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“自転車革命都市”ロンドン便り<26>発電するサイクルレーンに世界中が注目 オランダ・アムステルダムの「ソーラーロード」

by 青木陽子 / Yoko AOKI
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 前回はツール・ド・フランスのグラン・デパール地として盛り上がるユトレヒトの様子をレポートしました。その帰り道に通ったアムステルダム郊外に、世界的に有名になったサイクルレーンがあるというので、見てきました。その名も「ソーラーロード」(太陽の道)です。

オランダ、アムステルダム郊外に誕生した太陽光発電パネルを敷きこんだ「ソーラーロード」 photo / SolaRoadオランダ、アムステルダム郊外に誕生した太陽光発電パネルを敷きこんだ「ソーラーロード」 photo / SolaRoad

“エコの象徴”を合体

干拓地アムステルダム。サイクルレーンはそのまま渡し船の乗り場につながっていて、対岸からはまたサイクルレーンがのびている。渡し船は無料干拓地アムステルダム。サイクルレーンはそのまま渡し船の乗り場につながっていて、対岸からはまたサイクルレーンがのびている。渡し船は無料

 アムステルダム中央駅北口で折り畳み自転車「ブロンプトン」をさっと組み立て、工業地帯を通り、運河を渡し船で越えて片道16km。その道のりの9割以上は車道から隔離されたサイクルレーンが敷設されていて、安心&快適きわまりなし。

 ユトレヒト郊外のサイクルレーンでは、なんと自転車に乗ったままゴミを投げ入れやすいように、斜めになったクズカゴを目撃しました。さらに朝晩は自転車の通行量がすさまじいユトレヒト駅前のサイクルレーンは、車道顔負けの幅員で、左折と直進などを振り分ける複数レーンになっていて、もう舌を巻きっぱなしのオランダ自転車事情。

ユトレヒト郊外のサイクリングロードで見つけた、自転車乗り用クズカゴ。走りながら狙って投げ込みやすい角度になっている!ユトレヒト郊外のサイクリングロードで見つけた、自転車乗り用クズカゴ。走りながら狙って投げ込みやすい角度になっている!
朝晩のラッシュアワーには川のように自転車が流れる、ユトレヒト駅近くのサイクルレーン。右左折などで複数のレーンに分かれている朝晩のラッシュアワーには川のように自転車が流れる、ユトレヒト駅近くのサイクルレーン。右左折などで複数のレーンに分かれている

 けれど今回向かったアムステルダムのソーラーロードは、またひとひねり効いているのです。ただでさえエコの象徴でもあるサイクリングレーンに太陽光発電のソーラーパネルを敷き詰めて発電もしてしまおうというものです。

 2014年11月に工事が完成し、ハフィントン・ポスト英紙ガーディアンが伝えたことで世界中の注目を集めました。そして半年後のこの春、ここのパネルが期待以上の発電量を達成したということが再び世界中で報道されたのです。

ついに見つけた! ソーラーロード。興奮してしゃがんで写真を撮っていると、地元の人たちが何の写真を撮っているの?と怪訝そうな顔をする。ソーラーパネルが敷かれていることを知らない人も多そうだついに見つけた! ソーラーロード。興奮してしゃがんで写真を撮っていると、地元の人たちが何の写真を撮っているの?と怪訝そうな顔をする。ソーラーパネルが敷かれていることを知らない人も多そうだ

 北からの強烈な向かい風と闘いながら、先行者がいればそのうしろにちゃっかりトレイン状態でつかせてもらったりして辿り着いたのは、伝統的なシルエットの風車も見えるのどかなベッドタウン。幹線沿いのなんてことのないサイクリングレーンの表面が、そこだけソーラーパネルの青みのある色になっていました!

