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“自転車革命都市”ロンドン便り<27>南仏の中央山塊へ夏の自転車合宿 路面・食・物価・天候がサイクリストに好条件

by 青木陽子 / Yoko AOKI
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 夏休みで南仏ラングドック地方、モンペリエのそばへ自転車合宿に来ています。アルプス、ピレネーの2大山脈の間にあるマッシフ・サントラル(いわば中央山塊)のふもとで、今年のツール・ド・フランスでスタート・ゴール地点になったロデーズ、マンドに近いあたりです。南仏と言っても華やかなプロヴァンス地方とは違って地味なラングドック。人口密度の低さも国内屈指とのことで、自然たっぷりのひなびた風情と南欧ならではの歴史の痕跡が見どころです。

11世紀の石積みの通称「悪魔橋」と塔のある集落が美しいオラーグの町。ラングドックには、このような城壁と塔を持つ中世からの集落がたくさん残っている11世紀の石積みの通称「悪魔橋」と塔のある集落が美しいオラーグの町。ラングドックには、このような城壁と塔を持つ中世からの集落がたくさん残っている

バラエティに富んだルート

フランス、マッシフ・サントラルの南端から、はるかにピレネー山脈を望む。あの向こうはスペイン!フランス、マッシフ・サントラルの南端から、はるかにピレネー山脈を望む。あの向こうはスペイン!

 ラングドックは、日本からだとパリなどどこかの都市で飛行機を乗り換える必要があるやや遠いエリアですが、道がよく景色が美しく食事がおいしく比較的物価が安い、しかも夏場はデフォルトが晴れで安定と自転車旅をしたい向きには好条件が揃っていておススメしたい地域です。

 フランスでも、公共事業といえばまず道路整備という傾向があるようで、路面はもうほぼどこも完璧。羊羹の切り口のようなしっとりとしたアスファルトが続くのも、ロードバイク派にはうれしい環境です(イギリスとは大違い!)。フランスのドライバーは自転車をリスペクトしてくれる人がほとんどなので、あまり緊張しないですむのも大きな◎(イギリスや日本とは大違い!)。

 山のふもとなので、アフリカ上空の高気圧から熱風が来る暑い日は1000mを超える山の上の高原に行き、北大西洋の冷たい風が来て雲が多くなる日は一面ブドウ畑の平地から500m級の丘陵地帯と、ライドのバラエティにも事欠きません。

森を走ってきてひなびた集落に入ると、日本の田舎と同じ匂いがする。薪などを燃やす匂いと、動物の匂いと、暮らしの匂い森を走ってきてひなびた集落に入ると、日本の田舎と同じ匂いがする。薪などを燃やす匂いと、動物の匂いと、暮らしの匂い
肌にやさしい鉱水を使っているというコスメのアヴェンヌ村に向かう途中見つけた水道橋。いまも滔々(とうとう)と水が流れていた肌にやさしい鉱水を使っているというコスメのアヴェンヌ村に向かう途中見つけた水道橋。いまも滔々(とうとう)と水が流れていた

 そして緑の中あちこちに見える石積みの古い集落や、中世の教会建築、いまも渡れる10世紀頃からの橋…。キリスト教の異端として十字軍に絶滅させられたカサー派が籠城した丘の上の塔、ローマ人が作った水道橋など、歴史好きにはたまらない遺構もゴロゴロです。

自転車なら迷路のような中世の集落に入り込んで一回りをしてくるのも楽しい自転車なら迷路のような中世の集落に入り込んで一回りをしてくるのも楽しい
フランスでは、集落ごとに公共の水飲み場が必ず設けられているので、自販機がなくても水補給には困らないフランスでは、集落ごとに公共の水飲み場が必ず設けられているので、自販機がなくても水補給には困らない
このあたりは石灰質の大地で、大理石も名産品。暑い日はペダルをとめて、そのまま白い岩肌の川での水遊びもこのあたりは石灰質の大地で、大理石も名産品。暑い日はペダルをとめて、そのまま白い岩肌の川での水遊びも

欧州で高まる自転車旅行の機運

ラ・ヴォア・ヴェール(緑の道)の入り口。蛇籠と丸太を使ったナチュラルなこのゲートは今シーズン新設されたものラ・ヴォア・ヴェール(緑の道)の入り口。蛇籠と丸太を使ったナチュラルなこのゲートは今シーズン新設されたもの

