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“自転車革命都市”ロンドン便り<5>タンデム自転車で挑むロンドンまでの350km “厳しさ”はチャリティーライドの鉄則

by 青木陽子 / Yoko AOKI
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 イギリスの自転車トレンドやニュースを現地発でお届けしている当連載ですが、いよいよ自分がそのトレンドの一部になる日がやってきたようです…とついもったいをつけたくなってしまうのは、かなりハードな試練に挑むからなのです。来る9月7日、マンチェスターからロンドンまでの350kmを走破するチャリティーライド「Manchester to London」に、わたしも挑戦します。

「Manchester to London」350kmに挑戦する青木陽子さん「Manchester to London」350kmに挑戦する青木陽子さん

とても厳しくつらい挑戦をすることが前提

ラファが主催するチャリティーライド「Manchester to London」ラファが主催するチャリティーライド「Manchester to London」

 Manchester to London(通称「マンロン350」)は、日本でも人気のロードサイクルウェアブランド「ラファ」が非営利で主催するイベントです。英国第2の都市マンチェスターを朝6時30分に出発し、今年のツール・ド・フランスの舞台ともなったピーク・ディストリクトの丘陵地帯などを経て、真夜中24時までにロンドンに到着しなければならないというもの。350kmなので、名古屋から東京、仙台から東京といったところでしょうか。

 参加者がイベントの費用としてひとり3万円ほどを支払うのはいいとして、さらにめいめいが750ポンド(約14万円)を友人知人などから集めて寄付のために持ち寄るのが参加条件となっています。この部分には、日本ではまだ「?」となる方が多いと思います。

 日本でも、参加費の一部がチャリティー団体に寄付されるイベントは増えてきていますが、それと少し違うのは、参加費とは別に参加者が友人などに「自分はこんなにキツい挑戦に挑むので、応援の意味で投げ銭的に、自分が支持するチャリティ団体に寄付してください」とお願いをしてお金を集める点です。この方式は、世界の英語圏ではかなり一般的になってきている「チャリティーイベント」のスタイルです。

 もともと英国では、そういったチャリティーイベントが活発に行われてきました。例えば、「身近な人を難病などで亡くした人が、故人への追悼や思いを晴らすためにカナヅチを克服してドーバー海峡を泳いで渡る」、あるいは「○日間で合計○○mの登山を達成するなどの挑戦を宣言し、集めたお金を難病の研究団体に寄付する」といったものです。それがインターネットやSNSの時代になって、誰でもより多くの人に挑戦のお知らせと寄付のお願いを送ることができるようになり、今回のように寄付を集めてくることが条件のスポーツイベントがかなり増えてきたというわけです。

 このタイプのチャリティーイベントの厳しい点は、挑戦者が目的達成に失敗すると寄付の申し込みに対しての引き落としがされなくなり、結果「寄付なし」になってしまうことです。もっとも、だからこそ寄付する人たちの「がんばって! ちゃんとわたしの思い(お金)を届けて!」という応援し甲斐も出てくるのでしょう。

平均時速23kmキープが必要条件

サイモン・モットラム社長(2012年上野嘉之撮影)サイモン・モットラム社長(2012年上野嘉之撮影)

 マンロン350は、自閉症の息子さんを持つラファ社長のサイモン・モットラム氏の肝入りで、寄付先には、自閉症を持つ人のための教育施設「アンビション・アバウト・オーティズム」が指定されています。もちろん、社長自らも350km走ります。先日はわたしも一緒にトレーニングライドをしてきましたが、社長とはいえ一気に350kmは走ったことがないそうで、笑顔の端っこに不安がかいま見えるようでした(言うまでもなくわたしの笑顔はハッキリとこわばっていたと思います)。

 じつはわたしは走りきれる自信などさらさらなかったので、興味はありつつも参加しないつもりでいました。そこへわたしのパートナーが、「タンデムでなら一緒出る?」と持ちかけてきたので、かなり悩みつつ、出ることを決めました。

 350kmを休憩なしで走ったとすると、平均時速20kmで17.5時間。実際はトイレ休憩やパンク修理、ロンドンに戻ってきた際に遭遇するかもしれない渋滞などを考慮して、平均時速23kmは必要そうです。イギリスは、都市部以外ではロータリー(英名はラウンドアバウト)が多く信号が少ないので、ふだんの100km前後のライドでは時速23kmはクリアできています。ただそれが丸1日乗りっぱなしとなると、どうなのか…わたしには未知の領域です。

