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“自転車革命都市”ロンドン便り<17>路上でもっと目立ちたい! ロンドン生まれの安全策「ブレイズ」が放つ自転車型のレーザー光

by 青木陽子 / Yoko AOKI
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レーザー光で自分の進路に自転車の絵を描き出す「ブレイズ レーザーライト」。数秒後にはここに自転車が来ますよ、というメッセージ ©Blazeレーザー光で自分の進路に自転車の絵を描き出す「ブレイズ レーザーライト」。数秒後にはここに自転車が来ますよ、というメッセージ ©Blaze

 本格的なサイクルレーンの建設が決まるなど、自転車フレンドリーな都市に大変身中のロンドン。とはいえ市内の交通事情は相変わらず劣悪です。クルマ同士が「椅子取りゲームですか?」という勢いでスペースを奪い合っている中、常に事故に巻き込まれる可能性を考え、神経を尖らせてペダルを踏む毎日です。夜のライドでは、かつて東京で自転車通勤をしていたときと同じように、フロントライト2つにリアライト2つ、ときには3つ…と“走るクリスマスツリー”状態です。それでも「怖い、もっと目立ちたい」と感じます。

視線を横切った緑色の自転車の絵

 いつも通りクリスマスツリー状態で走っていたある晩、さっと視界の端を緑色の光が横切りました。とっさに二度見すると、路面を自転車の絵が滑っていくのです。光の発信源は自転車。ハハァなんどか自転車専門誌で紹介されていたアレだな。

ブレイズCEOのエミリー・ブルックさん。物理を学ぶためにオックスフォード大学に進んだが、どうしてもプロダクトデザインにかかわりたくてブライトン大学に編入、その最後のプロジェクトとしてブレイズ レーザーライトを作ったブレイズCEOのエミリー・ブルックさん。物理を学ぶためにオックスフォード大学に進んだが、どうしてもプロダクトデザインにかかわりたくてブライトン大学に編入、その最後のプロジェクトとしてブレイズ レーザーライトを作った

 緑色のレーザー光で自転車の形を路面に描き出す自転車用ライト「ブレイズ(Blaze) レーザーライト」は、想像していたよりだいぶ目立つ光加減。「これは安全度アップにいいかもしれない」と思い、メーカーサイトに試用を申し込むメールを送ってみました。するとその日のうちに「いつでも取りに来て!」と返事が。しかもメールの送信者は女性の名前で、「CEO」とある。これはさらに「面白いかも」と、オフィスを訪問してきました。場所はロンドンのおしゃれエリア、イーストエンドの近くです。

 開発したのは、CEOで当時まだ大学生だったエミリー・ブルックさん。プロダクトデザインの卒業課題として、自らも毎日乗っていた自転車の安全性に貢献する製品を作りたいと、レーザー光で進路に自転車を映しだすことを考えついたのだそう。

 若い起業家向けのインキュベーションプログラムのサポートも得て、製品の仕様がおおむねまとまったところでクラウドファンディング「キックスターター」にページを掲載して製品化のための資金調達。するとたった5日で2万5000ポンド(およそ450万円)が集まったのだそうです。

 その金額もさりながら、この反応のよさが後押しとなって、アップル製品の生産も手がける中国の「PCHインターナショナル」で支援を受けつつの生産が決定しました。発売から1年で、すでに世界47カ国に発送したのだとか。

ブレイズのオフィスは、おしゃれなウィンタースポーツブランドの中に間借りをしている。すでに専任スタッフが6人。もちろん全員自転車が好きで、自転車通勤をしているブレイズのオフィスは、おしゃれなウィンタースポーツブランドの中に間借りをしている。すでに専任スタッフが6人。もちろん全員自転車が好きで、自転車通勤をしている
オフィスにあったブレイズ開発中のプロトタイプや手作りの販促材料。3Dプリンタなどのおかげで、大きな資金を持たない小さな会社でもハードウェア製品を開発しやすくなったというオフィスにあったブレイズ開発中のプロトタイプや手作りの販促材料。3Dプリンタなどのおかげで、大きな資金を持たない小さな会社でもハードウェア製品を開発しやすくなったという

