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“自転車革命都市”ロンドン便り<28>自転車レーンには幹線道路と都心部を網の目のようにつなぐ「クワイエット・ウェイ」

by 青木陽子 / Yoko AOKI
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 ロンドンも夕日の時間が長くなり、ホリデーシーズンが終わりに近づいてきたことを知らせています。朝晩の自転車通勤の流れも、ここに来てまたぐっと勢いを増しつつあるようです。

今年の夏もまた一段と自転車が増えたロンドン。信号待ちの先頭に自転車が集まるので、通勤ラッシュ時は信号が変わるたびにこのような風景が広がる Photo: Yoko AOKI今年の夏もまた一段と自転車が増えたロンドン。信号待ちの先頭に自転車が集まるので、通勤ラッシュ時は信号が変わるたびにこのような風景が広がる Photo: Yoko AOKI

着々と進む「東西サイクルスーパーハイウェイ」工事

2車線を潰して造成が進む東西サイクル・スーパーハイウェイ。写真右側の低い路面が自転車レーン(双方向)、中央が歩行者が歩けるアイランド(駐輪スペースとして使われる可能性も)。それぞれ幅3mほど Photo: Yoko AOKI2車線を潰して造成が進む東西サイクル・スーパーハイウェイ。写真右側の低い路面が自転車レーン(双方向)、中央が歩行者が歩けるアイランド(駐輪スペースとして使われる可能性も)。それぞれ幅3mほど Photo: Yoko AOKI

 2015年の2月に、ロンドンを貫く新しい隔離式自転車道の建設が決まったことをレポートしましたが、その工事は着々と進んでいるようです。観光名所でもあるビッグベン(国会議事堂)のふもとからテムズ川沿いに東に延びるエリアで始まっている「東西サイクルスーパーハイウェイ」の工事を見に行ってきました。

 目測で、自転車道は2方向で幅3mあるかどうか。車道との間に設けられるアイランドも幅3mほど。「ここを減らしてもうちょっと自転車レーンの幅を広くしてくれればいいのに!」というのが正直な第一印象。この2つができることで、車道は各方向1レーンずつ減少になります。

南北のサイクル・スーパーハイウェイも一部着工している。これは交差点の形自体を大きく変える予定のオールドストリート、完成予想図を張り出している Photo: Yoko AOKI南北のサイクル・スーパーハイウェイも一部着工している。これは交差点の形自体を大きく変える予定のオールドストリート、完成予想図を張り出している Photo: Yoko AOKI

 車道が半分になってしまうので渋滞がすごくなりそうと思いきや、この道は国会議事堂前の大ラウンドアバウト(ロータリー)とテムズ川にかかる橋がシケインになっていまでも常に交通の抜けが悪いので、それほどの影響はないのかもしれません。タクシーの運転手さんたちは「この自転車レーンができたら絶対ひどいことになる!」と嘆いていますが、あけてみてのお楽しみというところです。現在車道に大勢走っている自転車が基本的にいなくなれば、クルマのドライバーはむしろ走りやすくなるわけで、さてどうなるか。

自転車初心者や子どもでも安心の道

クワイエット・ウェイの自転車専用信号。通勤時間帯は、赤信号ごとに自転車の人が10台以上たまる Photo: Yoko AOKIクワイエット・ウェイの自転車専用信号。通勤時間帯は、赤信号ごとに自転車の人が10台以上たまる Photo: Yoko AOKI

 ボリス・ジョンソン市長の掲げている自転車レーンには、スーパーハイウェイ以外にもう一種類、都心部を網の目のようにつなぐ「クワイエット・ウェイ」というものがあります(地図参照)。これはその名の通り、静かな裏通りをつなぐもので、スーパーハイウェイが幹線中心に整備され、ある程度のスピードを出して走れるように考慮されるのに対して、自転車初心者や子ども・高齢者でも安心して走れる道になるとされています。

 こちらは市道でなく区道が多いので、まだそれぞれの区ごとに細かな整備計画図が発表されたり、住民などへパブリックコメントの募集が呼びかけられたりしていて、進行度はまちまちです。それでも一部の区では部分部分ながら、少しずつその姿を現し始めました。

