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つれづれイタリア〜ノ<53>夏のバカンスは山で自転車観光 欧州サイクリストに人気の「バイクホテル」

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 いよいよグランツールの最高峰、ツール・ド・フランスがスタートしました。プロトンはオランダを出て、ベルギーを通過し、フランスに戻りました。今年も落車によるけが人、リタイヤが相次いでいて、すでに総合優勝の熾烈な戦いもはじまっています。

 ツールが始まると、ヨーロッパでは本格的な夏休みのシーズンが到来します。イタリアだと、人気の休養地は海ですが、この数年では世界自然遺産のドロミティ山脈が急速に人気を集めています。その理由は、自転車と観光を結びつけるサービスがあるからです。

セッラ峠に向かう上り坂。ジロ・デ・イタリアの山岳ステージにも登場します ©Carver Manfred Strombergセッラ峠に向かう上り坂。ジロ・デ・イタリアの山岳ステージにも登場します ©Carver Manfred Stromberg

厳選されたサイクリスト向けホテル

有名な峠が多いイタリアの山岳地帯が、長期滞在のスポットとして人気 ©SMG Daniel Geiger有名な峠が多いイタリアの山岳地帯が、長期滞在のスポットとして人気 ©SMG Daniel Geiger

 ヨーロッパ中の学校は7月から9月まで休みに入り、授業もなければ、登校日もありません。宿題もさほど多くありません。日本では考えられないことですが、労働者も3~4週間の有給休暇がもらえます。長い休みなので、ヨーロッパのバカンススタイルというと、長期滞在休暇が基本です。つまり、あちこちへ移動するのではなく、一つの場所で2~3週間のんびりと滞在します。家族とでも友達とでも、みんなでリラックスできる場所を求めます。

 イタリアの夏は雨が少なく、とても過ごしやすくバカンスを楽しめます。さらに北部に広がるアルプスには、有名な峠がたくさんあります。特にトレンティーノ・アルト・アディジェ州は、ジロ・デ・イタリアの白熱したバトルの舞台となっているので、サイクリストたちの憧れの場所です。

 そして、登山ではなく自転車をアルプスで楽しみたい、という観光客が増えてきたことをきっかけに、1996年にボルツァーノ県ブルニコ市の自転車協会が「BikeHotels Sudtirol」(南チロルバイクホテルス)というホテル組合を発足させました。

BikeHotels Sudtirolに加盟している「デザインホテルチロル」の外観 ©BikeHotels Sudtirol BikeHotels Sudtirolに加盟している「デザインホテルチロル」の外観 ©BikeHotels Sudtirol
「デザインホテルチロル」の室内プール ©BikeHotels Sudtirol 「デザインホテルチロル」の室内プール ©BikeHotels Sudtirol

 サイクリストたちが満足できる、きめ細かいサービスを提供できるホテルを厳選した組合で、はじめは加盟数が少なかったのですが、バイクへの関心の高まりで2010年から加盟希望の宿泊施設が急速に増えました。2015年7月の時点で、この取り組みに賛同した宿泊施設は39件に上り、さらに8つのサイクリングスクールが加盟しています。

安全に楽しめるコース レンタルやサポートも万全

 このホテル組合に加盟するには、厳しい審査を通過しなければなりません。加盟している宿泊施設はどんなサービスを提供しているのでしょうか。BikeHotels Sudtirolが定めた最低限の条件をいくつかを見てみましょう。

【立地条件】
マウンテンバイク(MTB)やロードバイクを安全に利用できるコースが周辺にあること
【設備の条件】
修理道具、修理スペース、ランドリー、自転車ウォッシングエリアが完備されていること
【安全対策】
外部から侵入できない、監視された駐輪場があること。または自転車を部屋で保管できること
【インフォメーションコーナーの設置】
自転車専門雑誌、周辺のサイクリングロードマップの案内コーナーが設置されていること
【サポートショップの有無】
ホテルと地元の自転車ショップが連携し、24時間以内にあらゆる故障を修理できる態勢が整っていること
【食事メニューの条件】
朝食に10種類以上の食材が出ること。昼食は、ライダーが食べやすい、軽い食事を用意できること
【レンタルサービスの条件】
MTBかロードバイク、さらにGPS機能付きのサイコン、ヘルメット、ボトルなどもレンタルできること

