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つれづれイタリア~ノ<45>“甘い誘惑”に勝てますか? 2月のイタリアはスイーツの季節

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 2月にイタリアを訪れると、甘いものを口にすることが多いです。日本では14日のバレンタインデーにちなんでチョコをよく食べますが、イタリアではチョコをプレゼントする習慣はあまりないので、この時期のチョコと言えばバーで飲む濃厚なホットココアが一般的です。2月は「カーニバル」(謝肉祭)に当たり、この時期にイタリアでよく食べるのは揚げ菓子。今回はカーニバルのスイーツと、甘いものにまつわるプロレーサーの苦難についてのお話です。

イタリアで2月に行われる「カーニバル」で定番の、もちっとした揚げ菓子「フリッテッレ」 ©GialloZafferanoイタリアで2月に行われる「カーニバル」で定番の、もちっとした揚げ菓子「フリッテッレ」 ©GialloZafferano

イタリアの“スイーツシーズン”

 スイーツ王国のフランスと比べて、イタリアのスイーツは割とシンプル。それは、豊富に採れる果物にイタリア人が甘さを求めてきたからです。1960年代まではスイーツといえば、おばあちゃんが作るイチジクやさくらんぼのジャム、パサパサのタルトとカリカリのビスケットぐらいでした。保存できるものばかりで、ちびちびと食べるのが主流です。生菓子は一年に数回しか食べない高価なものでした。

 1970年代に入ると、冷蔵庫の普及とともに一般の市民にまでフレッシュなスイーツが浸透し、あの名菓子「ティラミス」もこの時に誕生しました。今では一年中おいしいスイーツを楽しめますが、伝統的に甘いものを食べる時期が3つあります。2月のカーニバル、4月のイースター、そしてクリスマスを含む年末年始の3つです。

ヴェネツィアのカーニバルの様子 ©Enitヴェネツィアのカーニバルの様子 ©Enit

 2月はちょうどカーニバルの時期に当たります。クリスマスが終わり、年末年始の食べ過ぎでお腹にたまった脂肪を処理すべき時期であるにも関わらず、カーニバルになると、またカロリーの高い食べ物の波が襲来します。

 日本人からするとカーニバルと言えば、ブラジルで裸同然の格好で情熱的に踊る女性というイメージが強いですが、イタリアでは真冬ですので、きれいな肉体を披露するかわりに、きれいな衣装を身にまとい街を歩き回るという習慣があります。各地でさまざまな催しが行われ、街がにぎわいます。お祭り騒ぎは2週間ぐらい続きます。

2月のイタリアで行われるカーニバルでは、きれいな衣装で街を歩き回る ©Enit2月のイタリアで行われるカーニバルでは、きれいな衣装で街を歩き回る ©Enit

 カーニバルはもともと魔除けの儀式として始まり、その後、キリスト教と混じり合うことで現在のような習慣になりました。イエスキリストの復活祭(イースター)が近づくと、肉を食べることが一カ月以上禁じられていたので、その前に思いきり騒いだり、食べたり、遊んだりする祭りになったのです。実際に「カーニバル」(carnevale)という単語には「カルネ」(carne)という言葉が入っています。その意味はまさに「肉」。時によって「肉体が喜ぶ行為」も含みます。(笑)

カーニバルの定番スイーツ

 イタリア各州では独自のスイーツ文化が生まれましたが、カーニバルでもっとも代表的なものが2つあります。フリッテッレとキャッキエレ。どちらもカロリーの高い揚げ菓子です。

ボール状のもちっとした揚げ菓子「フリッテッレ」 ©GialloZafferanoボール状のもちっとした揚げ菓子「フリッテッレ」 ©GialloZafferano
パイ生地のような揚げ菓子「キャッキエレ」 ©GialloZafferanoパイ生地のような揚げ菓子「キャッキエレ」 ©GialloZafferano