歩行者がハッ、クルマのドライバーがジロジロ

航空機用アルミ合金を使った筐体は1m防水でトラックに轢かれても壊れないほどの強さ。レーザーと100/300ルーメンの白色LEDを組み合わせて使える。使用6万時間の耐久性も誇る航空機用アルミ合金を使った筐体は1m防水でトラックに轢かれても壊れないほどの強さ。レーザーと100/300ルーメンの白色LEDを組み合わせて使える。使用6万時間の耐久性も誇る

 iPhoneなどを想わせる立派な黒い箱の中に収まっているブレイズは、手に取るとけっこうな重量感あり(182g)。マット加工されたアルミの筐体はまさにMacBook的。ハンドルバーに取り付ける台座もステンレスで、自転車ライトとは思えない高級な仕上がりになっています。「レーザーのシステムは安くは作れないので、ものすごく質の高い商品にするべく頑張りました」とエミリーさん。

 着脱しやすいブラケットに感心しながらハンドルバーに取り付け、日が暮れるのを待って道路に飛び出してみました。レーザーはこれがとても明るい緑色でイイ! レーザーとともに備わる白色光のLEDライトも100ルーメンあり、弱い設定時でも力強く光ります。

たかがライトと思うことなかれ。箱から出てきたのは、ハンドルバーに固定するブラケットまで高い質感のキット。充電はMacBookのようにマグネットで本体にくっつくUSBケーブルで ©Blazeたかがライトと思うことなかれ。箱から出てきたのは、ハンドルバーに固定するブラケットまで高い質感のキット。充電はMacBookのようにマグネットで本体にくっつくUSBケーブルで ©Blaze
実際にハンドルバーにつけてみた景色。自分のアバター的な緑の自転車が、自分より先に交差点に入っていく。とくに出会い頭の事故が多い裏道の交差点などでは効果が期待できそうだ実際にハンドルバーにつけてみた景色。自分のアバター的な緑の自転車が、自分より先に交差点に入っていく。とくに出会い頭の事故が多い裏道の交差点などでは効果が期待できそうだ

 セット後はマニュアル通り、自分の6mくらい先の路面に自転車のマークが描き出されるようにライトの角度を調整。路面の絵は四方八方から見えるようで、歩道を行く人が、光がどこから来ているのか疑問に思ってキョロキョロしているのがちょっと面白い。光はここからですよー。信号待ちでは、絵に気づいた真横のクルマのドライバーがこちらをジロジロ。しめしめ、見られてる見られてる。

撮影をしていたら、通りかかった女性が「あらかわいい! なぁにこれ?」と。自転車のライトですと説明をしたら、楽しいわねーとニコニコ。自転車がきっかけで会話がはずむのは嬉しい撮影をしていたら、通りかかった女性が「あらかわいい! なぁにこれ?」と。自転車のライトですと説明をしたら、楽しいわねーとニコニコ。自転車がきっかけで会話がはずむのは嬉しい

 その後、2週間ほどブレイズをつけて走ってみました。実感として、自転車がいることに気づかず進路変更してくるクルマに気づいてもらえるチャンスがたしかに増えそうだし、裏通りの十字路で一時停止無視で突っ込んでくるクルマにも効果があるのではないかという気がします。もちろん万能ではないですが、かかっているのは命なので、少しでも効果があるならそれはありがたいと思います。

 意外な収穫は、音がしないからと振り向き確認もせずに歩道から車道に出て横切り始める歩行者にかなりの効果があったことです。みなさん顔を向けなくても足元あたりは見ているようで、歩道から踏みだそうとしたところに緑色の絵が動いてくるのを見てハッと固まる、ということが何度かありました。

 なにより「わーこれ何!? かわいい!」と指をさして笑顔になる歩行者が多いのがうれしいというのが正直な感想でもあります。信号待ちで一緒になった隣のサイクリストとこれがきっかけで会話がはずんだりもしました。

◇         ◇

 学生起業、クラウドファンディング、在庫リスクを減らせるオンライン通販で世界中に直販、しかも世界的に再評価・再注目されている自転車のためのグッズ――いまイギリスなどでは自転車まわりの起業や新商品がひっきりなしに出てきているのですが、その中でもブレイズは「イマドキ」を結集させたアイテムと言えそうです。日本でも自転車通勤などに、いかがでしょうか。

青木陽子青木陽子(あおき・ようこ)

ロンドン在住フリー編集者・ジャーナリスト。自動車専門誌「NAVI」、女性ファッション誌などを経て独立起業、日本の女性サイトの草分けである「cafeglobe.com」を創設し、編集長をつとめた。拠点とするロンドンで、「運転好きだけれど気候変動が心配」という動機から1999年に自転車通勤以来のスポーツ自転車をスタート。現在11台の自転車を所有する。ブログ「Blue Room」を更新中。

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