スマートフォン版はこちら

サイクリスト

title banner

つれづれイタリア~ノ<44>自転車でゲレンデを熱く走ろう 絶景を望む雪山のファットバイクレンタルサービス

  • 一覧

 イタリアでは、自転車の楽しみ方がさらに進化しています。折り畳みバイクの再発見や、クラシックバイクイベントのほかにも、今年は「ビチ・グラッセ」、つまりファットバイクが各メディアの注目を集めています。いや、すでにブームになっているといっても過言ではありません。ことの始まりは世界自然遺産、ドロミテ山塊からでした。

眼下に広がる絶景を眺めながら、ゲレンデをファットバイクで駆けまわる ©Giacomo Pompanin眼下に広がる絶景を眺めながら、ゲレンデをファットバイクで駆けまわる ©Giacomo Pompanin

美しいリゾートのゲレンデ

 イタリアが誇るドロミテの美しい山々の真ん中に「アルプスの女王」と呼ばれるイタリア屈指の山岳リゾートがあります。コルティナ・ダンペッツォ市です。日本でいうと、軽井沢のような場所です。冬になるとウィンタースポーツを楽しむ観光客や、最新ファッションを披露したいセレブと彼らを狙うパパラッチでごった返し、夏には自転車や登山、トレッキングを楽しむ人であふれます。ジロ・デ・イタリアの山岳ステージにもよく登場します。

 人気の秘訣は自然と景色の美しさ、整備された道路とゲレンデ、そしておいしい料理。コルティナ・ダンペッツォという街自体が美しく、苗場や越後湯沢で見られるような乱開発はないので絶景を遮る高層ビルは一切ありません。高級ブティックと高級レストランは主張しすぎず、アルプスの景観に静かに溶け込んでいます。

ファルツァレーゴ峠のホテル「リフージョ・コル・ガッリーナ」。夏はまた違った風景が広がるファルツァレーゴ峠のホテル「リフージョ・コル・ガッリーナ」。夏はまた違った風景が広がる

 さて、コルティナ・ダンペッツォの西側にファルツァレーゴ峠という、人気のゲレンデがあります。今年はここの小さなホテル「リフージョ・コル・ガッリーナ」でファットバイクのレンタルサービスがブームになっています。

ファットバイクなら雪のなかでも快適に走れる ©Giacomo Pompaninファットバイクなら雪のなかでも快適に走れる ©Giacomo Pompanin

 ファットバイクとは特殊な太いタイヤを装備し、砂地や雪山を快適に走るために開発された、マウンテンバイクのような自転車です。タイヤの幅は3.7~5インチ(9~12cm)。80年代にアメリカで開発されましたが、2000年代に入ると、南極や砂漠を自転車で走る企画が次から次へ実施され、認知度が上がりました。シクロクロスバイクほどスピードは出ないですが、シクロクロスバイクでは走れない悪路を楽に走れます。ファットバイクはイタリア語で「ビチ・グラッセ」と言います。ビチは自転車、グラッセは太いという意味です。

スキー客はゲレンデを駆ける自転車にびっくり

ホテル周辺は標高2000mを超える ©Giacomo Pompaninホテル周辺は標高2000mを超える ©Giacomo Pompanin

 標高2055mにあるリフージョ・コル・ガッリーナホテルにたどり着くと、バイクをレンタルしてその周辺を走り回ることができます。アップダウンはさほどありません。レンタルしなくても自転車ごとチェアリフトに乗せて、ダウンヒルを楽しむこともできます。スタートは標高2200mから。専用コースが2つ完備され、スキー客と接触する恐れはないようです。2014~15年冬シーズンのレンタル料金は半日で25ユーロ、全日だと35ユーロです。

 ホテルのオーナーであるラニエロ・カンピゴットさんに、このサービスが誕生したきっかけについて聞いてみました。実は、彼も自転車の愛好家であることがわかりました。

――どのようにこのサービスを思いつきましたか

 「そもそも自転車が大好きなのですが、冬になると雪山でトレーニングができないので、ホテルの一角でエルゴバイク(エアロバイク)を使っていました。しかし『ドロミテの素晴らしい景色を目の前にして、外で走れないなんて!』と思い、ヴェネツィアの近くで自転車ショップを経営する友達、アンドレア・サヴェッツォンさんに悩みを打ち明けました。そこで、ファットバイクの存在を知りました」