 フリッテッレとは、見た目は沖縄のサーターアンダギーに近いものですが、パサパサではなく、もちっとしています。特にヴェネツィアで売られるフリッテッレはそれほど甘くなく、何個も食べられる“危険な”スイーツです。キャッキエレとは、揚げたパイ生地のようなスイーツ。味はさっぱりしているので次から次へと口に運べます。「キャッキエレ」はイタリア語で「おしゃべり」を意味します。口が止まらないためでしょうか。

イタリア人選手が好むパニーノとタルト

レース前にパニーノを用意するチームスタッフ<砂田弓弦撮影>レース前にパニーノを用意するチームスタッフ<砂田弓弦撮影>

 スポーツをやっていて、スイーツが嫌いな人は少ないでしょう。お菓子に含まれる糖分はスポーツの重要なエネルギー源であり、特にロードレースにおいてはレース中に効率よく甘いものを食べないと、一気にエネルギー切れとなります。

 現在、プロのチームではスポンサーが提供するサプリメントが主流になりつつありますが、イタリア人選手たちはレース中に小さなパニーノ(サンドイッチ)やタルトを好んで食べています。実際に選手に渡されるサコッシュの中に、タルトやバナナのほか、アプリコットやイチゴジャム、はちみつ、またはヌテッラ(パンに塗るチョコクリーム)の小さなパニーノが2、3個入っています。好みによってサラミやハムのパニーノも。

 イタリア人は人工的な味にすぐ飽きてしまうので、サプリメント以外にもパニーノとタルトが必要不可欠。ツール・ド・フランス2014総合優勝のヴィンチェンツォ・ニバリ選手(アスタナ プロチーム)は酸味の効いたジャムのパニーノがお好みのようです。

選手を襲うスイーツの誘惑

レース中は甘いものなどでエネルギーを補給する(ジロ・デ・イタリア2002)<砂田弓弦撮影>レース中は甘いものなどでエネルギーを補給する(ジロ・デ・イタリア2002)<砂田弓弦撮影>

 レース期間中でも、スイーツが禁止される日がやってきます。それは、グランツール開催中の休息日。喜ぶべき中休みは、実は多くの選手にとって過酷な我慢の日なのです。レース中にほぼ毎日5000~7000kcalを消費する選手たちが、いきなり半分以下の2000~2500kcalに戻る休息日でも、筋肉はエネルギーを欲求し続けます。そのためスイーツや炭水化物を取りすぎる危険性があり、食べ過ぎてしまえば体重が一気に増えます。エネルギーの過剰摂取で肝機能も低下するので、パフォーマンスに支障が出かねません。

 2年前から注射による栄養分の摂取が禁止されたため、食事コントロールによる疲労回復が重要になりました。そのため選手たちが食べ過ぎないように、各チームのスタッフやドクターは神経を尖らせています。

 休息日の食卓からはあらゆるスイーツだけでなく、炭水化物と塩からいものも一気に減ります。その代わりに、サラダが大量に出ます。その後、選手たちは空腹に耐えるため、部屋に戻りずっと休んでいます。ストイックな生活ですね。プロにならなくてよかったです(笑)。

 さて、今日は久しぶりにフリッテッレを作りますよ。

追悼

 イタリアを代表するスイーツの一つ「ヌテッラ」の生みの親、ミケーレ・フェッレーロ氏が2月14日に亡くなりました。89歳でした。ミケーレさんは自転車競技を愛し、フェレーロ社は古くからジロ・デ・イタリアを支えています。「エスタテ」という紅茶ブランドはフェッレーロ社のものです。
 ご冥福を祈ります。

文 マルコ・ファヴァロ

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

イタリア語講師。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会で、自転車にまつわるイタリア語講座「In Bici」(インビーチ)を担当する。サイクルジャージブランド「カペルミュール」のモデルや、Jスポーツへ「ジロ・デ・イタリア」の情報提供なども行なう。東京都在住。ブログ「チクリスタ・イン・ジャッポーネ

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