電動スクーターで地球を2.5周できる発電量

 発表によると、約70mの区間に敷かれたこのパネルは、過去6カ月の間におよそ3000kWhの発電量を生み出したとか。これは単身世帯の年間の使用量に匹敵する、あるいは電動スクーターなら地球を2.5周できるもので、関係者の期待を上回る成果だったのだそうです。曇りや雨の日が多い冬のオランダで、これはなかなか上出来なのでは。地球上の道路が次々にソーラーパネル敷きになったら、石油がいらなくなるのではと夢が膨らみます。

 もっとも、太陽光発電の専門家に聞いたところ、「うーん、道路に敷くのは悪いアイデアではないけれど、優先順位としては低いかな」とのことで、現実的にはより効率のいい建物の屋根などへの設置を優先すべきとのことでした。けれど世界の、とくに都市部では1~2割とかなりの面積を使っている道路がエネルギーを生むポテンシャルを持っているというのはうれしい実験結果です。

向かって左側のガラスタイルの下には照度計など実験のための計測機器が入っているらしい向かって左側のガラスタイルの下には照度計など実験のための計測機器が入っているらしい
ソーラーパネルの接写。割れても鋭利なかけらの出ない安全ガラスで覆われ、すべり止めの透明な凸凹が接着されているソーラーパネルの接写。割れても鋭利なかけらの出ない安全ガラスで覆われ、すべり止めの透明な凸凹が接着されている

 ちなみにその専門家氏いわく、世界中のいまの消費電力はドイツと同じ広さのソーラーパネルで賄えるのだそう。電力は保管と輸送がまだ難しいのでこれからですが、もしもアフリカの砂漠にソーラーパネルを置いたらどんなことになるのだろうと思ったりもします。アフリカは電気使い放題、というのは悪くない想像です。経済の南北格差などすぐに解消…なんてどうでしょう?

ゴッホの名画をモチーフにした光るレーンも

 思わず夢が膨らみすぎて脱線しました。オランダは自国の自転車文化とサイクルレーンにとても誇りをもっていて、南東部の街アイントホーフェンでは、ゴッホの名作「星降る夜」をモチーフにした、夜に輝くサイクルレーンも登場しています。

アインドホーフェンにこの冬誕生した「ゴッホの自転車道」。ゴッホの名作「星降る夜」をモチーフにしているという。photo / Studio Roosegaardeアインドホーフェンにこの冬誕生した「ゴッホの自転車道」。ゴッホの名作「星降る夜」をモチーフにしているという。photo / Studio Roosegaarde

 この「ゴッホの自転車道」は、より人にやさしい、光やエネルギーを活用した新しい道路のあり方を模索するプロジェクトの一環なのだとか。先のソーラーロードといい、交通や社会の未来を見据えるプロジェクトで自転車が主役になるのは当然だとも思えるし、果敢に攻めるオランダならではの素敵な話だとも思いました。

女性が横に並んだ男性に手をかけて楽をしている様子。これで15~20km/hで走る女性が横に並んだ男性に手をかけて楽をしている様子。これで15~20km/hで走る

 そしてこの冬のアムステルダムレポートの回でも触れましたが、手をつないだまま自転車で仲良さそうに並走しているカップルの多いこと!

 手をつなぐパターンのほかに、女性が横に並んだ男性の上腕や肩に手をかけて楽をしていたり、お母さんが子どもの背中をずっと押して並走していたり(どちらもなかなか速い)という光景が見られました。コースターブレーキの自転車が猛烈にほしい今日このごろです。

青木陽子青木陽子(あおき・ようこ)

ロンドン在住フリー編集者・ジャーナリスト。自動車専門誌「NAVI」、女性ファッション誌などを経て独立起業、日本の女性サイトの草分けである「cafeglobe.com」を創設し、編集長をつとめた。拠点とするロンドンで、「運転好きだけれど気候変動が心配」という動機から1999年に自転車通勤以来のスポーツ自転車をスタート。現在11台の自転車を所有する。ブログ「Blue Room」を更新中。

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