今回のために、ロンドンで人気の老舗プロショップ「コンドルサイクルズ」が用意してくれた赤いタンデム。驚くほど太いアルミフレームが印象的今回のために、ロンドンで人気の老舗プロショップ「コンドルサイクルズ」が用意してくれた赤いタンデム。驚くほど太いアルミフレームが印象的
南仏トレーニングで2級山岳のレイラック峠に向かう途中、振り返ったところで見えたカバン峠。遠くに見えるのが地中海。山にのぼると突然気候が変わり、長袖が欲しくなる南仏トレーニングで2級山岳のレイラック峠に向かう途中、振り返ったところで見えたカバン峠。遠くに見えるのが地中海。山にのぼると突然気候が変わり、長袖が欲しくなる

いただいたチャリティー金額に感激&武者震い

峠をのぼりきり、嗚呼ようやく息を整えられると思ったのもつかの間、先行するパートナーのドミニク(写真中央)に「脚を回せ! 休むな!」と叱られるの図峠をのぼりきり、嗚呼ようやく息を整えられると思ったのもつかの間、先行するパートナーのドミニク(写真中央)に「脚を回せ! 休むな!」と叱られるの図

 この夏は、夏休み兼緊急特訓として南仏のマッシフ・サントラルの山岳地帯に自転車を持って行き、少しずつ距離を伸ばしつつ、パートナーとともに走りこみをしてきました。最初は100km弱から始め、地元のアマチュアチームの練習ライドに参加したり、やはりローカルなヒルクライムレースに出たり。こうやって書くとなんだか本格的ですが、内心は毎朝ジャージに袖を通すのがうっすらと憂鬱なくらい自分的にはハードな日々でした(苦笑)。

 ライド最終日になんとか「200km、獲得標高3300m」という自分なりのベストを平均時速24kmで余力を残しつつ走れたので、「ひとまずは大丈夫かな?」という印象でロンドンに戻ってきました。

愛車でのトレーンング。ヌガーや朝食シリアルバーをかじったり、地元名産の桃やオレンジを露天などで買って補給食にする。水は村々の井戸で。コンビニがなくてもなんとかなる愛車でのトレーンング。ヌガーや朝食シリアルバーをかじったり、地元名産の桃やオレンジを露天などで買って補給食にする。水は村々の井戸で。コンビニがなくてもなんとかなる
ここでアマチュアロードレーサーとして十代後半を送ったパートナーに翌日行く峠の名前を聞いては、地図の等高線を追って必死に予習する夏休みだったここでアマチュアロードレーサーとして十代後半を送ったパートナーに翌日行く峠の名前を聞いては、地図の等高線を追って必死に予習する夏休みだった
地元チームのライドに何度か混ぜていただいたが、レベルが高くてわたしはまったくついて行けず、いつも最初の大きな峠の3合目あたりでサヨウナラだった地元チームのライドに何度か混ぜていただいたが、レベルが高くてわたしはまったくついて行けず、いつも最初の大きな峠の3合目あたりでサヨウナラだった

 イベントまで2週間を切ったいま、休暇直前にようやく入手できたタンデムバイクには、まだふたりで乗れていないので、まずは乗る練習をします。直前1週間は疲れをためないように注意しつつ、ある程度の距離を走ってみることになりそうです。

 そしてFacebookなどでチャリティーをお願いをした結果、なんとすでに10万円もの寄付が集まってきました。寄せられた応援のメッセージを読むたび、大げさでなく感動で胸があつくなります。同時に、たとえ何が起きても、大雨でも凍えても転んでもこれは完走しなければと、武者震いをしています。

◇         ◇

 結果については次回の「“自転車革命都市”ロンドン便り」でご報告いたします。タンデムの体験談や、当日の様子などはわたし個人のブログなどでご報告する予定ですので、よければそちらもご覧いただければ幸いです!

(文・写真 青木陽子 / Yoko Aoki )

青木陽子青木陽子(あおき・ようこ)

ロンドン在住フリー編集者・ジャーナリスト。自動車専門誌「NAVI」、女性ファッション誌などを経て独立起業、日本の女性サイトの草分けである「cafeglobe.com」を創設し、編集長をつとめた。拠点とするロンドンで、「運転好きだけれど気候変動が心配」という動機から1999年に自転車通勤以来のスポーツ自転車をスタート。現在11台の自転車を所有する。

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“自転車革命都市”ロンドン便り イベント チャリティー/サポート ラファ

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