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ツール・ド・北海道2012 第2ステージNIPPO大門宏監督がつのらせる危機感 「こんなのレースじゃない」

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 9月16日に行われたツール・ド・北海道の第2ステージ。レースを終えたゴール地点で、チームNIPPO大門宏監督の表情は曇っていた。チームとしては大成功。エースのマッシミリアーノ・リケーゼがステージを制し、総合成績でも首位を逆転、ポイント賞も獲得した。しかし監督は「がっかりですよね」と話す。チームの成績ではなく、この日のレース、そして日本のレース全体を見ての一言だ。
【第2ステージ結果】リケーゼが小集団スプリントを制して雪辱 総合リーダーも獲得
 この日のステージは、序盤に11チーム・11人の逃げグループが形成された。NIPPOも当然選手を送り込んだ。メーン集団は逃げを容認するムードとなり、一気にタイム差が開いたが、差が4分以上になったところで、NIPPOの選手が集団先頭でペースのコントロールを始めた。逃げとのタイム差が開かないようにペースを保ち、少しずつその差を詰めていく。

第2ステージ中盤を走るメーン集団。チームNIPPOが先頭を牽引した第2ステージ中盤を走るメーン集団。チームNIPPOが先頭を牽引した

 ロードレースのセオリーからすれば、逃げグループに選手を送り込んだチームが先頭を引く必要はない。NIPPOも本来ならチームとして前に出る必要はなかったはずだ。しかし大門監督とNIPPOの選手の考えは違っていた。

 「これではレースが終わってしまう」

 逃げが容認される中、メーン集団のペースは完全に止まってしまっていた。このままでは5分、10分と差が付いてしまう。そうなると挽回することは不可能だ。これはメーン集団に残った選手たちにとって、この日のレース、そして総合成績でも勝つ可能性が無くなってしまうことを意味する。全て前に行った11人に託されてしまうことになるのだ。

「全員ですぐに追え」

 果たして全てのチームが、逃げに乗った選手にレースを託しきれる状況にあるのかと言えば、そうではない。上りに弱い選手はゴールまで集団に残れない可能性が高いし、強い選手でもゴールまでに何らかのアクシデントがあるかも知れない。そうなった場合に、メーン集団が10分以上遅れていたら、次の手を打つことは不可能だ。

 逃げが決まってしばらくして、チーム最年長のフォルッナート・バリアーニが、大門監督のいるチームカーに前を追うべきかどうかを聞きに来た。「全員ですぐに追えと言いました。追い付かないまでも、せめて3分差程度にはしろと。追わないとすぐ10分、15分になっちゃうぞと言ったら、彼も慌てて前へ追いに行きました」。

 しかし、この日最大の山場である十勝岳の上りで、NIPPOは必ずしもペースを上げなかった。上りが得意でないスプリンターのリケーゼに集団で峠を越えさせるためだ。もしここでNIPPOのコントロールを妨害してペースを強烈に上げるチームがあれば、リケーゼは集団から遅れてしまった可能性が高いだろう。

 だがそうはならなかった。レース後に他のチームの選手から聞かれたのは「NIPPOがペースを上げると構えていたが、そうはならず助かった」「NIPPOに前を引かせて脚を使わせることができた」という消極的な言葉だった。結果、集団で上りをクリアーしたリケーゼは、ステージ優勝と総合首位を獲得することになる。

チームNIPPOの大門宏監督(右)と、第2ステージを制したマッシミリアーノ・リケーゼチームNIPPOの大門宏監督(右)と、第2ステージを制したマッシミリアーノ・リケーゼ

 「勝つ事を考えていないんですよね。『NIPPOが強いから』と、NIPPOの後ろに回ってうまくやれば、2位か3位に入れる。勝てたとしても他力本願で、自分たちが動いた結果ではない。こんなのレースじゃないですよ。“日本独特のレース”とよく言うんですが、こんなレースをしていても、世界を目指すのに何の経験にもならない。これで勝てても世界では通用しない。いわゆる“ガラケー”と一緒です」。大門監督は手厳しく指摘した。

 今年、ツール・ド・フランスなど世界トップの舞台である“3大ツール”全てに日本人が出場し完走。国内ではUCI(国際自転車競技連合)に登録するコンチネンタルチームが、過去最多の8チームに上った。一見、日本のロードレースをめぐる環境は上向きに見える。

選手の意識「後退している」

 しかし大門監督の見解は異なる。「だんだん酷くなっています。トレーニング方法や機材、チームの環境面ではすごく良くなっているのに、選手の意識は後退している」と話す。今年の3大ツールを走った日本人3選手は28歳と29歳で、この次の世代の選手が登場してきていない。国際登録をしているチームも、実際に海外のレースを中心に走るチームは半分に満たない。

 大門監督の危機感は、自身の選手時代から一貫して世界に目を向けて活動してきたからこそのものだ。チームNIPPOは国内企業のスポンサードを受けながらも、一貫して海外レースを中心に、世界を目指す選手が走るチームであり続けている。国内で出場する数少ないレースの一つが、このツール・ド・北海道だ。毎日入れ替わりで、多くの支援者が応援に訪れる。最終第3ステージの戦い方を尋ねられて「王道的なレースをする」と答えた。自分たちのやり方を貫き、勝利を目指す。(米山一輝)
【第3ステージ結果】リケーゼが最終ステージもスプリントを制して総合優勝

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