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栗村修の“輪”生相談<35>20代男性「下りのコツってなんなんでしょうか」

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 いつも輪生相談を参考にしたり、実況の解説で楽しませてもらっている(笑)20代の男です。

 レースを見ていていつも思うのですが、下りの速い選手って落車に対する恐怖心が全く無いように見えます。あれだけのスピードを出していて怖くないんでしょうか。また、自分自身も休日のレースに参加したりするのですが、下りがホント苦手です。下りのコツってなんなんでしょうか。あと、平地でのコーナリングについてもご教授願いたいです。

(20代男性)

 下りが速い選手には、仰るように恐怖心がないように見える選手がいます。しかし、本当の意味で速く下るには、テクニックやセンスが必要です。それらを持たずに「恐怖心の少なさ」だけで下っている選手は、遅かれ早かれ落車をするでしょう。

 確かに下りが速い選手は恐怖心がないのかもしれませんが、それは二の次、もしくは下りが上手いことによる「結果」であって、最初に来るものではありません。必要なのは、先を読む能力、バイクコントロールの能力、ラインどりの能力です。そのへんの能力があれば、自ずから恐怖心は薄れるでしょう。でも、繰り返しますが、恐怖心の少なさだけで下ってはいけません。

 先を読む能力というのは、はじめて差し掛かるコーナーで、そのアールを予想する力ですね。これにも個人差があるんです。上手い選手は、まわりの雰囲気などからコーナーを感じ取れるらしいんです。

 ラインどりの力は、コーナーへの最適な進入速度と進入位置を見つける能力と言っていいでしょう。自転車の場合、コーナーリングは進入時の速度と、その位置・角度でほとんどが決まってしまいます。コーナーリング中にペダリングで加速はできませんからね。

若手時代から下りの速さにも定評のあるニバリ。2010年ミラノ〜サンレモ若手時代から下りの速さにも定評のあるニバリ。2010年ミラノ〜サンレモ

 そしてバイクコントロールの力。これは、先読み能力で予測したコーナーに対して、適切なラインどりを実行する力のことです。具体的には、体重移動や、タイヤのグリップの限界を感じる能力、ブレーキングの能力などです。

 ただ、ロードバイクは他の乗り物と比べても、意外と余裕をもってコーナーに突っ込む乗り物である点には注意してください。一度タイヤが滑り出したら終わりですし、たとえばF1のようにコーナーでコンマ数秒稼いでも、あまり意味はありません。スタジアムスポーツではありませんから、コーナーの先に小石が転がっているかもしれないし、不意に小鳥が降りてくるかもしれない。無理は禁物です。だから、バイクコントロールの能力は、この3つの中では最も優先順位が下です。

 話を戻すと、上記の3つの能力はみんな別なんです。バイクコントロールが抜群に上手くても、下りが遅い選手はいます。たぶん、先読みやラインどりが苦手なんでしょう。この3つが揃ってはじめて下りが速い人になれます。

 下りのコツは、正直言ってあまりないのですが、ひとつ言えるのは、「地面に近い場所に荷重する」ということです。

 自転車と体が接するのは、両手両足とサドルですよね。そのうち、コーナーリングの最中、もっとも地面に近づくのはアウト側の足です。ここに体重をかけてください。逆にNGなのは、地面からもっとも遠いサドルに体重がかかること。不安定になっちゃいます。これは平地のコーナーリングでも一緒です。

 ですが、こういうバイクコントロールの能力は、訓練して向上するものじゃないんですよね、残念ながら。センスの世界です。しかし、話したようにバイクコントロールの能力は優先順位がもっとも低い力ですから、予想能力やラインどりの力を鍛えることでカバーはできます。そのためには、速い人について下るしかないでしょう。そのうち、コース読みとラインどりの感覚が身に付くかもしれません。

 ただし、しつこいようですが、ロードレースは下りやコーナーの速度を競う競技ではないと理解してほしいです。苦手な人は、苦手なことを受け入れちゃったほうがいいのではないでしょうか。下りでの落車は大ケガに繋がりますし、時にはあなたの命をも奪います。公道のコーナーで、対向車線に飛び出してしまったタイミングで自動車が来たら…。考えるだけでも恐ろしいことです。無理は禁物です。

(編集 佐藤喬・写真 砂田弓弦)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役、ツアー・オブ・ジャパン 大会副ディレクター、スポーツ専門TV局 J SPORTS サイクルロードレース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまでお寄せください。

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