 このクワイエット・ウェイでいいアイディアだと感心したのは、ただ網の目のように作るだけでなく、東京で言うなら「渋谷から新橋はQ(クワイエットのQ)01号線」「新宿から東京はQ丸の内線」など、人々によく知られている既存のバス路線や地下鉄路線に近い「路線」を設定し、同じ名前をつけようとしていることです。これはいずれ東京などでも使える案ではないでしょうか。

ロンドン都心のサイクルスーパーハイウェイ(水色)とクワイエット・ウェイ(紫色)の2016年末における完成予想図。この地図は都心の東西10kmほどのもの Image: TfLロンドン都心のサイクルスーパーハイウェイ(水色)とクワイエット・ウェイ(紫色)の2016年末における完成予想図。この地図は都心の東西10kmほどのもの Image: TfL
カムデン・タウンそばのクワイエット・ウェイ。以前当連載でご紹介したサイクルフープが販売しているスペイン製のレーン分離具「アルマジロ」と花壇でゆるく区切っている Photo: Yoko AOKIカムデン・タウンそばのクワイエット・ウェイ。以前当連載でご紹介したサイクルフープが販売しているスペイン製のレーン分離具「アルマジロ」と花壇でゆるく区切っている Photo: Yoko AOKI

走りやすい道を目ざとく見つける自転車乗り

2000年頃から整備が始まった自転車用案内板。以前はこの通りに進んでも途中で案内が消えたり走りにくかったりだったが、最近使いやすくなってきた Photo: Yoko AOKI2000年頃から整備が始まった自転車用案内板。以前はこの通りに進んでも途中で案内が消えたり走りにくかったりだったが、最近使いやすくなってきた Photo: Yoko AOKI

 見ていて面白いのは、一部分の道だけでも自転車にとって走りやすい整備が完成すると、その道を通る自転車乗りがすぐに増えること。常に走りやすくより安全な道を探している自転車乗りの目ざとさは野生動物のようです。これは区の担当者も工事の進め甲斐があるのでは。

 クワイエット・ウェイやそれに準じる裏通りの自転車のための道案内標識もさらに増えてきています。10年以上前からこの道案内はつくられてきましたが、あの頃はこれを頼りに走っても、途中で変な迂回をさせられたり、道が消えたり、あまり快適ではないのが実情でした。それが最近ようやく道がきちんとつながるようになってきた気がします。

幹線など指定の道路以外すべて、制限速度を時速20マイルにしたのはイズリントンなど都心の3区。今後広がる予定だが、ドライバーにどう守らせるかも課題だ Photo: Yoko AOKI幹線など指定の道路以外すべて、制限速度を時速20マイルにしたのはイズリントンなど都心の3区。今後広がる予定だが、ドライバーにどう守らせるかも課題だ Photo: Yoko AOKI
スーパーハイウェイの工事箇所手前にあった「幅員減少、自転車を追い越そうとしないように」という注意書き。道幅が狭くても遅い自転車を抜くのはクルマの権利だと言わんばかりに躍起になるドライバーが多いので、これはうれしい Photo: Yoko AOKIスーパーハイウェイの工事箇所手前にあった「幅員減少、自転車を追い越そうとしないように」という注意書き。道幅が狭くても遅い自転車を抜くのはクルマの権利だと言わんばかりに躍起になるドライバーが多いので、これはうれしい Photo: Yoko AOKI

 自転車が走りやすいロンドンにするためのもうひとつの施策に、幹線以外すべての道の制限時速を20マイル(32km)にしていくというものがあり、これも都心の3区がすでに導入し、検討中の区も少しずつ広がりつつあります。自転車乗りにとっては、実現すればかなり安心なルールですが、導入済みの区でも警察がほとんど取締りを行っていないので、ほぼ無視されているのが実態です。自転車レーンが次第につながってきたように、これもいずれ守られる日が来るのだろうか、と、イギリスのやけに直径の小さな制限速度標識を見上げて祈る今日このごろです。

青木陽子青木陽子(あおき・ようこ)

ロンドン在住フリー編集者・ジャーナリスト。自動車専門誌「NAVI」、女性ファッション誌などを経て独立起業、日本の女性サイトの草分けである「cafeglobe.com」を創設し、編集長をつとめた。拠点とするロンドンで、「運転好きだけれど気候変動が心配」という動機から1999年に自転車通勤以来のスポーツ自転車をスタート。現在11台の自転車を所有する。ブログ「Blue Room」を更新中。

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