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つれづれイタリア~ノ<46>派手なパフォーマンスや“大暴れ” サイクルロードレースの応援スタイルを国別チェック

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ローマのシンボルともいえるスペイン広場ローマのシンボルともいえるスペイン広場

 イタリア・ローマで、イタリア人にとってショッキングな出来事がありました。2月19日に開催されたサッカーUEFAヨーロッパリーグのローマ対フェイエノールト(オランダ)戦を観戦するために、数千人のオランダサポーターがローマに入りました。そして、懸念されていたことが発生しました。一部のサポーターが泥酔した状態で、ローマのシンボルであるスペイン広場で大暴れ。その結果、バロックの彫刻家ベルニーニが作った「舟の噴水」が破損させられました。17世紀のバロック作品の中にゴミが散乱し、それを見た多くの市民が怒りの声を上げました。イタリア文化大臣もオランダ政府に対し、公式に抗議しました。

 落書きの多いイタリアでも、地元の若者たちは美術的価値のある建物や彫刻に指一本も触れません。しかし、イタリアを訪れる一部の外国人観光客が最低限のマナーすら忘れ、トレヴィの泉でおしっこをしたり、彫刻の一部を剥がしたり、スペイン広場で酔っぱらって警察が出動するほどの騒ぎを起こしたります。残念ながら日本人も例外ではありません。

 自転車競技においても一部の観客の行動がエスカレートし、トラブルに繋がったことがあります。今回は、ヨーロッパの応援スタイルについて紹介します。イタリア、フランス、ベルギーとオランダ、そして最後に日本の話もします。

クレーンで吊った自転車にまたがって応援(ツール・ド・フランス2014)<砂田弓弦撮影>クレーンで吊った自転車にまたがって応援(ツール・ド・フランス2014)<砂田弓弦撮影>

選手を「触りたがる」イタリア人

 イタリアでは多くのレースが行われますが、最高峰のジロ・デ・イタリアを見ても、イタリア人の応援スタイルは比較的に地味です。実はジロが行われている5月は、ほとんどの人が仕事に追われたり、学校に通ったりしています。そのため、仮装や派手なパフォーマンスをするための準備期間が足りず、おとなしくレースを見守ります。5月だとイタリアはまだ寒いので、過剰な露出もあまり見られません。

 イタリア人はとにかく叫ぶのが好きで、誰にでも応援の言葉をかけます。アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)は2011年にジロに出場した時に「イタリア人の温かい応援に驚いた」と国営テレビのインタビューに答えていました。

逃げ集団のなかでラルプ・デュエズを上るフランチェスコマヌエル・ボンジョルノ(ツール・ド・フランス2014)<砂田弓弦撮影>逃げ集団のなかでラルプ・デュエズを上るフランチェスコマヌエル・ボンジョルノ(ツール・ド・フランス2014)<砂田弓弦撮影>

 ただし、イタリア人には大きな欠点があります。ご利益があるわけでもないのに、選手に触りたがります。そのせいで昨年のジロ第20ステージ、最も厳しい山岳であるモンテ・ゾンコランで事件が起きました。逃げ集団に入り、ステージ優勝を狙っていたフランチェスコマヌエル・ボンジョルノ(イタリア、チーム・バルディアーニCSF)が観客から背中を押され、前の選手と接触し、バランスを失ってしまいました。結果としてステージ優勝は水の泡となりました。

 イタリアの各メディアは、この観客のいきすぎた行為を非難し、全国的に大きな論争が起こりました。

ツールの応援はバラエティ豊かな「お祭り」

マチュー・ラダニュス(LADAGNOUS)の名前を上半身に書いたファンたち(ツール・ド・フランス2014)<砂田弓弦撮影>マチュー・ラダニュス(LADAGNOUS)の名前を上半身に書いたファンたち(ツール・ド・フランス2014)<砂田弓弦撮影>

 フランス人は比較的に礼儀正しい人が多いです。その上、応援スタイルはとてもユニークで楽しい。お祭りそのものです。パフォーマンスあり、仮装あり、女装あり、露出狂あり、バラエティに富んだ個性的な観客が多い。7月はバカンスの時期に当たるため、人々は面白いことをするために十分時間が取れます。そして気温が高いため、肌を大胆に露出しても風邪を引く心配もありません。

