDA

 「食」での大きな課題は2つ。高山病と風邪・感染症です。高山病は鉄分の多い食材で予防し、風邪・感染症には免疫力アップが欠かせませんが、共通していることは「とにかく丈夫な体を作って外的要因に勝つ」ということ。具体的には、血液中の赤血球にあるヘモグロビンの量を増やそうとすることと、緑黄色野菜を多く食べることです。

海苔をプラスしてビタミンB12摂取

鉄分とビタミンの宝庫、パセリを加えたサラダ。飾りだけなんてもったいない! Photo: Sayako IKEDA鉄分とビタミンの宝庫、パセリを加えたサラダ。飾りだけなんてもったいない! Photo: Sayako IKEDA

 ヘモグロビンの量は、“酸素運搬能力”に比例します。酸素がきちんと全身に運ばれることは運動能力や疲労の回復、そして免疫力を保つことにもつながるとても大切なことです。高地順応のプロセスの助けになるとも言われています。ヘモグロビンの主な材料は鉄分です。鉄分不足が貧血を引き起こすということは皆さんもご存知のことと思います。鉄分強化月間として、ほうれん草の5倍の鉄分があると言われる大麦若葉の粉末を飲み始めました。

 また赤血球が作られる際にはビタミンB12と葉酸が必要で、これらが不足しても貧血になります。

 ビタミンB12は貝類などをはじめ動物性に多く含まれていると言われています。しかし祐樹さんからのオーダーは、基本的に植物性中心の食事。「実践して調子がよかった」という経験から「できるだけ動物性食材や乳製品を食べないでレースに臨みたい」という希望でした。

 そこで活用したのは、海苔。焼き海苔やあおさ海苔を今まで以上に積極的に摂るようにしました。加えて、週に2回程度、ビタミンB12を含む動物性食品を加えました。ラム肉、赤身のまぐろ、しじみなど。ちなみに葉酸は海苔に多く含まれていますが、通常の食事をしていれば不足することはないと言われています。

梅干しドレッシング、海苔をのせたグリーンサラダ。とにもかくにも、緑の葉野菜! Photo: Sayako IKEDA梅干しドレッシング、海苔をのせたグリーンサラダ。とにもかくにも、緑の葉野菜! Photo: Sayako IKEDA
ハードなトレーニングを終えた後の昼食は、楽しみにしてくれているので作りがいがあります。この日はベジタブルカレー Photo: Sayako IKEDAハードなトレーニングを終えた後の昼食は、楽しみにしてくれているので作りがいがあります。この日はベジタブルカレー Photo: Sayako IKEDA
野菜餃子は最近のヒット作。胃もたれしない軽い口当たりに、いくつでも食べられてしまいそう Photo: Sayako IKEDA野菜餃子は最近のヒット作。胃もたれしない軽い口当たりに、いくつでも食べられてしまいそう Photo: Sayako IKEDA
たかきびを使ったビーマンの肉詰め風。雑穀も栄養価が高く使い勝手がよいので、肉の代わりに利用します Photo: Sayako IKEDAたかきびを使ったビーマンの肉詰め風。雑穀も栄養価が高く使い勝手がよいので、肉の代わりに利用します Photo: Sayako IKEDA
トレーニング後の野菜丼。寿司飯は食欲増進効果もあって、ハードなトレーニングを終えた後でも食が進みます。夫の大好物のひとつ Photo: Sayako IKEDAトレーニング後の野菜丼。寿司飯は食欲増進効果もあって、ハードなトレーニングを終えた後でも食が進みます。夫の大好物のひとつ Photo: Sayako IKEDA

 緑黄色野菜の摂取は、いつも心がけていることでもありますが、中でも色の濃い緑の葉野菜は「ちょっと風邪を引きそうな前兆がある時に食べると、翌日には体調が戻っている」という経験があり、気に入っています。特に気に入っているのは、生で食べる小松菜。ほうれん草と違ってアクが少ないので、生で食べてもいい葉野菜です。そして、飾りとして使われることが多いパセリ。鉄分とビタミンの宝庫ですので、どちらもサラダとしてレタスに混ぜて食べています。

 当連載で何度も登場している梅干しも、毎日1粒は必ず取り入れています。昔ながらの、国産梅をシソと塩だけで漬けたものを選んでいます。添加物をなるべく摂らないことも、強い体を作る方法の一つです。

1日1粒で食中毒対策。シンプルに国産の梅干しをシソと塩で漬けた昔ながらの梅干しを選んでいます Photo: Sayako IKEDA1日1粒で食中毒対策。シンプルに国産の梅干しをシソと塩で漬けた昔ながらの梅干しを選んでいます Photo: Sayako IKEDA
時には甘〜いご褒美も。おからのココアケーキを作りました。炊飯器ひとつでできてしまう、オイル・小麦粉・乳製品不使用の簡単ケーキです Photo: Sayako IKEDA時には甘〜いご褒美も。おからのココアケーキを作りました。炊飯器ひとつでできてしまう、オイル・小麦粉・乳製品不使用の簡単ケーキです Photo: Sayako IKEDA

食中毒対策にレトルト食品も活用

アルファ米のお水またはお湯を注ぐだけの保存食と、フリーズドライの味噌汁を持参します。総重量は4kg! Photo: Sayako IKEDAアルファ米のお水またはお湯を注ぐだけの保存食と、フリーズドライの味噌汁を持参します。総重量は4kg! Photo: Sayako IKEDA

