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つれづれイタリア~ノ<36>イタリアで進化を続ける電動アシスト自転車 ロードやMTBにも「見えない力」を搭載

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落車時に自転車がバイクカメラに轢かれたため、交換した自転車でゴールしたライダー・ヘシェダル(ブエルタ・ア・エスパーニャ2014、砂田弓弦撮影)落車時に自転車がバイクカメラに轢かれたため、交換した自転車でゴールしたライダー・ヘシェダル(ブエルタ・ア・エスパーニャ2014、砂田弓弦撮影)

 8月29日に行われたブエルタ・ア・エスパーニャ第7ステージで起きたハプニング。下りコーナーにさしかかったライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)が、自転車のコントロールを失って落車した時のことです。地面に倒れた自転車は、止まることなく、前輪側を軸に回転し始めました。

 イタリア大手スポーツ紙ガゼッタ・デッロ・スポルトをはじめ、ヨーロッパの複数のメディアが、この不思議な現象について「自転車のどこかに小型エンジンを隠しているのではないか」と報じました。

 この疑惑に対しUCIも動き、9月9日付けでガーミン・シャープの自転車のみならず、アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)、クリストファー・フルーム(イギリス、チーム スカイ)、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター チーム)、リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファルマ・クィックステップ)ら複数の選手の自転車を、内視鏡を使って検査しました。

 結局、どのバイクにも小型エンジンは見つからず、レースは予定通りに行われました。その後、はっきりとした真相が語られないまま、報道は消えて行きました。

あまりの速さに、エンジン搭載疑惑がささやかれたファビアン・カンチェッラーラ(ツール・デ・フランドル2010、砂田弓弦撮影)あまりの速さに、エンジン搭載疑惑がささやかれたファビアン・カンチェッラーラ(ツール・デ・フランドル2010、砂田弓弦撮影)

 この「自転車ドーピング疑惑」は始めてのケースではありません。イタリア自転車競技総監督のダヴィデ・カッサーニ氏は、2010年のツール・デ・フランドルで優勝したファビアン・カンチェッラーラ(スイス、トレック ファクトリーレーシング)があまりにも力強い加速を見せたため、自転車に小型エンジンが付いているのではないかとイタリア国営テレビでコメント。カッサーニ氏はその根拠としてイタリア自転車メーカー、カレーラが当時販売し始めたばかりの電動アシストロードバイクを紹介しました。

 その仕組みは、ボトルケージの中に電池、シートチューブにエンジンが組み込まれたもの。操作ボタンは、ハンドルの見えない部分に付いています。

 小型エンジンについて事態を重く見たUCIは、この年のツール・ド・フランスに使用されたロードバイクを、空港で使う荷物X線検査機を使ってスキャンしました。ただしこの時も、疑わしいバイクは見つかっていません。

子どもから高齢者まで人気の電動アシスト自転車

 このところ、自転車用の電動モーターやバッテリーは飛躍的な進化を続けています。そのためイタリアでは数多くの電動アシスト自転車が増えているように感じます。

 この種の自転車は、イタリアでは「e-bike (イーバイク)」と呼ばれています。街角では、日本で見かけるようなシティバイクをはじめ、リミッターの外された、電動スクーターと化した自転車も数多く見られます。違法ですがスピードが遅いので、重大な事故が発生しない限り、イタリア警察も黙認している始末(残念ながら日本でもこういった違法自転車に何回か遭遇しました)。

イタリアンブランドのFrisbee(フリズビー)が作る人気のe-bike「フリズビー」。価格は1200ユーロからイタリアンブランドのFrisbee(フリズビー)が作る人気のe-bike「フリズビー」。価格は1200ユーロから

 さて、実際にどれだけの電動アシスト自転車が売られているのか、調べてみました。

 ANCMA(イタリア自転車・オートバイ販売促進協会)が公開したデータによれば、2013年にイタリア国内向けに生産・販売された自転車の数は、154万2758台に上ります。経済不況と悪天候の影響で2012年と比べて3.9%のマイナス成長になりましたが、イタリアの自転車産業を支えているのは、やはり輸出です。

 海外に輸出された自転車は174万5000台を超えており、さらに成長する傾向が見られます。経済規模として1億6500万ユーロ(およそ227億円)に上ります。

フリズビー社のもう一つの人気モデル「Dinghi」(ディンギ)。価格は900ユーロからフリズビー社のもう一つの人気モデル「Dinghi」(ディンギ)。価格は900ユーロから

 イタリアでは依然としてロードバイク、マウンテンバイクの人気が高く、20インチのミニバイクと電動アシスト自転車は成長分野です。電動アシスト機能付きだけで毎年12%以上の成長を記録しています。

 2013年イタリア産電動アシスト自転車の販売台数は、5万1405台。自転車のタイプ別の割合は、下記の通りです。

電動アシスト自転車販売台数の割合
シティバイク:32%、 マウンテンバイク:31%、 子供用バイク:18%、
クラシックバイク:9%、 ロードバイク:6%、 その他:4%

 全体的に数はまだ少ないですが、確実にロードバイクやクラシックバイク(クロモリ)にも電動アシスト自転車が増えつつあります。

©vivax assistの電気モーター©vivax assistの電気モーター

 自転車競技専門誌には、すでにロードバイクに組み込める内蔵型エンジンの性能をうたう数多くの広告が掲載されています。「Vivax Assist」の最新のモデルは、重さ1,800g(バッテリー込み)、最高出力200w、販売価格2,700ユーロ(約37万円)、バッテリーの最長使用時間100分。初期のモデルと比べて、エンジンの小型化が進み、バッテリーの性能も上昇しました。

イタリアの雑誌に掲載された電動アシストロードバイクの広告イタリアの雑誌に掲載された電動アシストロードバイクの広告

 脚力の衰えた自転車愛好家たちにとっては、喉から手が出るほど欲しい一品かもしれません。実際、広告には陽気な70代の太めのモデルが起用されています。うたい文句は「見えない力を手にいれよう」です!やはりロードレーサーの誰もが、大きなバッテリーを積んだ自転車に乗ることは恥ずかしいと感じているんですね。

 私も40代半ばで、しばらくの間はまだ自分の足でがんばれますが、年を重ねたら欲しいものですね。その時に販売価格が下がっていることを祈ります(笑)。

文 マルコ・ファヴァロ

マルコ・ファヴァロMarco FAVARO(マルコ・ファヴァロ)

イタリア語講師。イタリア外務省のサポートの下、イタリアの言語や文化を世界に普及するダンテ・アリギエーリ協会で、自転車にまつわるイタリア語講座「In Bici」(インビーチ)を担当する。サイクルジャージブランド「カペルミュール」のモデルや、Jスポーツへ「ジロ・デ・イタリア」の情報提供なども行なう。東京都在住。ブログ「チクリスタ・イン・ジャッポーネ

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