「ローゼンガルテンホテル」のレンタルバイク ©BikeHotels Sudtirol 「ローゼンガルテンホテル」のレンタルバイク ©BikeHotels Sudtirol
「アルピン・ホテル」の朝ご飯。地元のソーセージ類が楽しめます ©BikeHotels Sudtirol 「アルピン・ホテル」の朝ご飯。地元のソーセージ類が楽しめます ©BikeHotels Sudtirol

 さらに、もっと厳しい条件があります。例えば、ホテルは資格をもつガイド付きのサイクリングツアーも提供しなければなりません。ホテルのオーナー自身がガイドの資格を持つことが望ましいとされていて、週に1、2回はツアーを企画し、ツアーの前には説明会を開きます。

 他にも、サイコンで記録したデータのアップロードを手伝ってくれるスタッフがいます。また、必要に応じてホテルはパワーバーなどのサポート食を提供。利用者に問題が生じた場合のピックアップサービスも用意されています。

「バンブーホテル」のビュフェ。日本の鉄板焼きをまねています ©BikeHotels Sudtirol 「バンブーホテル」のビュフェ。日本の鉄板焼きをまねています ©BikeHotels Sudtirol
「デザインホテルチロル」の屋外プール ©BikeHotels Sudtirol 「デザインホテルチロル」の屋外プール ©BikeHotels Sudtirol

自転車観光は過去最高の盛り上がり

 組合の責任者のミカエラ・ズィンゲルレ氏に、BikeHotels Sudtirolの活動について聞いてみました。

――新規ホテルの加盟はどのように行われますか。

 「加盟希望の施設から申し込みが届くと、加盟条件の規定を送ります。加盟条件をクリアしなければ、加盟を認めることはありません」

――加盟店は会員費のようなものを支払っているのでしょうか。

 「はい。年会費の制度があり、それを使って加盟店を支える活動を行ったり、ウェブサイトを充実させたり、広く宣伝活動をしたりします」

メラーノ周辺に広がる葡萄畑 ©BikeHotels Sudtirol メラーノ周辺に広がる葡萄畑 ©BikeHotels Sudtirol

――組合のサイトのウェブマガジンは、面白い情報が満載です。誰が作っていますか。

 「ほとんど事務局で作っています。さらに外部のライターや専門ガイドの最新の情報をもとに、常に更新しています」

――1万人が参加するグランフォンド「ドロミテ・マラソン」の実施など、ドロミティ山脈にまつわる多くの人気サイクリングイベントが開かれています。最近では、自転車を中心とした観光ビジネスが盛り上がりを見せていますが、実際はどうですか。

 「自転車観光は過去にない盛り上がりを見せています。MTBは昔から人気ですが、グランフォンドやジロ・デ・イタリアのおかげで、自転車を楽しみたいという観光客は年々増えています。さらにイタリア最大のMTBイベント、ステルヴィオ・バイク・デーやドロミテ・スーパーバイクといったさまざまなイベントも開かれています」

南チロルはオンロード、オフロードともにコースが豊富 ©Carver Manfred Stromberg南チロルはオンロード、オフロードともにコースが豊富 ©Carver Manfred Stromberg

――観光客はどこから来ますか。

 「イタリアだけでなく、ヨーロッパ各地から来ます。ドイツ語圏やオランダ、ベルギーからも」

――国によって自転車の楽しみ方に違いはありますか。

 「スイス、オーストリア、ドイツのお客さんは主にMTBを楽しみます。ジロの影響かもしれませんが、イタリア人の多くはロードバイクを楽しみたがるようです」

◇         ◇

 厳しい条件だからこそ、顧客の信頼を得ているサービスです。ウェブサイトに掲載されている情報量も豊富なので、イタリアを訪れる時は参考にしてみてください。

文 マルコ・ファヴァロ

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

イタリア語講師。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会で、自転車にまつわるイタリア語講座「In Bici」(インビーチ)を担当する。サイクルジャージブランド「カペルミュール」のモデルや、Jスポーツへ「ジロ・デ・イタリア」の情報提供なども行なう。東京都在住。ブログ「チクリスタ・イン・ジャッポーネ

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