 “絶対”ということは何においてもありえないのですが、極力食中毒にならないように、現地での食事についても考えました。レースは、ネパールの首都カトマンズからスタートします。カトマンズの標高はおよそ1350m。なお、標高が上がるにつれて食中毒のリスクは減っていくそうです。

 現地に到着してから6日間は、日本から持参するアルファ米のレトルト食品を基本的には1日3食、食べることにしました。お湯もバーナーを持参し、自分たちで沸かします。これで十分な栄養素を満たせる訳ではないのですが、食中毒になるよりは…という選択です。そこに、粉末状の食材を足したり、抗菌力のある梅干しを加えたりする予定です。現地の食事の誘惑に勝てる自信は正直言ってありませんが…背に腹は代えられぬ! ということで、標高が上がるまでの我慢です。

到着後最初の朝食は、アルファ米の混ぜご飯。これもなかなか美味しいのですが、現地の食事の誘惑にも駆られています。どうなることやら Photo: Sayako IKEDA到着後最初の朝食は、アルファ米の混ぜご飯。これもなかなか美味しいのですが、現地の食事の誘惑にも駆られています。どうなることやら Photo: Sayako IKEDA
高地で使用する防寒着も揃って、気合十分の池田祐樹 Photo: Sayako IKEDA高地で使用する防寒着も揃って、気合十分の池田祐樹 Photo: Sayako IKEDA

 高地順応に備えて、出発の1カ月前から低酸素テントを利用しています。長野県などの高地トレーニング地の利用も考えたのですが、食事やバイクのメンテナンスなどの環境も考えて、自宅でできる低酸素テントを選びました。睡眠中、標高3000m地点の酸素濃度になります。月額7万円ほどからレンタルができ、実業団レーサーなどにも近年人気だそうです。私も池田祐樹と一緒に入っています。血中の酸素濃度測定器で、酸素濃度の数値を時々確認しています。大概は、寝る前99%→朝93%(テント内)という数値になっていました。テント内が低酸素になっているという証拠ですね。

レース1カ月前から低酸素テントをレンタルしました Photo: Sayako IKEDAレース1カ月前から低酸素テントをレンタルしました Photo: Sayako IKEDA
低酸素テントの使用を始めたと同時に、貧血の予兆はないかどうかなどの参考に、夜寝る前と起床時に血中酸素濃度の測定も開始しました。健康時の血中酸素濃度数値は96%~99%と言われていて、安静時の夫婦の数値は共に99%、低酸素テントに入ると5%程度低下した数値を保っていました Photo: Sayako IKEDA低酸素テントの使用を始めたと同時に、貧血の予兆はないかどうかなどの参考に、夜寝る前と起床時に血中酸素濃度の測定も開始しました。健康時の血中酸素濃度数値は96%~99%と言われていて、安静時の夫婦の数値は共に99%、低酸素テントに入ると5%程度低下した数値を保っていました Photo: Sayako IKEDA
アメリカから参戦の日本人の方から、食中毒予防のためのサプリメントとしてグレープフルーツシード抽出物の錠剤(向かって左)を、そして高山病予防のサプリメントをプレゼントしてもらいました Photo: Sayako IKEDAアメリカから参戦の日本人の方から、食中毒予防のためのサプリメントとしてグレープフルーツシード抽出物の錠剤(向かって左)を、そして高山病予防のサプリメントをプレゼントしてもらいました Photo: Sayako IKEDA

 また食中毒予防として、3種類の薬とサプリメントにもお世話になります。「百草」は、ミカン科の樹木「キハダ」の内皮から抽出されたオウバクエキスを主成分とする胃腸薬で、江戸時代からの長野県に伝わるクスリです。スリランカや南米のレース時に効果を発揮しました。加えて、私が中学生の時から愛用しているブラジル原産のプロポリスの原液。高い抗菌・殺菌・抗ウイルス作用があると言われています。そして、初めて知ったのですが、アメリカ在住で今回ヤックアタックに初参戦する日本人の方から「グレープフルーツシード抽出物の錠剤が効くらしい」と聞き、アメリカから持ってきていただきました。

 本格的な登山が初めての私(ヒマラヤ山脈というすごいデビューとなります)は、装備の面でも知らないことがたくさん。どんなご報告ができるかわかりませんが、これらを駆使して、みなさんにも選手の様子やヒマラヤの絶景、そして食事についてもぜひお伝えしたいと思います。

~お知らせ~

 ドキュメンタリー動画を手掛ける「Inspire」から、池田祐樹の活動を紹介する動画の第1弾が公開されています。マウンテンバイクを始めたきっかけやプロライダーになるまでの経緯などを語っています。ぜひご覧ください。
 YUKI IKEDA episode1 https://vimeo.com/144092539
 YUKI IKEDA episode2 https://vimeo.com/144848656

池田清子池田清子(いけだ・さやこ)

アスリートフード研究家。モデル事務所でのマネージャー経験を生かし2013年夏よりトピーク・エルゴンレーシングチームUSA所属ライダー、池田祐樹選手のマネージメントを開始、同秋結婚。平行して「アスリートフードマイスター」の資格を取得。アスリートのパフォーマンス向上や減量など、目的に合わせたメニューを日々研究している。ブログ「Sayako’s kitchen」にて情報配信中。

関連記事

この記事のタグ

ニュートリション はらぺこサイクルキッチン

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

ショップナビ

スペシャル

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載