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はらぺこサイクルキッチン<42>標高3000mの高地では貧血に要注意 “食べる輸血”ビーツや日本の食材で鉄分補給

by 池田清子 / Sayako IKEDA
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 イタリア・ドロミテ地方で開かれたMTBマラソン世界選手権に夫・池田祐樹(トピーク・エルゴン レーシングチームUSA)が出場した後、私たち夫婦は次の遠征地、アメリカ・コロラド州のブリッケンリッジ(通称:ブレック)へとやってきました。私もコロラドで過ごす夏は今年で3年目。約3000mの標高にも体は徐々に順応してきています。祐樹さんはブレック滞在が2週間を過ぎた7月18日、「ブリッケンリッジ100」(ブレック100)というレースに出場しました。

標高約3000mのブリッケンリッジを走る、チーム「エルゴン」のジェフ・カーコブ選手。森林限界を超え、樹は生えていない標高約3000mのブリッケンリッジを走る、チーム「エルゴン」のジェフ・カーコブ選手。森林限界を超え、樹は生えていない

富士山の八合目なみの標高からスタート

フィニッシュ直後の池田祐樹。標高の高さに順応してきていることを実感したフィニッシュ直後の池田祐樹。標高の高さに順応してきていることを実感した

 ブレック100は、祐樹さんが昨年チームで参戦して優勝した大会で、今年はエルゴンのファクトリーライダーでチームを結成。ジェフ・カーコブ選手、キャレン・ジャーコー選手との3人による男女混合チームで参加しました。

 結果は、ソロもチームも含めた全てのカテゴリーで総合優勝でした。エルゴンチームが総合で優勝したのは、大会が始まって11年目で初めてのことだそうです。

朝6時の「ブリッケンリッジ100」スタート直前。「エルゴン」チームのトップバッターはジェフ・カーコブ選手(右)朝6時の「ブリッケンリッジ100」スタート直前。「エルゴン」チームのトップバッターはジェフ・カーコブ選手(右)
最後のラップを走り終えて優勝が確定。みんなで「Yeah!!」最後のラップを走り終えて優勝が確定。みんなで「Yeah!!」
2週間から4週間かけて標高に順応していく。いつも以上にきつく感じる斜度にもやがては慣れてくる2週間から4週間かけて標高に順応していく。いつも以上にきつく感じる斜度にもやがては慣れてくる

 昨年同様、高地であるブレックの標高に順応することが、レースまでに克服すべき大きな課題でした。なにせ富士山の八合目がスタート地点のようなもの。そこからさらに標高が上がっていくので、空気中の酸素が薄いのは当然。血液中の酸素も減り、体が思うように動きません。さらに、日々のトレーニングからの回復も遅れます。強度の高い運動をするならなおのこと、呼吸は苦しくなり、体への負担は大きくなります。

こまめな水分補給を忘れずに

 読者の皆さんが体験されるかもしれない「標高が高い場所」での注意点や工夫について、ご紹介しますね。

 まず、基本中の基本ですが水分補給をまめに行うことが大切です。標高が高い場所は空気が乾燥し、空気中の水分が少ないため、通常呼吸から入る水分も少なくなり、気が付かないうちに体内の水分が失われていることがあります。水分は、真水だとビタミンなどのミネラルが体外へ排出されるため、電解質を含むものがよりよいでしょう。

高地では、暑くなくとも水分補給はこまめに。日焼け対策も体力キープに重要です高地では、暑くなくとも水分補給はこまめに。日焼け対策も体力キープに重要です

 私の体験では、2年前に初めてデンバーに到着した際(標高約1600m。1マイルが1600mなので別名「マイルハイシティー」とも呼ばれています)、水分補給を忘れていたら数時間で頭痛がしました。睡眠をとって、目が覚めた際にこまめに水を飲んだところ、痛みは軽減されました。出かける際も、ウォーターボトルを持ち歩くこと。お肌の乾燥と日焼けにもご注意を!

