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インタビューで見えた国内ロードレース界の現状と課題U23日本ナショナルチームの欧州遠征を率いた浅田顕監督 「若手が世界をめざす構図」を現実に

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レースのスタート前に選手にアドバイスをする浅田顕監督レースのスタート前に選手にアドバイスをする浅田顕監督

 3月からおよそ1カ月にわたってヨーロッパへ遠征し、各地のレースに出場して経験を重ねたロードレース男子のU23日本ナショナルチーム。その若手選手たちを率いた浅田顕監督は、これまでも新城幸也や宮澤崇史らを育ててきた、日本が誇る名将のひとりだ。現地でチームの戦いぶりを追ったフォトグラファーの田中苑子さんが、浅田監督にインタビューし、遠征の評価や、日本の若手選手を取り巻く環境について話を聞いた。

◇         ◇

選手たちとレース前に和やかに話す浅田顕監督選手たちとレース前に和やかに話す浅田顕監督

 浅田監督はかつて、ツール・ド・フランス出場を目標に活動した強豪チーム「エキップアサダ」を率い、新城、宮澤ら世界で活躍するトップ選手を輩出した。しかし同チームは2009年に経済的な理由から活動を休止。その後は改めて「EQA U23」「EQADS(エカーズ)」という若手のチームを立ち上げ、選手育成に取り組んできた。しかしU23ナショナルチームの監督を本格的に務めるようになったのは昨年から。まだ2年目を迎えたばかりだ。

 そのきっかけは、2012年にオランダで開催された世界選手権を浅田監督が訪れたことだった。久しぶりに目にした世界選で、「アンダー23と女子のレベルが急激に上がっていることに衝撃を受けた。このままでは日本が世界から置いていかれてしまう…そんな思いに駆られて、その場でUCIに対し、ネイションズカップなどU23クラスのトップレースへ出場する方法を聞き、日本へ帰国するとすぐに参戦の準備に取りかかった」と振り返る。翌2013年、U23日本ナショナルチームは初めてUCIネイションズカップへ挑んだ。今回は2回目の参戦となった。

世界に比べると「2段階格下」

――選手がU23カテゴリーで過ごす4年間は、ロードレースの世界でどのような意味を持つのでしょうか?

「U23の4年間は、彼らが成長して健全なプロになる過程であり、各国ナショナルチームやレース主催者は、ここから優秀な選手を育てたいと力を入れています」

「強くなる選手は30歳でも強くなりますが、それではその先がありません。世界的に見ても、強い選手はおおむね23歳以下で強くなっています。U23の世界選手権でトップ10に入ることが、強い選手になるうえで1つの大事なステップだと思います。(海外チームで活躍する)新城幸也や別府史之も10位には届きませんでしたが、それに近い成績を出していました」

――今回、U23日本ナショナルチームを指揮して、彼らからどのような印象を受けましたか?

「今回のナショナルチームは、ヨーロッパでのレース経験がある選手を中心に構成しました。みんなこの連戦を目標にしていたので、気持ちがまとまり、すごくいいチームになりましたね。黒枝士揮は2013年もネイションズカップを走っており、その経験があったのも良かった。1カ月間、同じメンバーで戦い、チーム意識も高まりました」

「ラ・コート・ピカルド」スタート前のU23日本ナショナルチーム「ラ・コート・ピカルド」スタート前のU23日本ナショナルチーム

――今年のネイションズカップでは、惜しくもUCIポイントを獲得できませんでした。彼らの実力は?

「世界レベルに比べると、すべてにおいて2段階、力が劣っている印象です。レースについていけるのが1段階上、そこで勝負できるのが2段階上です。選手個々の体力アップだけでなく、もっと多くのレースを経験して、レースに順応できるようにならないといけません。U23カテゴリーは世界のレベルも年々上がっていて、ヨーロッパの選手たちはU23だからといってまったく甘えがありません。プロのレースで活躍する選手も増えてきています」

国内の若手育成に求められる“意識の一本化”

――日本の若い世代がもっと強くなるためには、何が必要でしょうか?

「国内の自転車界における“意識の一本化”がとても大切だと思っています。若い選手がプロになりたいなら、プロになるための一番いい選択をしないといけない。あくまでもこの世界の頂点は世界選手権であって、その次に国際的な大会と続いてきます。ところが、例えば大学の自転車競技部に在籍している選手にとっては、国内カレンダーとの調整が難しくなっている現状があります。そうではなく、ナショナルチームの活動を最優先できる環境を整えるべきだと考えています」

2014年の遠征に参加した7人のJCF強化選手と浅田顕監督(左)2014年の遠征に参加した7人のJCF強化選手と浅田顕監督(左)

「実業団チームやクラブチームでは、若い選手を育てる余裕がないという現状もあります。また、国内チームや大学の自転車競技部は必要ですが、世界で活躍する選手へ成長する環境としては、十分とは言えません。国内からレベルアップして世界へ、というレールは、今はつながっていないように思えます」

「さらに、いまの国内には簡単に“プロ”になれてしまう現状があります。勝ち上がった選手だけがプロになるべきなのに、勝ち上がらなくてもコンチネンタルチームと契約してプロになる選手が多い。昔に比べると、今はヨーロッパの情報がたくさん入るようになり、実業団チームや国内レースも増えました。それなのに、若い選手の成績を見ると、決してレベルは上がっていないんです。U23カテゴリーの成績に、日本の現状が現れています」

――今後、浅田監督がU23ナショナルチームの監督を続けていく上でのビジョンを教えてください

「とにかく、他の国と同じレールに乗りたいと思っています。若いうちからネイションズカップなどで戦って、世界の土俵に上ることが大切です。U23ナショナルチームの活動を中心に世界をめざすという構図が成立し、すべての若手選手が『ナショナルチームに選ばれたい』と思うようになってほしいですね。チームに選ばれる競争率は、現在の10倍くらいになればいいと思っています」

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ジュニア・U23 日本ナショナルチーム

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