 「さっそくトレック製のFarley 8というモデルを借りて、息子のケヴィン(14歳)と雪の中で試してみました。あまりにも楽しくて、この楽しさをみんなにわかって欲しいと思いました。そこで、このサービスを思いつきました。ドロミテの絶景はやはり目で堪能すべきです。トレーニングが終わって、おいしい山の料理を食べれば、なおさら楽しいですよ」

――スキー客の反応はどうでしたか

 「反応は面白かったです。衝突の危険性を避けるためスキーコースと分けたのですが、隣のコースでぐいぐいと上り下りする自転車を見て驚いていました。すぐに自転車をレンタルするスキー客も現れました。それに、さまざまな相乗効果も生まれました。登山靴を専門にしているブランド『DIEMME』が興味を持ってくれて、ファットバイク用に防水機能のある新しいシューズの開発に乗り出しています」

©Giacomo Pompanin©Giacomo Pompanin
©Giacomo Pompanin©Giacomo Pompanin

――現在サービスを利用しているお客さんはどんな人ですか

 「サービスを始めたばかりですので、ほとんどイタリア人です。特にヴェネト州出身の人が多いです。この地域は自転車愛好家が多いのですが、冬には平地でも道が凍結し、練習できない日が多いからです。他に、トレーニング面での利点を求める人もいます。標高2000mという環境でのトレーニングは、酸素量が少ないため、2時間の練習で5時間以上の練習効果があると聞いています。ホテルの近くを周遊できる500mのコースも設定しました。アップダウンが多く、かなりスリリングです」

――ゲレンデまでは、どうやってたどり着きますか

 「サービスを始める前にチェアリフトを運営する会社と話し合い、自転車を装着できる専用装備を開発してもらいました。スキーパスを持っている人だと追加料金なしで運べます。もちろん、がんばれば自分の脚力でも上れます。すごくいいトレーニングになりますよ」

バイクを専用のリフトに乗せて上ることができる ©Giacomo Pompaninバイクを専用のリフトに乗せて上ることができる ©Giacomo Pompanin

――ファットバイクを使ったイベントはありますか

 「あります。ナイトサイクリングやファットバイクレースも行いますし、これからもっと可能性が広がると思います」

――レンタルサービスはいつまで行いますか

 「冬に関してはシーズンが終るまでです。夏にはチェアリフトと同時に、レンタルサービスも再開します。夏のドロミテ山塊はとても美しいからです。ファットバイクでダウンヒルを楽しみたい人は、ぜひ利用してください」

広がるファットバイクレンタル

 リフージョ・コル・ガッリーナの成功を受けて、他のゲレンデも次から次へサービスを開始しています。把握している限りでは、現在ファットバイクをレンタルできるゲレンデは下記の州にわたります。

ヴァルダオスタ州:モンブランのふもとにあるクールマヨール市
ピエモンテ州:トリーノ市(2006年冬季オリンピック開催地)
ロンバルディア州:リヴィーニョ市など
トレンティーノ・アルト・アディジェ州:レヴィコ・テルメ市、ラヴァローネ、フォルガリア地区など
ヴェネト州:トレヴィーゾ市、コルティーナ・ダンペッツォ市、アジアーゴ市など

 さて、雪のシーズンはまだまだ続きますので、イタリアへ行く人は、ぜひ雪山を楽しんでください。

文 マルコ・ファヴァロ

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

イタリア語講師。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会で、自転車にまつわるイタリア語講座「In Bici」(インビーチ)を担当する。サイクルジャージブランド「カペルミュール」のモデルや、Jスポーツへ「ジロ・デ・イタリア」の情報提供なども行なう。東京都在住。ブログ「チクリスタ・イン・ジャッポーネ

関連記事

この記事のタグ

つれづれイタリア~ノ

  • 一覧

新着ニュース

もっと見る

ピックアップ

スペシャル

ソーシャルランキング

インプレッション

インプレッション一覧へ

連載