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栗村修の“輪”生相談<11>30代男性「プロのロードバイクはブレーキレバーが左右逆では?」

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 ロードバイクに乗って20年以上経ちますが、最近、プロのロードバイクを見て不思議に思うことがありましたので、お便りしました。それは、“ブレーキレバーが左右逆ではないか”ということです。私のバイクは左レバーが後輪・右レバーが前輪になっています。でも、プロは左レバーが前輪・右レバーが後輪ではないかということです。

 このことが事実として、これから乗るバイクが左右逆になった場合、気をつけなければならない点を教えてください。

 そもそもシマノのブレーキキャリパーのワイヤ取り付け位置は前輪用が右側・後輪用が左側になっていて、プロバイク仕様になっているみたいですね。

(30代男性)

 これ、僕も自転車をはじめた当初は疑問でした。でも、ヨーロッパに憧れていましたので、すぐに左前・右後ろというヨーロッパパターンになりました。

 おっしゃるように、ブレーキまわりは左前・右後ろが前提です。ワイヤーや、ブレーキのワイヤー受けがそのように設計されているんですね。だから、左前・右後ろのほうが取り回しがいい。これは事実です。

 特に、小柄な人が多い日本人の場合、ハンドルが低くなる(≒レバーとブレーキの距離が近くなる)傾向がありますから、右前・左後ろにした場合、ワイヤーがちょっと窮屈になっちゃいます。

2013ツール王者のフルームは左前仕様。前ブレーキワイヤーの取り回しはほぼまっすぐ2013ツール王者のフルームは左前仕様。前ブレーキワイヤーの取り回しはほぼまっすぐ
日本チャンピオンの新城は右前仕様。前ブレーキのワイヤー取り回しが若干窮屈そうだ日本チャンピオンの新城は右前仕様。前ブレーキのワイヤー取り回しが若干窮屈そうだ

 なぜ左前・右後ろなのかという問題ですが、右手の忙しさに配慮した結果だと思います。右手が利き手の人が多い以上、ボトルを飲む、補給食を摂る、変速をする(昔の変速機はWレバーでしたから、変速時にハンドルから手を離す必要がありました。そして、変速回数が多いリアは右側のレバーが担当です)などの動作は右手で行います。欧州は右側通行が多いですので、ボトルやサコッシュも右手で受け取るケースが多かったと思います。

 その間、ブレーキは左手のみで行う必要があります。リアブレーキよりもフロントのほうが制動力が高いことを考えると、左のレバーにフロントブレーキを対応させたほうが安全ですよね。こうして左前・右後ろが主流になったんじゃないでしょうか。

 しかし、ずっと左前で過ごしてきた僕ですが、引退直前に右前・左後ろに戻してしまいます。きっかけは、MTB(マウンテンバイク)のレースへの参戦です。

 MTBは、ブレーキングが非常にシビアです。特にフロント。細かく調整しないといけません。僕も右利きなので、右手と左手のどっちが器用かというと、やっぱり右手になりますよね。それで、右前にしてみました。

 そうしたら、ブレーキングが重要な下りでの安定感がぐっと増したんです。それを受けて、ロードバイクのほうも右前に戻しました。MTBほどじゃないですが、ロードバイクでの下りもブレーキングは重要です。冒頭で述べたボトルや補給を摂る間に片手が留守になる問題ですが、これは左手に任せることで解決しました。

 ただ、国内のプロでも左前の選手は多くいます。これは、コーナーが多いクリテリウムなどで、減速と変速を同時に行うためじゃないかと思います。変速と減速を同じレバーで同時に行うのは簡単じゃないですからね。でもまあ、個人的には、右前のほうが安全でいいような気がしています。左前にする場合は、下りに注意してください。

峠の下りを攻めるヴォクレール。ブレーキは左前仕様峠の下りを攻めるヴォクレール。ブレーキは左前仕様

 ここまでが表の理由。実は、この問題にはウラの理由がある、と僕は推測しています。アマチュアの方にはあまり関係ないとは思いますが…。

 レース中の選手たちは走りながら放尿するのですが、日本では道路の左側に寄って行う場合が多いんです。別に規則があるわけじゃないんですが、たぶん普段から左側通行だから習慣的に左に寄るんでしょう。

 やり方ですが、ある程度速度がある状態で道路の左に寄り、左足を下死点まで下げ、右手で突っ張ることで立ち上がります。サドルの先端の上にお尻が来る感じです。で、腰をやや左に持っていき、モノをビブショーツの上部から出し、器用に放尿します(画像でお見せできないのが残念です)。

今年のツアーオブジャパンのコミュニケ(公報)より。プロのレースでも観衆の前でやっちゃうと罰金です。UCIルールの公式通貨はスイスフラン。ちなみに1スイスフラン=113円(2013年12月2日現在)今年のツアーオブジャパンのコミュニケ(公報)より。プロのレースでも観衆の前でやっちゃうと罰金です。UCIルールの公式通貨はスイスフラン。ちなみに1スイスフラン=113円(2013年12月2日現在)

 このときも、たとえば前方で落車が発生するようなリスクには晒されているわけです。そういう場合、右のレバーが後ろのブレーキに対応していると止まれません。前方加重になっているのでなおさらです。たぶん後輪がロックして滑っちゃうでしょう。

 いくらプロでも、瞬時にオシッコと滑るバイクを止め、露出している物を然るべき場所に収めた上で停車するのは難しい。色々なモノを出しつつ他のレーサーに突っ込んでしまう可能性があります。そうなったら悲劇です。目も当てられません。

 このリスクを考えると、日本では右前がいいかもしれませんね。また、ヨーロッパは右側通行が主流なので、当然事情は左右逆になります。これもあちらで左前が主流になっている理由かもしれません。

 なお、念のため申し添えますが、公道でこれをやると軽犯罪になる上、ギャラリーがいるとわいせつ物陳列罪になる可能性もあります。まさか真似する人はいないと思いますが、念のため。

(編集 佐藤喬/写真 砂田弓弦)

回答者 栗村修(くりむら おさむ)

 プロ・ロードレースチーム「宇都宮ブリッツェン」監督。レース解説者。選手時代はポーランドのチームと契約するなど国内外で活躍。引退後はTV解説者として、ユニークな語り口でサイクルロードレースの魅力を多くの人に伝え続けている。著書に『栗村修のかなり本気のロードバイクトレーニング』『栗村修の100倍楽しむ! サイクルロードレース観戦術』(いずれも洋泉社)など。

※栗村さんにあなたの自転車に関する悩みを相談してみませんか?
 ml.sd-cyclist-info@sankei.co.jpまでお寄せください。

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