 舗装路でガツガツ走るのに疲れたら、古い鉄道路線を使った「ラ・ヴォア・ヴェール(緑の道)」へ。その昔はニームからトゥールーズを繋いでいた街道沿いで、ランドヌールと呼ばれるトレッキングの人、ハイキングの人、自転車、馬のための総延長75kmの道です。最大でも2%程度の斜度なので、あまり自転車に乗らないパートナーや家族でもここなら大丈夫。

 日本もふくめ世界各国で旧軌道を整備したサイクリングロードが増えていますが、ここラングドックでも地元の観光資源として活用されているのがわかります。レンタサイクルのお店が毎年増えているし、庭の一部をキャンプ場として貸している人、緑の道に面した軒先に椅子を出して飲み物とスナックを売っている人も。

緑の道に沿って、ピザと飲み物を出すお店が営業している。飲み物カウンター、キャンピング場などもあちこちにある緑の道に沿って、ピザと飲み物を出すお店が営業している。飲み物カウンター、キャンピング場などもあちこちにある
エッフェル塔のギュスターヴ・エッフェルが設計した鉄道橋もいまは緑の道にエッフェル塔のギュスターヴ・エッフェルが設計した鉄道橋もいまは緑の道に
駅舎もまだ残っていて、このように観光案内所になっていたり、個人の住宅になって洗濯物がぶらさがっていたり駅舎もまだ残っていて、このように観光案内所になっていたり、個人の住宅になって洗濯物がぶらさがっていたり

 これもいつか取材してみたいと思っているのですが、EUでは自転車での旅行を促進するためにさまざまな施策を打っており、そのひとつとしてEU圏を縦横にネットワークする自転車ルート「ユーロヴェロ」の整備を進めています。この緑の道はそれには含まれていませんが、ヨーロッパ全体で自転車旅行の機運が盛り上がってきているのが感じられます。そうそう、この地域にはスペインのサンチアゴ・デ・コンポステーラ巡礼のルートの1つもあり、荷物を積んだ自転車で向かう人たちにもときどき出会います。

自転車旅で持ち歩くツール一式を公開

モンペリエの南には地中海屈指の水揚げの漁港があり、牡蠣の一大名産地でもあるので、シーフードも楽しめるモンペリエの南には地中海屈指の水揚げの漁港があり、牡蠣の一大名産地でもあるので、シーフードも楽しめる

 最後に、自転車旅のときにわたしが持ち歩くツール一式をご紹介します。サポートのない自力旅で、荷物をできるだけ少なく軽くしつつ、夜は基本的に同じ宿に泊まるトレーニングキャンプの場合。自転車のプロショップが近くにないエリアに行くことが多いのですが、かなり不運な故障でもない限り、これだけあれば旅行の間はなんとか走り続けられる(これだけあっても対応できない故障なら乗るのをあきらめられる)という自分なりに練ってきたラインナップです。

 今回はタイヤが切れて路上で途方にくれているローディにタイヤブートをあげて喜ばれたものの、1枚しか持ってこなかったので次からは複数枚持ってこようと考えているところです。

 ちなみに、持ち物確認のとき、パスポートとカードの次に確認すべきは、サイクリングシューズです。とくに女性など足のサイズの小さい人は、ヨーロッパのショップには都会でもまず在庫がありません。ネット通販でも田舎は休暇中に配達が間に合わない可能性も高いのでご注意を。ご参考になれば!

自転車旅のツール一式

大きめの自転車マルチツール(宿においておく用)
小さめの自転車マルチツール(ライド用)
レザーマンマルチツール(プライヤーが主な用途)
ペダルレンチ(アレンキー対応ペダルの場合は省略)
フロアポンプ(宿においておく用)
携帯ポンプ(ライド用)
IKEAの紙テープメジャー(シート高チェック用)
スペアタイヤ 1本
スペアチューブ 3本
チューブ修理パッチ 数枚
タイヤブートパッチ 数枚
チェーンコネクトリンク 1個
ブレーキパッド 1セット
クリート1個
小さい容器に詰め替えたグリス
ウェットタイプチェーンオイル
ウエスひとつかみ

青木陽子青木陽子(あおき・ようこ)

ロンドン在住フリー編集者・ジャーナリスト。自動車専門誌「NAVI」、女性ファッション誌などを経て独立起業、日本の女性サイトの草分けである「cafeglobe.com」を創設し、編集長をつとめた。拠点とするロンドンで、「運転好きだけれど気候変動が心配」という動機から1999年に自転車通勤以来のスポーツ自転車をスタート。現在11台の自転車を所有する。ブログ「Blue Room」を更新中。

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