 そしてもう一つは、標高順応日を設けること。2年前はすぐにブリッケンリッジへは行かず、デンバーの街で1泊しました。しかし昨年はうっかり南アフリカからブレックへ直接入ったため、少しダウンしてしまいました。みなさんも高地へ行かれる際には「少し高い」くらいの場所で、ワンクッション置くことをお勧めします。ちなみに今年は標高が1200m以上のドロミテから向かったので、デンバー空港から直接ブレックへ入っても特に体調を崩すことはありませんでした。

空が近く感じるブリッケンリッジ空が近く感じるブリッケンリッジ
夕焼け(といっても夜8時)も美しいブリッケンリッジ夕焼け(といっても夜8時)も美しいブリッケンリッジ

「いつものパワー」が出なくても心配無用

 続いてフィットネス面について。普段からパワー数値をデータ管理している方は、標高の高い場所で「いつもの数値」が出ないと驚くかもしれません。しかし焦ったり落ち込んだりする必要はありません。トップ選手でも、低地と比べると3000m級の標高では10~15%も落ちます。通常の生活・トレーニングができるように順化するまで2~4週間はかかると言われています。

インターバルトレーニング中の池田祐樹。ブリッケンリッジの標高の高さでかなり呼吸が苦しい様子インターバルトレーニング中の池田祐樹。ブリッケンリッジの標高の高さでかなり呼吸が苦しい様子

 コロラド州でスキーのインストラクター兼コーチをしている方も、「日本からスキーの選手がトレーニングでやってくるけれど、筋肉量が多いアスリートほど筋肉中の酸素を多く必要とするから、一般の方よりも酸素が少ないことをより顕著に実感しているね」と話していました。祐樹さんも到着後の数日間は、家の階段の昇り降りでも息が切れ、頻繁に立ち眩みを起こしていました。

 ちなみに祐樹さんのFTP値(1時間出し続けられるパワーの最高値)は約12%減。ここから低地での数値とのギャップを徐々に埋めていくのが、高地トレーニングのカギとなります。

海苔や納豆、ひじきも鉄分豊富

 標高の高い場所では特に、貧血予防の食事は欠かせません。特に、アメリカで手に入りやすく「食べる輸血」として人気の高いビーツは、血流量を増やすだけでなく血管自体を強くする働きもある優秀な食材です。皮ごとアルミホイルに包んでオーブンで焼き、皮をむいてスライスしてそのまま食べると、手軽ですが甘みが口の中に広がっておいしいですよ。

ビーツを皮のままアルミホイルに包んでオーブンで焼くといっそう甘みが増しておいしいですビーツを皮のままアルミホイルに包んでオーブンで焼くといっそう甘みが増しておいしいです
ビーツの葉が新鮮だったらラッキー!ごま油、しょうゆと炒めてご飯のお供にビーツの葉が新鮮だったらラッキー!ごま油、しょうゆと炒めてご飯のお供に
夕食にはたっぷり野菜のサラダが欠かせない夕食にはたっぷり野菜のサラダが欠かせない

 さらに、鉄分が多いアマランサス、キヌアを米と一緒に炊いて食べるのも、手軽に続けられる方法として日課になっています。最近は日本でも雑穀ブームでよく見かけるようになりました。海苔、納豆、ひじきなど、ヘルシーな日本の伝統的な食材にも鉄分が豊富に含まれています。アメリカでも場所によっては手に入るので、ありがたくいただいていますよ!(日本でもモチロンおいしいですが、ここでは貴重なせいかさらにおいしく感じます)

(右上から時計回りに)ひじきの煮物、みそ汁、アマランサスとキヌアのご飯、手作り揚げ出し豆腐の夕食(右上から時計回りに)ひじきの煮物、みそ汁、アマランサスとキヌアのご飯、手作り揚げ出し豆腐の夕食
アマランサスとキヌアを混ぜて炊いたご飯で栄養強化アマランサスとキヌアを混ぜて炊いたご飯で栄養強化
キヌアとケールのサラダ。週に1度は作ってストックしておくキヌアとケールのサラダ。週に1度は作ってストックしておく

 私を含め多くの方にとって、期間に関わらず、日本を離れると環境の違いに戸惑うことは少なくないでしょう。さらにそこで「レースをする」というのは、さまざまな面でハードルが上がることと思います。私たちの経験が少しでも海外遠征に役立つヒントになれば幸いです。

 それから、祐樹さんがパワートレーニングのコーチングを受けている「Peaks Coaching Group Japan」の中田尚志さんが、祐樹さんの高地での順応の過程と「ブリッケンリッジ100」のウイニングデータを解析し、公開しています。高地トレーニングに関する興味深い内容となっています。

池田清子池田清子(いけだ・さやこ)

アスリートフード研究家。モデル事務所でのマネージャー経験を生かし2013年夏よりトピーク・エルゴンレーシングチームUSA所属ライダー、池田祐樹選手のマネージメントを開始、同秋結婚。平行して「アスリートフードマイスター」の資格を取得。アスリートのパフォーマンス向上や減量など、目的に合わせたメニューを日々研究している。ブログ「Sayako’s kitchen」にて情報配信中。

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