 こういった観客たちの熱気はツール・ド・フランスの華の一つです。派手な観客のおかげで、だらだらと続くステージが楽しく見られます。残念ながら「エル・ディアブロ」(日本では通称“悪魔おじさん”)と呼ばれる名物のドイツ人パーフォーマーは引退を宣言しました。もう見られないと思うと、悲しくなります。

サイクルロードレースの名物パフォーマー“悪魔おじさん”<砂田弓弦撮影>サイクルロードレースの名物パフォーマー“悪魔おじさん”<砂田弓弦撮影>

ベルギー人とオランダ人の大暴れに注意

 うん…ここから少し事情が変わります。ベルギー人とオランダ人は、とても知的な人が多いですが、スポーツ観戦になると多くの人が一変します。酒を大量に飲み、暴れます。だからこの2つの国の印象はあまりよくありません。とにかくたくさん飲むので、警察が出動しても静止が効きません。

悔しそうに2位でゴールするフィリッポ・ポッツァート<砂田弓弦撮影>悔しそうに2位でゴールするフィリッポ・ポッツァート<砂田弓弦撮影>

 2009年のパリ・ルーベに出場したフィリッポ・ポッツァート(イタリア、当時ランプレ・N.G.C)が被害にあいました。先頭を走っていたトム・ボーネン(ベルギー、当時クイックステップ・イネルゲティック)を10秒差で追っていたところ、ベルギーの国旗をもっていたファンたちが、ポッツァートに対し妨害行動を行いました。道に飛び出したり、唾をはいたり、顔にビールをかけたり、ブーイングを浴びせたり、さまざまな妨害行動に出ました。ポッツァートの話によると、みんな酔っぱらっていたそうです。

 ツール・ド・フランス有数の名物峠であるラルプ・デュエズには、「オランダ人のカーブ」と呼ばれる“魔のカーブ”が出現します。何百人ものオランダ人サポーターが、オレンジ色のシャツやカツラをかぶり、通過する選手たちに容赦なく襲いかかります。接触ぎりぎりの距離まで近づき、選手たちに罵声を飛ばします。我慢できなくなったトマ・ヴォクレール(フランス、チーム ヨーロッパカー)が、脚を止め観客にきつい言葉を返したこともあります。ヴォクレールは相当怒っていたそうです。

日本にも礼儀に欠けるファンが…

2014ツール・ド・フランス さいたまクリテリウムで沿道に詰めかけた観衆。多くの海外選手がマナーのよさを称賛した<砂田弓弦撮影>2014ツール・ド・フランス さいたまクリテリウムで沿道に詰めかけた観衆。多くの海外選手がマナーのよさを称賛した<砂田弓弦撮影>

 「日本人が一番マナーがいい」と、日本を訪れる外国人選手たちが口をそろえて言っています。しかし昨年、さいたま新都心で行われたツール・ド・フランス さいたまクリテリウムの最中に、ストーカーまがいの行動に出るファンをたくさん目撃しました。選手たちが泊まっていたホテルの各フロアに一部のファンがずっと居座り、スタッフや他の宿泊客が通るたびに「(ヴィンチェンツォ・)ニバリの部屋はどこですか?」「(クリストファー・)フルームの部屋を教えて!」と聞いて回っていました。私にもこの質問が飛んできました。もちろん、教えるわけにはいきません。

 ジャージやボトル、さらには私が持っていた関係者パスまで、子供のようにねだってきて、かなりしつこくつきまとわれました。うん、困ったものです。

 でも、日本にも礼儀に欠ける人がいるとわかったので、ほっとしました。「日本も普通の国だ」と。(笑)

 このコラムを読んでいる方のほとんどは、良識のある人だと思います。失礼な行為をしている人を見かけたら、優しく注意してあげてください。かなり効きます。みんなで楽しい観戦の雰囲気を作りましょう。

文 マルコ・ファヴァロ

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

イタリア語講師。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会で、自転車にまつわるイタリア語講座「In Bici」(インビーチ)を担当する。サイクルジャージブランド「カペルミュール」のモデルや、Jスポーツへ「ジロ・デ・イタリア」の情報提供なども行なう。東京都在住。ブログ「チクリスタ・イン・ジャッポーネ

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